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徒然98.春学期を終えて

 大学院は、今ではどこでも同じようなものだが、春と秋(または夏と冬)の二学期制をとっていることが多い。今月に入ってやっと春学期の採点を終え、一段落したところである。いつもながらこの時期は、教師の私としては、いろいろと考えさせられるところがあった。
 
 私の授業についての学生からの評価は、幸いまずまずで、この点はありがたいところである。つい最近、先の冬学期における私の授業の評価書が大学院から送られてきた。小学校のときに先生からもらった通知簿を開ける際のような、ちょっとドキドキする気分を思い出しつつ、その封筒を開いてみた。すると、5点満点で平均が3.823点であるところ、私には4.400点を付けてくれていた。

 なかでもうれしいのは、「教師は誠意をもち授業をした」が満点の5.000だった。もっとも、平均も4.305点なので、この点は学生の教師に対する配慮がたぶんにあるらしい。そのほか、「授業内容に知的刺激を受けた」が4.571点(平均3.892点)、「発言を通じ参加意識をもった」が4.429点(平均3.524点)、「授業内容は整理されている」が4.289点(平均3.845点)というところが、私としては喜ばしい評価である。これに対して一番評価が低かったのは、「教室の大きさが適当でなかった」が3.000点で、これだけが平均を若干下回っていたが、まあこれは、私のせいではあるまい。・・・ということで、「授業は総合的に満足いった」が4.714点(平均3.892点)というのは、この半年間の苦労が報われた気分である。

 さて、話は冒頭の、つい先ごろ終わった今の大学院の春学期のことに戻りたい。今回は非常に小ぶりな、一クラス15人を受け持ったのだが、先ごろまでいた大学院の学生の傾向とは、ちょっと異なるので驚いた。課題を出すと、その負担が重いと文句たらたらの学生が何人かいたのである。私の感覚だと、せいぜい2〜3時間以内でできそうな課題なのだけれども、要領が悪いのか、それとも何も思いつかないのか、はたまたインターネットに載っていないとお手上げ状態となるのか知らないが、中には「20時間も費やしたのですが、それでも何も書けない!」と悲痛なメールを送ってくる学生がいる。こういう子には、努力賞くらいはあげないとかわいそうだし、実際に採点時には加味したが、それにしても小学生ではあるまいし・・・と、ちょっと呆れるばかりである。もう少し、要領がよくないと、実務では生きていけないのではあるまいか。

 あるいは、課題を出すと、一人前の文章が続いたあと、実際にその理論を要件事実に当てはめる段階で、大コケにこける学生がいる。前半の理屈の出来のよさと、後半の間抜けな出来の悪さとが対照的で、「これ、どうしたの」と問うと、やはり前半部分はどこかの教科書をそのまま引き写したとのこと。その手の学生が結構いて、こういう手合いには、試験に限ると思って、試験をしたところ、やはりその大半が書けなかったが、どういうわけか、この大コケにこけた学生が、しぶとく、ちゃんとしたものを書いていた。人は見かけによらない。こういう人間は、本番に強い人なのかもしれない。社会にとって、大事な人材である。

 また、おもしろいことを言う人がいた。この人は、課題を3時間程度で書いたというし、その内容も、なかなかのものである。これ以前には、社会学を学んだらしくて、「社会学では、人が言わなかったような新しい視点で論文を書くと、これはすばらしいと評価されるのに、それと同じことを法律の世界でやると、大きく減点されるので、最初は驚いた」。なるほど、そういう面は、確かにある。

 そういう人には、私はこう言って差し上げた。「法律は、権利義務にかかわることなので、世の中の先端を走るのではなく、7〜8割の人を納得させる論理が必要なのです。だから、どうしても使い古された論理を使いつつ、それで新しい事態を処理しようとする。だから、そういう基本を身に付けていないと、応用動作ができないというわけです。いわば、古典芸能のようなもので、基本の型をしっかりつけていないと、芸能とは評価されないというわけですね。ただ、それは試験という特殊な世界のことで、実務では、なるべく目新しい事態にチャレンジするという精神が大切です。そのときになって、あなたの学んだ社会学というのは、活きるでしょう。」

 こんな調子で、本当は学生ひとりひとりの個性や能力に応じて、アドバイスして差し上げることが大事だと思っている。そこで、授業中にいい足りなかった人には、学期末の試験の採点とともに、ひとり当り1〜2枚くらいの分量で、課題や試験で学生が書いたものの評価と、アドバイスをしたためて学生に戻してあげた。長丁場なので、ちょっと元気を出してくれるように、最後に激励の言葉を付けて・・・。


(2008年8月13日記)

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