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徒然100.北京オリンピック
 きょう8月24日は、2週間にわたった北京五輪の閉会の日である。この間、世界一流の選手の技を目の当たりにして、本当に楽しませてもらった。のちのちの心覚えに、印象に残った日本選手の活躍の場面を書き遺しておきたい。

 まず、開会式は、いかにも中国らしく、人海戦術で派手なものだった。中国の発明にかかる紙、羅針盤、それに鄭和の航海などを表す演出には、恐れ入った。最後に聖火を受けた中年のおじさんが、そのまま中空に浮き上がり、そして中華どんぶりの縁のような中華風唐草模様の壁を斜めになりながら走って、聖火台にボワーッと火を点けたのには笑えてきた。それにしても、かわいい女の子(9歳の少女タレント林妙可ちゃん)が歌を歌っているなぁと思ったら、いわゆる口パクの替え玉だったり、その前に北京市内に足跡のように上がっていって、メイン・スタジアムの鳥の巣に着いた花火は、本当にうまい演出だと感心していたら、どうやらCGで騙されていたようだ。さらには、中国を構成する各民族衣装を着用した子供たちという触れ込みだったのに、実はいずれも漢民族の子供だったという。いずれも、偽装の大国、中国らしいエピソードである。

 日本勢で順当に金メダルをとったのは、水泳平泳ぎの北島康介選手で、それも100メートルと200メートルの二つだから、たいしたものである。レスリング女子63キロ級の伊調 馨選手と女子55キロ級の吉田沙保里選手も金メダルに輝く。よくもまあ、あんなに早くタックルに行ったりすることができるものだと、びっくりした。馨の姉の伊調千春選手は銀メダル、浜口京子選手は銅メダルと、4年前のアテネ五輪と同じだったが、それぞれよく頑張ったと思う。レスリング男子フリースタイル55キロ級の松永共広選手は、銀メダルを獲得した。ねばり強さであだ名は「納豆」というのは、面白い。ただ、試合が終わった松永の右耳が半分潰れていたのには、心から同情した。

 日本のお家芸の柔道は、金メダルが女子63キロ級の谷本歩実選手、女子70キロ級の上野雅恵選手、男子66キロ級の内柴正人選手、男子100キロ級の石井 慧選手ということだった。また、女子78キロ超級の塚原真希選手は銀メダル。番狂わせだったのは女子48キロ級で銅メダルに終わった谷 亮子選手である。終了30秒前に警告のポイントを取られるという不可思議な判定で負けてしまい、残念ながら「ママでも金」はならなかったが、その態度は爽やかなものだった。ところで、私の年代は柔道といえば、鮮やかな一本勝ちというのが通り相場である。しかし、最近の世界の柔道は、参加国が大幅に増えたせいなのか、しっかりと組まずにちまちました動きで点数稼ぎをし、いつの間にか終わってしまうというおかしなスポーツに変わってしまったようなのは、実に寂しい気がする。

 フェンシング男子フルーレ個人の太田雄貴選手が銀メダルとなったのは、よかった。フェンシングといえば欧州が本場なので、日本は足元にも及ばなかったのに、銀メダルというのは望外の出来ではないかと思う。加えて、体操は男子団体総合で銀メダルをとったが、それだけに終わらず、男子個人総合では、ベテランを差し置いて内村航平選手が銀メダルを獲得したのはよかった。内村選手は、この北京五輪が初出場で、まだ19歳なので、これからが楽しみである。それにしても、この体操というのも、とくに鉄棒は、アクロバットそのものではないかと思ったりする。空中で手を放して体をひねったり、よじったり、くるくる回転させたりして、これは大変な技ばかりである。ミュンヘン五輪のときの月面宙返りがかわいらしく思える。

 これはどうしたことかと思ったのは、女子マラソンである。アテネ五輪に続いて連覇を狙った野口みずき選手は故障で欠場した。北京五輪の1〜2週間前にNHKで放映された番組で、練習の途中で野口選手がふと涙をみせるなど、どうも変だと思ったのは、私だけではないだろう。周りが練習をさせすぎたのではないか。それだけではない。17日に行われた本番のレースでも、土佐礼子選手はこともあろうに外反母趾のせいで右足に痛みが出て途中で棄権した。残った中村友梨香選手だけ完走したが13位となった。中村選手を評して監督は「経験不足で、怖さで守りに入ったのではないか」と言ったという。けが人や経験不足の人を選んだ陸連の人選ミスではないかと思う。

 卓球の世界ランク12位の福原 愛選手は、アテネ五輪女王で世界ランク1位の張 怡寧選手(中国)と、女子シングルス4回戦で対戦したが、完敗した。2大会連続の16強止まりだったものの、よく頑張ったと思う。とりわけ福原選手は、小学校のころから中国で武者修行をしていて中国語も話せるるので、中国の若者の追っかけが出るほど中国で人気があるという。それだけでも、日中友好のシンボルとして、良いことである。

 サッカー女子日本代表「なでしこジャパン」は、3位決定戦でドイツに挑んだものの、残念ながら負けてしまった。3度目の出場の沢 穂希選手を筆頭に、大野 忍選手、永里優季選手、宮間あや選手など、みな頑張ったが、4位で上出来だったかもしれない。それにしても不甲斐ないのは男子の星野ジャパンである。佐藤選手がいいところで2試合続けて落球するなど、これがプロかといいたくなるプレーぶりだった。星野監督の投手起用も大いに疑問である。前回打たれている投手を、なぜわざわざ大事な場面で同じ相手の韓国に出すのか、まったく理解できない采配ぶりである。これなら野村監督の方がよかったと思うのは、私だけではあるまい。だいたい、五輪直前にちょっと練習して、それで金メダルをねらおうというのは、一種の誇大妄想の類である。男子サッカーも同じようなものであるが、日本という島国の中だけで完結してやっているからこういう考えが生まれるのではないか。もっと科学的に、用意周到に準備すべきである。

 さて、いよいよ本題に入るが、21日に行われたソフトボール決勝の日本対米国戦は、プレーのひとつひとつに一喜一憂する、まさに手に汗を握る試合だった。投手の上野由岐子選手は、準決勝から数えて3連投で、しかもそれが前日にダブルヘッダーだったから、こんなに酷使されて大丈夫なのかと驚くほどのタフな人だった。試合は、幸い周りの選手が盛りたててくれた。3回に三科選手が二塁打を打ち、これを足がかりに、一死三塁から狩野選手がボテボテの内野安打で1点を先制した。続く4回には山田選手が驚きの本塁打を放った。7回にも相手のミスで追加点を挙げた。もちろん、米国も4回裏に4番打者、ちょっと太めのバストス選手が泳ぎながらバットをちょーんと当てると、それが本塁打になってしまった。これで2点差に迫られたが、最後の7回の息詰まる攻防でも、上野選手はこの1失点だけに抑えて、完投で守りきった。スコアは、3−1である。

 この大会では、日本は米国と、この決勝までに2度対戦していて、予選では0−7のコールド負けをし、準決勝では延長九回の接戦の末に、1−4で敗れていた。それだけに、3度目の正直でよく勝ったものだ。これというのも、「ページシステム」という敗者復活戦が盛り込まれた変則トーナメントであるがゆえに起こったことであるが、それにしても、米国には気の毒な結果である。投手のオスターマン選手がその高い身長から繰り出す玉は、あるときはドロップ・ボールとなり、あるときはふわりと浮きあがるボールとなるので、これを打つのは簡単ではあるまいと思った。その点、日本の選手は、最初は玉筋を見極めて三振し、次にはそのクセ、たとえば構えたときに肘が曲がって黄色い玉が見えるとドロップ・ボールが来る、などと見破って、撃破したというが・・・、いささか出来過ぎた話である。でも、面白いではないか。

 さて、そろそろ北京五輪も終わりかけの22日、驚いたことが起こった。陸上の男子400メートルリレーの決勝があり、日本チームが38秒15で、なんと銅メダルに輝いたのである。陸上のトラック種目では、1928年のアムステルダム五輪女子800メートルで、人見絹枝選手が銀メダルを得て以来の80年ぶりの快挙である。わあ、すごいの一言に尽きる。塚原直貴選手、末続慎吾選手、高平慎士選手、そしてちょっとお歳の朝原宣治選手の4人によるバトンリレーが実になめらかにいったおかげである。もっとも、これには裏話があって、前日の予選で、前回アテネ五輪でそれぞれ金、銀、銅メダルを獲った英国、米国、ナイジェリアが、いずれもバトンパスをミスしてしまい、決勝に進めないという思わぬ波乱があったからである。しかし、いずれにしてもバトンパスを含めての試合なので、勝ったことには間違いがない。胸を張って、帰国していただきたい。

 最後に、外国人選手では、ケニヤのワンジル選手が、マラソンで金メダルに輝いた。日本の仙台育英高校に留学していたので、日本語が出来て、なかなかの人材である。そして、水泳でひとりで8個もの金メダルをとったアメリカのマイケル・フェルペス選手は、段違いの強さだった。足のサイズが35センチというから、生まれながらに両足にヒレをつけているようなものだと納得した。男子100メートルで9秒69という世界記録を出したジャマイカのウサイン・ボルト選手も凄かった。事前には同じジャマイカのパウエルが注目を浴びていただけに、ボルトって、誰?という感じだったが、200メートルでも金メダルだったあの力強い走りが生み出した驚異的な記録は、今後そう簡単には抜かれないものと思われる。また、感心したのは、卓球女子シングルス4回戦で、福原愛を破った世界ランク1位の張 怡寧選手である。どんなときでも冷静で、試合が終わるまで顔色ひとつ変えない。こういう人こそ、本当の勝負師ではないかと思った。



 というわけで、この北京五輪で活躍した選手、活躍できなかった選手、ミスを悔やむ選手、また次があるからいいやと思っている選手・・・最後のタイプはいささか困りものではあるが・・・、いろいろとあるが、いずれにしても、楽しませてもらって、ありがとうと申し上げたい。



(2008年8月24日記)
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