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大和ミュージアム(戦艦大和)
「大和ミュージアム」戦艦大和の10分の1模型。逆光で、いささか見にくい。


戦艦大和ミュージアムの写真は、こちら




 まだ夏休みの範囲内ということで、家内と二泊三日のツアーに出かけた。羽田空港から広島空港へと飛び、まず着いたのは、呉の大和ミュージアム」(呉市海事歴史科学館)である。一階にある戦艦大和の10分の1模型が、そのメインの展示である。当時の戦艦の構造は軍事秘密であったし、その大半が終戦のどさくさで失われているが、戦艦大和の場合はたまたま設計図が残っていたようで、それと写真、潜水調査の水中映像などを元に造船所で作ったものが、全長26.3メートルもあるこの10分の1模型とのこと。

 私が小学生から中学生にかけての頃、飛行機のゼロ戦とともに、戦艦大和といえば、同世代の子供の間では憧れの的だった。日本の科学技術の粋を集めた最新鋭の戦艦として雑誌などでもよく取り上げられたし、沖縄への特攻出撃で伊藤整一艦隊司令長官、有賀幸作艦長以下3000人近い乗組員とともに海の藻屑となるという悲劇的な結末と併せて、脳裏に刻み込まれている。この大和ミュージアムのパンフレットによれば、「呉が生んだ世界最大の戦艦『大和』を中心に、明治以降における日本の近代化の歴史そのものである『呉の歴史』その礎となった造船・科学技術を紹介しています」としているから、そのような私の世代の人の感覚で作られているものと思われる。

 もっとも、戦艦大和のそんな最先端かつ悲劇的というイメージは、後に松本なにがしという漫画家がうまく使って宇宙戦艦ヤマトとかというマンガを描いてしまったので、本来の姿とは少しズレが生じてしまったのは、誠に残念である。まあしかし、マンガのおかげで戦艦大和というものが後世にまで語り継がれるということは、そう悪いことではない。だいたい、最近の若い日本人は、我々の青少年時代と比べて元気がなく、意気消沈しているように思える。その中で当時の戦艦大和を思いを馳せることは、決して無意味なことではない。そればかりか、現在の日本の繁栄は、こうした尊いたくさんの戦死者の犠牲の上にあるということを改めて認識するきっかけになるのみならず、当時の日本の科学技術・工業水準はこれほど高かったということも自覚ができると考えるからである。

「大和ミュージアム」戦艦大和の10分の1模型の後部。


 さて、その戦艦大和の10分の1模型は、威風堂々としている。正面には菊のご紋と日章旗が翻り、その下の艦首真下の形が美しい。甲板上の1番と2番の主砲は思いのほか大きく、それぞれに3本の砲がついていたとは、知らなかった。艦橋は高く、耳の辺りにレーダーのようなものが左右に広がって付いていて、これが人の顔のように見える。ぐるりと一周して艦後部に回ると、最後部には艦載機すら搭載しているし、艦尾のスクリューは4本である。

 諸元は次の通りであり、まさに、世界最大の戦艦だった。もっとも、航空戦法が主流となった戦争後半では、出撃しようにも出られなかったようだが、これほどの巨体が動くための燃料を考えると、やむを得なかったということらしい。現に、大和の最後となった沖縄特攻時には、片道の燃料しか積んでいなかった。まさに、あわれとしか言いようがない。

○ 満載排水量:72,808トン
○ 基準排水量:65,000トン
○ 全 長    :263メートル
○ 最大幅    :38.9メートル
○ 最大速力  :27.46ノット
○ 軸馬力   :153,553馬力
○ 乗員数   :3,332名

□ 起 工  : 昭和12年11月 4日
□ 進 水  : 昭和15年 8月 8日
□ 就 役  : 昭和16年12月16日
□ 沈 没  : 昭和20年 4月 7日

 そのほか、大和ミュージアム館内には、墜落した琵琶湖から引き揚げたゼロ戦(零式艦上戦闘機62型)、それに、人間魚雷「回天」10型、特殊潜航艇「海龍」などの現物が展示してある。

 ミュージアム・ショップに「海軍さんのカレー」というのがあって、何かと思っていたら、ガイドさんによると、次のようなことだったらしい。何日も海の上にいると、曜日がわからなくなる。そこで日本海軍では、毎週金曜日をカレーの日と決めて、カレーを水兵にふるまったそうな。そうすると明日は週末だとわかるし、水兵たちも好物のカレーを食べられる。まさに一石二鳥というわけである。この毎週金曜日のカレーの日は、現在も海上自衛隊に引き継がれている。また、このカレーは、もともと英国海軍の「カレーシチュー」を採用したものだが、日本海軍の炊事班は、日本人の趣向に合うようにと、それに小麦粉を加え、とろみをつけてご飯にかけて食べるようにした。実はこれが、現在の日本の家庭で食べられているカレーライスのルーツだという。

零式艦上戦闘機62型


 また、この大和ミュージアムと道を隔てて「てつのくじら館」つまり、本物の潜水艦を展示してある海上自衛隊の建物がある。もう集合時間に遅れるとハラハラしながら、そちらも駆け足で見学をしてきた。艦内の司令室まで公開されていて、驚いた。潜望鏡も、触ることができる。

「てつのくじら館」の本物の潜水艦


 ちなみに、男性陣がこうして、大和や潜水艦の見学をしている間、奥様方はどうしていたかというと、面白くなさそうに手持無沙汰に時間を持て余している風であった。それは、そうだろうなぁ。




(2008年9月7日記)



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