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秋の新宿御苑を散歩
ダブルデライト「米、スイム、1977年作出」


 新宿御苑の秋 (写 真)は、こちらから。


 金曜日の夕刻、たまたまテレビの天気予報を見た。すると、低気圧が三つも西日本に来ているし、あまつさえ台風20号が南方海上に控えている。なるほど、これでは天候が悪くなるはずである。東京は今は晴れているが、明日は九州付近の雨雲が移動してきて、夕刻から雨になるといっていた。せっかくの週末なので、どこかで秋の景色を味わいたいと思っていたのに、いささか残念である。

 その翌日の土曜日の朝になった。別に雨が降っている気配はない。天気図をみれば、どうやら予報のとおり、その日の夕刻から雨が降り出して、日曜日の夜まで続くらしい。それでは、まだ晴れている今のうちに、どこか近場で、秋の風景を楽しめないかと頭をめぐらせていたところ、そういえば、最近、
新宿御苑に行っていないなぁと思いついた。われわれは文京区に住んでいるので、いざ行くとなると、どうしても、同じ区内の六義園とか後楽園に足が向いてしまう。その点、新宿御苑は、地下鉄でわずか20数分のところなのだけれど、気分的に少し遠いというイメージがあって、ここしばらくは、秋に訪れたことはない。確か、秋の季節に最後に行ったのは、4年も前である。そういうわけで、いざ新宿御苑に着いてみると、長らくご無沙汰をしていた分、なかなか新鮮な気分であった。

玉藻池の灯篭


 最初に見たのは、玉藻池である。新宿御苑というのは、もともと江戸時代の内藤家の大名屋敷だった。玉藻池というのは、その屋敷にあった玉川池を基礎に造られたものである。大きくて印象的な灯篭が、池にアクセントを与えている。松もよく手入れされている。

 そこを過ぎて、フランス庭園のプラタナスの並木に迷い込んだ。葉の半分が枯れかけていて、そこに日ざしが差すと、まだ青い色の葉との対比で実に美しい。まるでヨーロッパにいるような気分にしてくれる。「プラタナスの枯れ葉舞う、冬の道を・・・」という歌が、何十年ぶりかで浮かんできた。。


フランス庭園のプラタナスの並木


 それに、バラの花壇がすばらしい。フレンチレース、トランペッターなど、多少は知っているバラもあったが、プレイボーイという花もあれば、プレイガールなどというものもあって、薔薇の名前はおもしろい。作出者が好き勝手につけてもよろしいものらしい。もちろん、神代植物園に比べれば、あれほどの品種はないものの、それでも見ごたえのあるバラばかりだった。私が最優秀賞を決めるとすれば、ダブルデライト「米、スイム、1977年作出」に軍配を上げたい。

 さて、その新宿御苑の中を、フランス式庭園からバラ園とまわって、桜園地に入った。葉が枯れて落ちてしまった桜の大きな木々が、しーんとしている。中には十月桜のように咲いているのもあるが、全体としては、今から冬を迎える下準備が着々と行われているという気分を感じる。

 次に見るイギリス風景庭園の清々とした景色は、確かにイギリスの自然の風景画派ターナーの絵を見ているようである。芝生の緑と、黄色に葉が枯れようとしている大きな木の太い枝との対比は、すばらしい。芝生の上には、小さな子連れの家族が座っていて、ほほえましい。

 最後に、日本庭園にさしかかると、そこでは
菊花壇展が行われていた。大懸崖菊、伊勢菊、丁子菊、嵯峨菊、大作り、江戸菊、一文字菊、管物菊、肥後菊、大菊花という花壇が次々に置かれていて、日本庭園を見ながら、ひとつひとつ見て回るという趣向である。そういえば、4年前にも来て、これらを見て感激したことがある。

 このうち、
大懸崖菊は、よくこれほど揃った一連の菊を作ることができるものだとまず感心した。次に、伊勢菊が線香花火を思い出す風情があるのに対して、丁子菊には丸くて向日葵のような明るさがある。嵯峨菊は、その名にふさわしく、そこはかとない儚さがある。大作りは、見事の一言に尽きる。一見すると数百輪もの菊の花が咲いているが、これがたった一株の菊からできているのであるから、にわかには信じられない。江戸菊には、まさに江戸以来、守り育てられてきた伝統の味わいがある。一文字菊はぺったりとしていて、自分では身を保てない様子だ。管物菊も似たようなものだが、こちらは管の数が多いだけ派手な外見となっている。肥後菊は、夏の空に咲く花火を思い出させる。大菊は、丸くてもっこりとしており、赤ちゃんの頭を思い浮かべる。一列に置かれていると、これはもう、言葉が出ないほど素晴らしい。

菊花壇展の大懸崖菊花壇


 いただいたパンフレットによれば、明治元年に菊を皇室の紋章として定めたこともあって、宮内省は菊の栽培に力を入れ、ここ新宿御苑では明治34年から菊の栽培を始めた。そして昭和4年から観菊会を行うようになり、今ではその「皇室ゆかりの伝統を受け継ぐ」ということで、引き続きこの「菊花壇展」を行っているという。こういう伝統と、それを受け継ぐ職人技が相まって、長年続けられている行事である。こうした日本の古き良き伝統は、大事にしたいものだ。


菊花壇展の大作り菊花壇。数百輪の菊花が咲いているが、これがたった一株の菊からできているとは!



(2008年11月17日記)
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