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徒然109.犬のラッキーちゃん
押し花とアイコン様の作品



 ウチの近くに、「巴屋(ともえや)」というおいしい蕎麦屋があるので、週末などには、家内と二人でよく通っている。その道すがらに、住宅と事務所を兼ねている小さな家がある。実は我々二人とも、その家の前を通るのを楽しみにしていた。というのは、その家の窓の桟の隙間から、可愛いチワワ犬がよく顔を出していて、通る人の顔をキョロキョロと目で追っていたからである。それがただ可愛いだけでなく、とても人懐っこい犬で、見知らぬ通行人にも、とびきりの愛想を振りまいてくれていた。それだから、姿が見えない日は、家内と顔を見合わせて、「おっと、今日はチワくん(我々が勝手につけた名前である)がいないねぇ」と言いつつ、少しガッカリしながら、その前を通り過ぎていたのである。

 ところが、ここしばらく、そのチワちゃんが、いない日が続き、おかしいなぁと思っていた。そしてつい最近、その家の窓の桟に、チワちゃんの写真とともに、こんな紙が張られていた。

 「ラッキー(これが本名だったらしい)は、去る10月1日、家族に看取られて、息を引き取りました。享年16歳で、人間でいえば、百歳に相当する大往生です。ラッキーは、物静かですが、人懐こい犬て、誰からも好かれた16年間でした。最後の近くになると、額の上の頭に喉骨のような印が出てきて、お医者さんによれば、『これはめったに出ないものだが、幸せな生活を送ったことを示すものです』ということでした。長い間、皆さんに本当に可愛がっていただいて、ありがとうございました。」

 通りすがりの我々ですらそうなのだから、このおうちの人も、よほど気を落とされたようだ。しかし、こうした形の公表をするところをみると、その気持ちの整理もついたようである。我々も、短い間にせよ、幸せな気分をもたらしてくれた亡きラッキーちゃんに深く感謝しつつ、その冥福をお祈りしたい。




(2008年11月21日記)



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