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銀杏と学生時代
東京大学本郷キャンパスの銀杏並木


 銀杏の木は、その葉がシンボルマークにもなっている東京都の木だけあって、都内のあちらこちらに街路樹として植えられている。街路樹としての銀杏は、いまや道路や建物の風景にすっかり溶け込んでいるので、普段はそう目立つような木ではない。しかし、秋も終りの頃となると、銀杏の木々の葉が一斉に真っ黄色に変わるので、たちまち露出度を増して、その存在をアピールしているようである。

 私は毎日、
東京大学の本郷キャンパス辺りから車で、本郷通り、お茶の水の東京医科歯科大学のキャンパス、皇居の行幸通り、六本木通りと通っているが、道の両側やキャンパス内が、日に日に真っ黄色に変わっていくのがよくわかる。しかしそれもわずか1〜2週間ほどの間の変化で、そろそろその黄葉が一斉に落ち始めるようになった。少し強い風が吹くと、たくさんの葉がパラパラと音をたてて散っていく。ちょうど今日は、黄葉の散る盛りのような日で、ひと風吹いて来ただけで、さぁーっと黄色の絨毯のように降りそそいでくる。これは見ごたえがある。

 そういう景色を見ると、「ああ、冬が来るなぁ」と実感するこの頃である。頭の中で、♪ ♪ ♪ 枯れ葉の散る窓辺 学生時代 ♪ ♪ ♪ などという、大昔の歌が脳裏に浮かんできた。私が学生時代に初めてこの歌を聞いたときに思ったことだが、この歌は、おそらく東京の由緒あるカソリック系の学校での感傷的気分を唄ったものだろう。しかし、私のような地方の無骨な公立校に通った者には、まったく縁遠い世界であった。というのは、悲しいことに、その歌詞の中で唯一、共感できるところといえば、「重いカバンを抱えて 通ったあの道」という文句だけだったからである。そういうわけで、「よーし、そのうち上京して、蔦の絡まるチャペルだの、ノートとインクの匂いがする図書館だの、そういう所に行ってみるぞ!」などと思ったものである。

 しかし、40年近く前に上京して以来、そんなことを思ったことがあるということは、きょうの今まで、まったく忘れていた。どうも私の住むようになった世界が、カソリック系大学のチャペルを舞台にしたメルヘンチックな世界ではなく、官学系のもっと俗っぽくて身も蓋もない法律の世界となったからである。だからこそ、大学キャンパス内の銀杏の黄葉くらいで、大いに感激しているのかもしれない。

 仮に、学生時代にこの歌詞をそのまま素直に受け入れることができていたとしたら、果たしてどうなっただろうかと思ったりする。……… 中原中也のようになっているかって?……… まさか! ご冗談を!




 「学生時代」 歌詞

            平岡精二作詞・作曲

  蔦の絡まるチャペルで
  祈りを捧げた日
  夢多かりしあの頃の
  思い出をたどれば
  懐かしい友の顔が
  一人一人うかぶ
  重いカバンを抱えて
  通ったあの道
  秋の日の図書館の
  ノートとインクの匂い
  枯葉の散る窓辺 学生時代

  讃美歌を歌いながら
  清い死を夢見た
  何のよそおいもせずに
  口数も少なく
  胸の中に秘めていた
  恋への憧れは
  いつもはかなく破れて
  一人書いた日記
  本棚に目をやれば
  あの頃読んだ小説
  過ぎし日よわたしの学生時代

  ロウソクの灯に輝く
  十字架をみつめて
  白い指を組みながら
  うつむいていた友
  その美しい横顔
  姉のように慕い
  いつまでもかわらずにと
  願った幸せ
  テニスコート
  キャンプファイヤー
  懐かしい日々は帰らず
  すばらしいあの頃 学生時代



東京大学本郷キャンパスの三四郎池に映る秋



(2008年12月5日記)
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