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徒然114.新型潜水艦そうりゅう
はるしお型練習潜水艦「あさしお」



 2009年の春、海上自衛隊で史上最大の大きさとなる新型潜水艦「そうりゅう」が進水するらしい。基準排水量2,900トン、全長83.7メートル、全幅9.1メートルである。ところがこの潜水艦は、単に図体が大きいだけではなくて、原子力潜水艦にも匹敵、いや見方によってはそれを上回る最新の推進システムを備えているとされる。

 というのは、「そうりゅう」は、在来型のディーゼル潜水艦に位置づけられるものであるが、それに加えて、艦内の電力補充のために、大気を取り込む必要のない機関、スターリング・エンジンを備えているからである。これは、温度差を利用して動力を発生するものなので、空気を使う必要がない。ちなみに、ディーゼル・エンジンの場合は、これを回転させるためには空気を取り入れなければならず、それには、シュノーケルを突き出して航行する必要がある。しかし、これは敵に容易に発見されやすいという欠点があり、ディーゼル潜水艦の最大の問題となっていた。第二次大戦下での潜水艦作戦を描いたドイツ映画Uポートを見ると、艦長が常にシュノーケルを上げるタイミングを意識していたことが、よくわかる。

 スターリング・エンジンの原理は、1816年に確立されているので、すでに200年近い歴史があり、私でも知っているくらいのものである。これは、シリンダーの中のガスを外部から加熱したり、冷却したりして、その温度差で動力を生み出す。つまり、エンジン内の気体を温めて膨張させてクランク軸を回し、フライホイールとピストンで連続的な回転力を得るものである。

 普通のエンジンのように、燃料を噴霧して爆発させる必要がないので、とても静かなことから、まさに静粛性が必要とされる潜水艦には、最適のエンジンとなる。ところが従来は、トロリ・トロリとしか回らないので力が弱く、とても通常の機関のエンジンとして使える代物ではなかった。しかし、最近になってその非大気依存性や静粛性という特性が着目され、まずスウェーデン海軍のゴトランド級潜水艦に世界で初めて搭載された。そして、おそらく世界で2番目となるのが、この潜水艦「そうりゅう」ではないかと言われている。

 ちなみに、ここに至るまで、技術開発に相当な時間と努力が払われたらしい。平成4年に、防衛庁技術研究開発本部がスウェーデンのコックスム社のスターリング・エンジンを購入した。ところがこれは、容量が小さく、かつ深海で働かせるにはとても実用的ではなかった。そこで、潜水艦用の水中発電システムとして研究が続けられ、水中で酸素を供給するための大規模な液体酸素タンクが完成した。このタンクは、なるべく薄い板を使いながら、耐圧性、断熱性そして耐衝撃性を十分に持つというものである。

 これが首尾よく完成したことから、平成9年後半から10年前半にかけて水中試験が行われ、次いで12年から13年にかけて、はるしお型練習潜水艦「あさしお」の船体を輪切りにしてこのシステムを搭載し、再び溶接するということまでして、この水中発電システムの実証試験を行った。これが、今回の潜水艦「そうりゅう」への搭載につながったという。

 静かさという点では、原子力潜水艦にも勝るとされている。国民が懸念する原子力に依存しないで、在来の技術を発掘して深く掘り下げ、原子力に勝る特性のある技術を生み出した。ここでも、日本の技術力がいかに先進的であるかが証明されたものと思われる。


(注) MAMORU2009年2月号、Vol.24を参照した。

(2008年12月19日記)




【後日談】そうりゅうの引渡式

 新型潜水艦「そうりゅう」は、2009年3月30日、神戸市兵庫区の三菱重工業神戸造船所において、その引渡式が行われた。建造費は約600億円である。艦体そのものは2007年12月に進水していたのであるが、この間、三菱重工業神戸造船所で艦内装備などの艤装が施されていたものである。引渡式の写真を見ると、艦尾の水面上に舵らしきものが見えたのであるが、それがまるで「V」の字のように海から突き出していたので驚いた。実は、そうりゅうの舵は、「X」字型ということで、その上の部分だけが見えたらしい。これは、旋回半径が小さくなるとか、1〜2枚が故障してもなお操艦が可能とかいう新機軸であるとのことである。配備先は、広島県呉市の第1潜水隊群となった。

 ちなみに、「そうりゅう」は、各国海軍の間でも注目の的のようである。たとえば、私がたまたまお会いした同盟国の或る海軍提督に、「スターリング・エンジンで動く新しいタイプの潜水艦のことはご存じか」と聞いたら、たちどころに「ああ、あのAIP(Air Independent Propulsion)型サブマリンの、二つの龍のことだね」という答えが返ってきた。さすが・・・。




 (参 考)「そうりゅう」の諸元は、こちらのサイトが詳しい。

(2009年5月12日記)








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