<< 徒然128.ヘイ・フィーバー | main | 徒然129.自衛隊用語辞典 >>
星雲NGC2818


 最近、この写真を私のパソコンの壁紙に設定して、毎日飽きずに眺めている。これは、昨年11月に、NASAのハッブル宇宙望遠鏡がとらえた散開星団内にある惑星状星雲NGC2818の姿である。羅針盤座(constellation of Pyxis)の方向、約11万光年の距離にある。

 ところで、これは何の写真かというと、太陽程度の恒星がその核融合の燃料を使い果たして爆発を起こし、そのときに広がったガスなのである。周囲の赤は窒素、良く目立つ青は水素、中心部にわずかに見える緑は酸素であるという。その中心には、爆発した恒星の残骸があるらしい。

 宇宙空間のガスが重力で凝縮した原始星は、徐々に収縮して中心の温度が上昇していく。その温度が1000万Kを超えた頃、水素原子がヘリウム原子へと変換される核融合反応が始まる。これで大きなエネルギーが発生するので、星の収縮は止まり、いわゆる主系列星となる。主系列星では、核融合反応によって生じる外へのエネルギーと、重力による内への収縮の力が釣り合って、星としての構造を長期間にわたって維持している。この状態は、星の中心にある水素が枯渇して、ヘリウムの核ができるまで継続する。このヘリウムの核は核融合反応が進行するにつれて大きくなっていき、それに連れて温度が上がる。そうなると、星の外層にある水素が膨張し、それに伴って星の表面温度は逆に低下していって赤色巨星となる。これは、外層が膨張した巨大な赤い恒星である。

 われわれの太陽は、約50億年後にこのような状態となり、太陽の外縁は今の金星の軌道程度にまで拡大する。そして外層がさらに膨張して温度が下がるが、その一方で中心核はどんどん核融合が進み、窒素や酸素などの重い元素が形成される。そうなると、太陽は外層のガスを一挙に放出して、この写真のような惑星状星雲を形成する。そのとき、中心核は、小さく収縮して高密度になり、もはや核融合を起こすことができなくなって、いわゆる縮退物質が残る。これは、白色矮星と呼ばれる。この白色矮星は、徐々に熱を放出していって、極めて長い時間をかけて、黒色矮星になっていくという。

 ちなみに、質量が太陽の8倍以上の恒星は、中心に鉄が生成し重力崩壊を起こして超新星爆発を引き起こす。これが、下の写真にあるケプラー超新星の残骸である。これは、凄まじいばかりに、ちりぢりばらばらになっていることがよく見てとれる。しかし、それほどの質量がないわれわれの太陽は、これほどひどい爆発には至らないが、それでも遠い将来には、こんなお姿となるらしい。


ケプラー超新星の残骸


 ははぁ、冒頭の写真は、われわれの太陽の50億年後の姿というわけか・・・。イギリス映画のドクター・フーのように、タイムマシンで50億年後の未来に一挙に飛ぶと、このような風景が眼前に広がるらしい。地球はというと、すでにその前に、赤色巨星となった太陽に呑み込まれてしまっていて、この青や赤のガスのごく一部となっているはずだ。

 ひょっとして、この惑星状星雲NGC2818の元となった恒星にも岩石でてきた惑星があり、しかもそれが生物の生存に適した距離を公転していて、水と酸素が豊富で、たくさんの種の生物が育まれていたとしたら、どうなっていただろうか・・・。巨大な星となったその恒星にすべて呑み込まれて炎上し、散り散りばらばらとなってガスとなり、それがこうして赤や青に輝いてわれわれに届いているのかもしれない。もし知的生命体がいたとしたら、どうなったのであろうか。気になるところである。

 これから50億年後(※)まで、人類が生存していたら、その爆発炎上の前に、他の星系へ大脱出しようと試みる違いない。いや、未来の人類は絶対に脱出を敢行して、無事に他の星に到着するものと信じたい。それにしてもこの写真、特に青色が美しいなあ。これは水素だし、もっと中心に近いところには緑だから酸素がある。あっ・・・もしかすると、これが地球型惑星の残骸だったりして・・・。 



(2009年2月17日記)


(※) 50億年後の地球

 なぜ50億年後かというと、本文で述べたようにその頃には恒星としての太陽は、核融合の燃料である水素やヘリウムを使い果たして赤色巨星になるといわれている。そして終いにはその体積が急膨張して、地球の軌道にまで達するという。「天が崩れ落ちてくる」のではなく「天が火を吹いて全部燃え尽きる」というのが、現在の天文学の知見である。

 NGC 2818の姿
は、その50億年後の太陽の姿である。太陽と同じくらいの質量を持つ恒星が、水素やヘリウムを燃やす核融合を終え、その終わりにガスを爆発的に放出する。このガスは、数万年かかって徐々に薄れていき、中心に残る恒星の残骸は、数十億年の間には冷えて白色矮星となるという。

 (出 典)アストロアーツ・Hubbleより
カテゴリ:- | 21:14 | - | - | - |