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徒然130.紙一重の差
 去る3月23日午前6時48分、成田空港で開港以来初の重大航空事故が発生した。事故機は、中国広州から飛来したFedexの貨物機である。たまたま、NHKのカメラが滑走路を映していたので、その事故の瞬間を見ることができた。

 機体が滑走路に最初に着地した瞬間は、浮力を失ってドーンと叩きつけられたような感じである。その際には、とりわけ後輪にダメージがあったように見受けられた。三段跳びにたとえればこれがホップである。次の瞬間、あたかもその反動を受けたように、機体は再び飛び上った。そして機首が持ち上がった後、今度はその持ち上がった機首を逆に下に向けて、そのまま滑走路に突っ込んだ。前輪が吹っ飛んだように見えたが、これがいわばステップである。ところがこの最後の着地によって再び反動で機体が飛び上り、そのときに後部から火が出た。そして機体はゆっくりと左へ傾き、左の翼端を地面に付け、火だるまになったままで仰向きになり、滑走路左の芝生に突っ込んだのである。

 事故が起こってから、消防車が10台ほど集まって消火作業に当たったが、事故機はほとんどが焼けただれ、一見して焼けていないのは、コックピット付近をただ残すばかりとなった。そこから、熱風の中を操縦士と副操縦士がひとりずつ運び出されたが、いずれも病院で死亡が確認された。何百人も乗る旅客機ではなくて、これは貨物機であったから、人的損失はアメリカ人であるこのお二人だけにとどまったのは、まさに不幸中の幸いである。ちなみに、事故機は上下逆さまになり、前脚のタイヤが三本とも外れ、左主翼が根元から折れていた。積み荷は47トンで、うち可燃性液体が408キロあったことから、これが激しく燃えた原因かもしれないとのこと。

 事故の原因については、まず天候との関係が取りざたされた。事故当時、低気圧が通過中で、強風が吹き荒れていたからである。我々の世代では、乱気流とかダウンバーストという用語が頭に浮かぶが、今回は「ウィンドシア(windshear)」という専門用語が新聞紙上に踊っていた。これは、乱気流の一種で急速に風速や風向が変わる現象であり、前線、低気圧、ジェット気流の近くで起こるという。これによって、着陸直前まで向かい風を受けていたのに、滑走路直前ではそれがなくなってドーンと落ち、これに慌てたパイロットの操縦桿の操作のタイミングがずれたようだ。これは、「ポーポイズ現象」といって、イルカが海面を跳ねて進むように機体が弾んで機体が地面から跳ねて落ちてということを繰り返す様をいうという。

 今回は、この事故の10分前に、おなじA滑走路に着陸した日航機から、高度600メートル以下でウィンドシアが起きているという情報があっったので、管制官が事故機に着陸4分前に伝えていたし、2分前と事故時には風向と風速も伝えていたという。その2分前の交信時には管制官からの着陸許可を了解するという機長からの交信があったので、こうした情報がコックピット内でどのように受け止められたのかは、これからのボイスレコーダーの解析が待たれる。

 この事故を見た航空専門家の中には、今回の最大瞬間風速20メートル程度の風でも十分に着陸はできるが、たとえウィンドシアがあったとしても着陸をやり直したり、あるいはいったん着地したならポーポイズ現象が起きないように機体の姿勢を保つように操縦すれば、重大事故は避けられるとのこと。そしてもうひとつの要因としては、機体のDC11は、後部にエンジンがあり尾翼も小さいことから、操縦のバランスの調整が難しいというが、これも事故の遠因となっているかもしれないとのことである。

 ちなみにこの日は、首都圏で強風が吹き荒れた。このため、鉄橋をわたる鉄道が影響を受けた。というのは、多くの鉄橋は最大瞬間風速20メートル程度で通行を制限していることからである。常磐線は快速が午前8時20分から1時間止まった。東西線は午前8時すぎに運転を見合わせ、約1時間で運転を再開した。千代田線も午前9時頃から約30分間止まった。

 ところで、私の友人がたまたま、この事故機の直前に着陸した日航機に乗っていた。その話によると、着陸の直前には今まで経験したことがないほどかなり揺れた。それも、左右だけでなく上下にも揺れ、どうなるのかと思ったという。しかし、何とか着陸したので、その瞬間、機内にはアーッという安堵の声が漏れたらしい。そして、普段通り入管と通関を済ませて出てきたところで、奥さんから安否の確認の電話があった。最初は何のことかわからなかったが、強風のために自分の次の着陸機が事故を起こしたと聞いて、びっくりしたやら、ほっとしたやら何やらで、複雑な気がしたという。事故で亡くなった二人のパイロットには申し訳ないが、生きるか死ぬかは紙一重で、自分はともかく運が良かったと話していた。人生とは、案外、そんなものかもしれない。



(2009年3月24日記)
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