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米空母GW見学

(出典)見学の際にいただいたパンフレットより


 横須賀に行き、第七艦隊の旗艦である米空母ジョージワシントンを見学させてもらった。これは原子力空母で、カタログによれば18年間燃料補給が不要の原子炉2基を持ち、速度30ノット以上、満載排水量97,000トン、艦載機数75機、カタパルト数4基、飛行甲板全長1,092フィート、飛行甲板幅252フィート、船底からマストまでの高さ244フィート、スクリュー数4基、乗組員数6,250名、区画数3,360、電話数2,000台、照明数30,000台という大きな数字が示すように、文字通りの巨艦である。

 ちょうど北朝鮮から日本の東北上空を飛び越えて、先方が強弁するところによると人工衛星、その実は弾道ミサイルが、来週まさに発射されようとしているというキナ臭い状況の下ではあったものの、誠に平和そのものの見学であった。立ち入り禁止の原子炉エリアはもちろん我々もノーサンキューということで行かなかったが、それ以外の船の中を艦橋つまりブリッジ、飛行管制センター、CDC(中央指揮所)、それにPX(売店)に至るまで、あちこち案内してもらった。

 艦の構造は比較的シンプルである。艦体の真中には広大な格納庫のような空間があり、その下には飛行機が収納されていてその空間で整備や武器の搭載が行われ、そこから飛行甲板に行く大きなエレベーターが2台あり、それぞれに飛行機が同時に2台乗せられるとわずか3秒で甲板に着くという。そうやって様々な艦載機を、狭い甲板上にグリコのおまけのように所狭しとばかりにいっぱい並べて、順次、発艦と着艦をさせるというものである。


(出典) 見学の際にいただいたパンフレットより


 ただそれだけなら、どの国も簡単に作れそうだが、実はアメリカのほかでジェット戦闘機を水平に離発着させる航空母艦を持っているのはわずかにフランスだけで、それもごく小規模のものにとどまっている。いやいや、フォークランド紛争のときにイギリスが航空母艦を繰り出したではないかといわれそうだが、あれは垂直に離発着を行うハリアー戦闘機専用である。かつて、ソビエト連邦も航空母艦を持とうとしたが、結局うまくいかなくて、ヘリコプター専用空母ミンスクとなった。ところが今年3月下旬、米国防総省が中国の軍事力に関する年次報告書を公表し、その中で中国が2010年までに初の国産航空母艦の建造に着手するのではないかと分析している。これが事実ならは、極東アジア特に台湾をめぐる軍事情勢に大きな影響を及ぼすものと懸念される。

 その点、どうなのだろうかと案内してくれた米将校に素朴な疑問をぶつけてみた。その将校は、首を傾げつつも、「中国は、それなりのものを作るだろうが、そう容易には実現できないはずだ。艦載機のパイロットにしてみれば完璧な安全性が保障されてはじめて安んじて離発着できるものだけれど、何もノウハウがないと、非常に危険を感ずるはずである。米国も、過去半世紀以上にわたるノウハウがあってはじめて、こうして航空母艦の安全な運用ができている。これはいわば、『血』でもって購ったノウハウだ」という。ははぁ、なるほどと納得してしまった。。


(出典) 見学の際にいただいたパンフレットより


 どういうことかというと、まず航空母艦からの発艦には、とてつもない早さで動く蒸気カタパルトでもって、その艦載機を高速で打ち出す必要がある。重さ48,000ポンドの艦載機をわずか300フィートの距離で止まっている状態から時速165マイルまで急速に加速することではじめて、海に落ちないように艦載機を飛び立たせることができるのである。それを日中にはわずか18分間で25機を離陸させるように訓練しているというし、夜間でも1分毎に離陸させることができるとのこと。まずは、この辺りのノウハウである。たとえば、飛び立つ艦載機の種類、重さ、性能などで打ち出す速度などをはっきりと変えているらしい。

 次に、着艦の技術で、アレスティング・ワイヤーなるものを甲板上に20フィートごとに4本張り、これに艦載機の後部から伸びる8フィートの棒の先のフックを引っかけて止めるそうである。そのとき、艦載機は時速150マイルもの速度が出ているが、飛行機の種類にかかわらず、その全てを甲板上の同じ位置に完全に停止させることができるという。ちなみに、このワイヤは100回使用すると破棄されて、新しいものを使用しなければならないという規則になっている由。この着艦を補助するために、ボールという一連のライトがあって、黄色と赤色に点灯している。これが緑色の水平バーの上に現われたときは、進入角度が高すぎるというパイロットへのサインとなる。逆に水平バーの下に現われたときは、進入角度が低すぎるということを意味し、もしライトが赤ければ非常に低いということになる。まあ、こう書くと、いとも簡単のように見えるが、大海原の中で甲板の長さがわずか100メートルしかない空母に着艦するのいうのは、まるで海の中で切手を探しているようなものだといわれる。それが夜間だと、ますますもって難しくなり、パイロットが相当に技量を磨かなければ不可能だという。


飛行管制センターのコントロール・ボードで、正確な縮尺の艦載機の模型によって管制をしている。緑のピンは最初に発艦する機、黄色はその次に発艦する機を示すなど、付けられている飾りにはひとつひとつ意味がある。丸くて白いのはヘリコプターを示す。ちなみに、故障するとひっくり返す。


 ところで、ブリッジと、飛行管制センターを見学させてもらったが、面白いのはこうした甲板からの離発着が、今だにお手製の模型を使ってコントロールされていることである。この高度情報化の時代に、なんとまあ、遅れているのではないかと思うところである。しかし、副艦長がおっしゃるには、テレビ画面などを使ってもよいが、戦闘のときなどにもし壊れでもしたら、目も当てられないことになる。その点、このやり方はもう何十年も使ってきていて、非常に信頼性が高いし、一目瞭然であるから、これからも使い続けるつもりだとおっしゃっていた。

 ちなみに、この艦を動かす主力となっているのは、艦員の平均年齢が20歳を下回るということからわかるように、高校を出たばかりの若い水兵さんたちらしい。海軍提督で在日米軍司令官のジェームズ・ケリー少将は、こうした若い水兵さんたち向けに、スポーツ施設、全米17大学と提携している学校施設などを建てて、皆の尊敬を集めているという。何事も人材の育て方ひとつである。願わくは、水兵さんたち、夜の街に出歩くのではなく、こうした施設で汗をかき、大いに勉強をして、明日の日米関係を担う貴重な人材になってほしいものである。

 最後に、海軍提督ケリー少将ほか在日米軍の皆さんに敬意を表し、あわせて空母ジョージワシントンのグレコ副艦長のほかお世話になった乗組員の皆さんにお礼を申し述べるとともに、今後の大いなるご活躍を期待して、筆を擱くこととしたい。


艦内の格納庫に描かれたシンボルマーク



(2009年3月28日記)
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