<< 徒然131.IE8の問題 〜 技術メモ | main | 徒然133.母は強かった >>
徒然132.なんでも修理の時代
 近頃の世界的な大不況のせいで、新品を買うのではなく、持っている品物を修理をして使う人が多くなったという。私もその潮流に乗って修理を試みた・・・といいたいところだが、実は私の家では、そもそも古い物をこれ以上使えないほどに遣いまわすのが習い性となっている。だから世の中が超バブルだろうが大不況だろうが、そんなことがどうなろうと、別に関係がないというわけである。

 先日の日曜日の午後、いつもの通りボストンバッグに着替えを入れて肩に掛け、神宮へテニスに出かけた。その途中、地下鉄の階段を下っているときに、スルスルッと肩ひもが外れていってしまった。条件反射よろしく右手でさっとボストンバッグを押さえたので、床に落ちることはなかったが、いったいどうしたのだろうと肩ひもを見たら、外れてしまっている。そこで、その外れた部分に目をやったところ、ボストンバッグの片方の端にあるその輪を押さえていた革が切れていた。幸い、ボストンバッグ自体には何も問題がないので、要するに肩ひもを結びつけることができなくなっただけである。仕方がないので、肩にぶら下げるのを止めて、そのまま手で持ってテニス場に行った。

 しかし、ボストンバッグは肩に掛けて使うことも多いので、このままではいささか不便である。そこで家に帰ってから、その壊れた個所をよくよく眺めるとたった2センチくらいの革の部分が切れただけである。このボストンバッグは、5〜6年前に上野の松坂屋で買い、それ以来ほぼ毎日曜日こうして使ってきているので、それなりに愛着がある。キルト風の生地のデザインもよいし、容量もちょうど適当である。「引き続きこのまま使いたいなぁ」という気になって、「そうだ。修理に出してみよう」と考えたのである。

 しかし、まだ実際に持ち込んだことはないものの、靴の修理の場合は、よく駅前で「
ミスターミニット」という店を見かける。それに服の直しなら、あちこちでやっていて、東京駅の丸ビルの中にさえ、それ専門の店がある。ところが、鞄の修理は、なかなか思いつかない。困ったなぁと考えていたら、私の住んでいるところは下町なので、そういえば道の向いに「鞄の製造販売」という店があるのを思い出した。そこで、家内に相談したら、「それなら、持って行ってあげる」ということになったが、「修理代がいくらまでならいいの?」と聞かれた。「まあ、この種のものなら、5000円かな」と答えた。

 そういうわけで、これからは家内の話となる。

「向いの鞄屋さんに持って行ったらね、『これはごく一部が裂けただけと思われるかもしれないですが、ここを直すには、横に広がっている革を全部取り換える必要があるし、同じような革を探さないといけないから、結構かかるんですよ』と言われたの。それで、『どれくらいですか?』と聞いたら、『約1ヵ月、費用は1万円』というわけ。『あらら、それはちょっとね(と、予算オーバーを思い出して)、口ごもっていたら『実はね、こういうものは、買った店に持って行った方が部品があるだろうし、その方が早いんですよ』というの。それで、そのまま失礼をして、言われたとおり、買った松坂屋に行ったわけ。」

 「バスで御徒町に着いて、そのまま松坂屋の鞄売り場に行って店員さんに見せたの。すると、これは『Kinloch Andersonというブランドで、確かに当店でお買い上げいただいたものです』というのよね。そして、『この修理ですと、4〜5000円で承ります』といわれたから、そのままお願いしてきちゃったというわけ」

  ほほう、そんなブランド品を持ち歩いていたとは、全く知らなかった。そこでインターネットの
Kinloch Andersonのサイトを見てみたのだが、もともとはスコットランドのキルティング生地を売っているメーカーらしい。例のスコットランド高地(ハイランド)の男性が着用する短いスカートなどに使われる縦横模様のあのキルトの生地である。そういえば、私のマフラーも、これだったことを思い出した。

 サイトでの情報を総合すれば、こういうことらしい。キンロック・アンダーソン(Kinloch Anderson)は、紳士服職人のウィリアム・アンダーソンが、1868年にスコットランドの首都エジンバラで始めたブランドで、今や伝統と歴史ある英国ブランドの中でもひときわ有名なものだとある。イギリスでは、キンロック・アンダーソンといえば、ハイランド・ドレスと呼ばれるキルトとスコットランドスタイルのジャケットを組み合わせた伝統的な男性用フォーマルウエアの代名詞となっている。

 イギリス王室との関係も深く、1935年にはジョージ5世からロイヤルワラント(英国王室御用達の証)を授かった。それ以来の関係があり、現在ではエリザベス女王やその夫君のエジンバラ公爵、そしてチャールズ皇太子のお三方から、ロイヤルワラントをもらっている。このメーカーは、長年にわたってスコットランド連隊の制服を製造してきたし、それは現在でも続いているという。

 私は、ついぞそういうことを知らないで、そんな貴重なブランドのボストンバッグを、中にテニスの着替えと水筒を入れただけで、しかもテニス場への往き帰りに使っていたのか・・・、スコットランド人が聞いたら、それこそびっくり仰天するような使い方をしていたとは・・・。でもねぇ、私のボストンバッグの生地と、スコットランド男性がバグパイプをかき鳴らす際に着用する短いスカートの生地が同じだったとは、誰も考え付かなかっただろう。



(2009年4月1日記)
カテゴリ:徒然の記 | 00:34 | - | - | - |