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早稲田大学法科大学院が既修者枠を設定
 早稲田大学法科大学院は、2008年12月17日にそのホームページにおいて、「2011年度入学者選抜試験の変更点等について」を掲載し、従来のような既修者と未修者とを分けないで入試を行う方式から、これらを区別する入試制度を採用することとし、それまでの方針を大きく転換した。

 同法科大学院では、従来は、入学後に既修者と未修者とを振り分ける試験を行っていた。これは、おそらく多種多様な人材を法曹界に送り込もうとする法科大学院の当初の理念に忠実であらんとする現れであると考える。それはそれで誠に結構なことなのではあるが、私にいわせれば、理想を追いかけるあまりに、その結果としての現実は、惨憺たるものではなかったかと思うのである。

 どういうことかというと、2005年の入試の最終合格者数333名のうち、法学既修者認定試験を受けた受験者数は66名で、その中で法学既修者認定に合格した学生は、わずかに16名であり、同様に2006年の入試の最終合格者数372名のうち、法学既修者認定試験を受けた受験者数は67名で、その中で法学既修者認定に合格した学生は、これまたわずかに23名にすぎなかった。そして、これらの学生が受験したと思われる新司法試験における早稲田大学法科大学院の既修者の実績は、2007年には受験者22名のうち16名が合格、2008年には受験者26名のうち20名が合格している。

 それはよろしいのであるが、他方、これらの既修者を含めた新司法試験の早稲田大学法科大学院の合格者は、2007年には受験者223名のうち115名、2008年には受験者345名のうち130名となっている。ちなみに、法科大学院別にみた2008年の新司法試験の合格者は、東京大学法科大学院は200名、中央大学法科大学院は合格者196名、慶應義塾大学法科大学院は165名、早稲田大学法科大学院は130名、京都大学法科大学院は100名である。

 こうして各大学法科大学院の合格者を比べる中で、早稲田大学法科大学院のこの130名という合格者数を多いと見るか少ないと見るかであるが、ここで想起すべきは、旧司法試験の時代の早稲田大学が非常に健闘していたという事実である。有力な大学がひしめく中で、たとえば2005年の旧司法試験の早稲田大学からの合格者は、228名と最多であった。ちなみにその年は、東京大学は226名、慶應義塾大学128名、京都大学120名、中央大学118名である。そういう早稲田の栄光の時代を記憶にとどめている者からすれば、法科大学院時代に入ってからのこの新司法試験の結果は何たることかと、早稲田ファンとしては、満足のいかないところである。

 ちなみに、こうした他の有力大学では、いずれも入試制度で既修者枠と未修者枠とを分けていて、既修者枠の方が多い。既修者の合格率は44.3%、未修者の合格率は22.5%(いずれも2008年)であるから、当然のことながら既修者が多ければ多いほど合格者は多くなる。それだけでなく、法学部を卒業した者の身になって考えてみると、早稲田大学法科大学院に入学するということは、法学既修者として認定される者が非常に少ないということからすると、3年間も勉強しなければならないことを意味するのとほぼ同義である。そうであるとすれば、法律知識のある優秀な者ほど早く合格したいだろうから、早稲田は選ばずに他の法科大学院の既修者枠で入学して2年間の勉強で済ませようということになる。その方が、時間も学費も節約できるからである。

 そういうことで、早稲田大学法科大学院を選ぶのは、主として他の分野で社会的に活躍していたり別の勉強をしてきた者も多いのではないかと推察する。それはそれでひとつの理想なのではあるが、問題は、その反面として、優秀な法学既修者をみすみす取り逃がしている点である。ここはやはり、他のライバル大学と同様に、入試の段階から既修者枠と未修者枠とを分けるべきである。まさにこの方向を選択して全体の半数を既修者としようとする今回の早稲田大学法科大学院当局の決断は、歴史に残る大英断ではないかと考える次第である。



(2009年4月16日記)


【早稲田大学の発表】

 2011年度入学者選抜試験(2010年実施)における変更点の概要を、次の通りお知らせいたします。(略)
 
1.法学既修者の募集に定員枠を設けます。3年標準課程への入学を希望するもの、法学既修者として入学を希望するもの(2年修了)、おおよそ半数ずつ定員枠を設けて、それぞれ別々に募集を行う予定です。また、出願に際しては 、両者の併願を受け付けることを検討しております。  
   
2.法学既修者として入学を希望する場合は、出願時に日弁連法務研究財団が当該年に実施する「法学既修者試験 (法科大学院既修者試験)」注)の成績の提出が必須となります。「法学既修者試験 (法科大学院既修者試験)」は「第3部」までの6科目受験(憲法・民法・刑法・民事訴訟法・刑事訴訟法・商法)を必須とし、出願時には同試験成績データ提供への許諾をお願いする予定です。書類審査、 「法学既修者試験(法科大学院既修者試験)」の成績、および本研究科が独自に実施する民法・刑法・憲法3科目の論述試験の成績をもとに、法学既修者としての合否を判定する予定です。  

3.3年標準課程への入学に際して、総入学定員の3割を目標に「社会人」および「法学部以外の学部出身者」を優先的に選抜する募集枠を設ける予定です。3年標準課程への入学に際しては、従来の選抜方法(第一次選考:書類審査、第二次選考:面接試験)を踏襲する予定です。


(2008年12月17日早稲田大学法科大学院HP掲載)



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