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第4回目の新司法試験
 第4回目となる今年の新司法試験は、5月13日から次の4日間の日程で行われた。それぞれ、1日の正味の試験時間が、5時間半、7時間、6時間、4時間という長いものだったから、これは肉体的にも精神的にもかなり過酷な試験である。受験者の皆さんは、極度の緊張の中で全力を尽くさなければならず、相当にお疲れになったことと推察する。

5月13日(水)短答式
   14日(木)論文式(選択、公法系)
   16日(土)論文式(民事系)
   17日(日)論文式(刑事系)

 法務省から4月23日に発表された資料からうかがえる受験者像は、次のようなところである。もちろん、この9,564人という受験予定者がすべて受験するわけではない。現に昨年は、7,710人の受験予定者に対して実際に受験したのが6,261人で受験率が81.2%(前年87.3%)であった。まあこれは、法科大学院の卒業から5年以内に3回受験しても不合格のときは受験資格を喪失する(正確にいうと、また別の法科大学院に入学して卒業すれば5年以内という受験資格が再びできるが、そういうことをする人は、ほとんどいないと思われる)ので、卒業したばかりでまだ合格の自信がない人は、受験を先延ばしにするのである。そういうことで、また今回も同じことが起きるという前提でこの約81%という率を使わせてもらって乗ずると、今年の実際の受験者は、約7,700人ということになる。

 さて、気になるのは合格率であるが、それには法務省が合格者数をどう決めるのかということにかかっている。これまで3回の試験を振り返ってみると、2006年合格率48%(合格者数1,009人)、2007年合格率40%(合格者数1,851人)、2008年合格率33%(合格者数2,065人)と、合格率が毎年漸減している。2006年は法科大学院制度が発足して最初の年であることから、2年コースの受験者しかいなかったため、48%という最高の合格率となった。しかし、これとて、司法制度改革の一環として法科大学院制度を設けることとなった当初の宣伝の約7〜8割の合格率という触れ込みと比べると、とても届かない数字である。しかし、その後の年はというと、合格率は目を覆いたくなるほどに低下の一途をたどっている。この原因は、文部科学省も、無論のこと法務省も、誰も管理ができないままに法科大学院の総定員を増えるに任せてきたからである。ようやく最近、文部科学省が指導を始めた結果、国立大学を中心に定員を約2割ほど削減する方向に動き始めている。しかし、たとえそれが実現しても、その数が減った卒業生が出るのはどんなに早くても3年後ということになるので、今の水膨れ状態は、そう簡単には解決できないだろう。とすると、今年の合格者数は、最近のトレンドを伸ばして推定するほかない。

 振り返ってみると、法科大学院制度が作られたとき、司法試験合格者数を2010年に3,000人に増やすという計画であった。そうすると今年は、2008年と2010年の真ん中をとり、合格者数は2,500〜2,600人というのが常識的に考えられる線である。ところが、これまで司法制度改革を支えてきた日弁連が、最近その態度を豹変したため、合格者数3,000人という目標そのものが揺らぎつつある。しかし、現在でさえ、超低空飛行を続ける合格率にあえいでいるというのに、それでは法科大学院の学生の信頼を大きく損ねることになってしまうと、私が懸念するところである。しかしながら現在のままの政治情勢では、もしかすると2,300人程度にするのがせいぜいのところであるのかもしれない。そうであるすれば、さきほどの受験者数と割り算をして合格率を出すと、29.9%となる。しかし、これだと、合格率が30%を割り込むことになるので、あまりにも外聞が悪く、法務省自身も避けたいと思うに違いない。とすれば、30%以上を死守して昨年とほぼ同じ水準となるようにするため、法務省に頑張っていただいて、できれば今年の合格者数を少なくとも2,400人にはしてもらいたいものである。ただし、以上の数字には何の根拠もなく、私の単なる希望的観測にすぎない。

 さて、今年の受験予定者の中の受験回数をみて、いささか気が重くなるのは、私だけではあるまい。法科大学院の教師なら、誰でもそう思うはずである。というのは、受験回数1回目が5,349人であり、これは昨年4,890人から459人も増えている。この間、法科大学院がたくさん増えたわけでもないので、そのほとんどが昨年の受験を手控えた人ではないだろうか。同様に2回目は3,116人と昨年より783人増え、3回目は1,099人と昨年より612人増えている。それぞれ昨年の試験、昨年と一昨年の試験に不合格だった人たちだ。特に最後の3回目の人は、今年合格しなかったら、もうタイム・アップとなってしまう。まさに崖っぷちに追い込まれているわけである。もうこうなったら、それこそ全力を尽くして頑張るしかあるまい。

 実はなぜそんなことを言うのかといえば、つい先日、私が教えている法科大学院で、今年の新司法試験を受験した卒業生たちの激励会を開いたからである。出席した卒業生の皆さんは、いずれもこの4日間の激闘を体験して相当に疲れ、それがようやく回復した頃の開催だった。私のクラスにいた元学生さんたちと話をして、ほっとした気持ちや発表まで心配な気持ちがよくわかった。しかし、「やるべきことをやって全力を尽くしたわけだから、ここに至ってくよくよしても仕方がないので、文字通り天命を待つという気持ちでいたらいいよ。どうしても心配ならとりあえず気分転換に小旅行でもしてきたらどうですか」とお勧めしておいた。

 私とて、私が教えた学生さんが皆、合格してほしいと心から願っているが、合格率からすると、決してそのようにはならないところが、やるせなく、そして悲しいところである。しかし、考えようによっては、それだからこそ、資格に値打ちがあるということなのかもしれない。


 受験予定者数等 9,564人(昨年7,710人)

 (1)性別構成男性 6,688人(昨年5,374人)
          女性 2,876人(昨年2,336人)

 (2) 受験回数
  1回目 5,349人(昨年4,890人)
  2回目 3,116人(昨年2,333人)
  3回目 1,099人(昨年  487人)

 (3) 既修・未修別
  既修者・法学部卒   3,262人(昨年3,012人)
  既修者・非法学部卒   492人(昨年  412人)
  未修者・法学部卒   3,620人(昨年2,539人)
  未修者・非法学部卒 2,190人(昨年1,747人)



(平成21年5月24日記)
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