<< 旧古河庭園の薔薇 | main | 靖国神社の菊花展 >>
徒然161.新政権の発足から1ヵ月


 民主党の新政権の発足から1ヵ月経った。この間の出来事を振り返ってみると、いやもうすべてがドック・イヤーになったようである。旧自民・公明党政権下ならおそらく7年くらいかかっていたようなことが、たった1年で実現しようとしているがごとくに感じられ、わずか1ヵ月前と比べてまるで隔世の感がする。閣僚の中でも最も存在感があるのは前原誠司国土交通大臣で、八ツ場(やんば)ダムの建設中止、高速道路の無料化、公共事業削減などの大きな問題を次々に表明している。

 たとえば、このうち、八ツ場ダムは着手してから50年という長い年月が経過し、住民や旅館などが代替地に引越しをしている最中だったことから、今後の生活をどうしてくれるのかと茫然自失の状態になっている人も多い。関係する都県なども、洪水対策や水資源確保のため計画通り実施してほしいという声が強いという。これまでに3200億円を費やし、あと数百億円で完工するという段階に至っている。普通であれば、国への信頼や制度の安定性を維持するという大義名分の下、工事のスピードを遅らせはしても、中止ということまではしないと思うのであるが、前原大臣は、きっぱりと中止を表明した。その上で住民と話し合いの機会を持とうとしたが、そんなことをすれば、応じてもらえないのは当然で、結局のところ話し合いができずに頓挫している。

 もちろん、八ツ場ダムの中止は、民主党のマニュフェストにはっきりと書かれていたものであるが、最近ではそれらに加えて、マニュフェストになかった政策転換まで表明して関係者を憤慨させている。それは、羽田空港の国際ハブ空港化で、千葉県や成田市が最も嫌う問題である。これは、成田空港の着工時からの深い因縁というか経緯のある問題であることから、まずはそういった経緯を踏まえて関係者への意向聴取や根回しというものが必要な事柄であることは、衆目の一致するところではないかと思うのである。しかし、そういうことを知ってか知らずしてか、唐突に方針が表明された。

 加えて、JAL再建問題も表面化してきた。JALはもともと官業から出発して組合が8つもあり、親方日の丸体質と労使問題が問題であったが、為替予約で大失敗して大きな負債を背負い込むようになった。それにお定まりの内紛が繰り返されて、企業体質が落ちる一方であった。今年の春に1000億円ほど銀行融資を得たときには、これで一息つけるのではないかと思われていたが、昨年末のアメリカ発世界不況の影響で、ビジネスクラスの利用が激減して、再び首が回らない状態に落ち込んだ。それで、二つの世界的航空会社グループが救済しようと乗り出してきたが、そうこうしているうちに前原大臣が選んだタスク・フォースが再建案を作り、銀行団に諮った。ところが、銀行団はその再建案に否定的なようである。特に問題にしているのが年金債務で、3300億円を1000億円にしなければならないが、OBつまり退職者の3分の2の同意を得なければならないので、それはかなり困難だという見方である。

 このほか、高速道路の無料化については、とても競争ができないと廃業に追い込まれるフェリー会社が相次いでいるというし、鉄道会社も10%を越す乗客減に見舞われている。これらは、90年比で温暖化ガス排出を25%減という民主党の大目標と相反することは明らかであるが、今後、政策全体の整合性をどう図っていくのだろうと心配してしまう。

 それに、公共事業の削減を進める反面、来年6月から子ども手当を支給するというが、子ども手当がフルに支給されると月26000円だという。それが消費に回れば景気底上げ効果が期待できるが、もう既に「この手当てをすべて貯金しておけば高校卒業時に470万円たまるので、大学進学費用にするんだ」と計算している人もいる。乗数効果の高い公共事業に比べて、これでは景気対策にはならないと思うが、民主党のマニュフェストは、そもそもそうしたマクロ経済効果を考えているのだろうか? どうも、そのように作られているとは思えないので、懸念するところである。

 また、10月15日の締切りで、各省から来年度予算要求を受け付けたが、その合計が95兆円、このほか事項要求といって金額を明示しないものもあるので、それを2兆円とすると、97兆円ということになる。民主党のマニュフェストがあれほど盛りだくさんにある中で、これをどうやって絞り込むのだろうか? これまでの日本の予算の最高額が88兆円であることを考えると、これはなかなか難しい・・・というより、マニュフェストのどれかを諦めるようなことでもしないと、まず不可能ではないかと思うが、どうだろうか。

 また、今年度の税収が当初見込みの46兆円をはるかに下回って、おそらく40兆円を切るだろうという見通しなので、このまま推移すると来年度は初めて国債が税収を上回ることになる。そのような大量の国債を、昨年秋のリーマンショック以来ただでさえ疲弊している市場が消化できるのか心配である。下手をすると、金利の上昇 → 国債償還困難 → 国債未消化 → 更に一段の金利の上昇という悪いサイクルに入りこまないとも限らない。来年度は何とかなっても、その次の年は増税が不可欠だと思うが、鳩山首相が消費税率の引上げを4年間しないと明言しているだけに、一体どうするのだろう。

 以上のようなことを新聞を読んでいて思ったのであるが、しかし、これらの問題は、まだまだ序の口であるかもしれない。これから臨時国会もあるし、年末の予算編成もある。官僚に頼らない主義というわけで、大臣、副大臣、政務官の政務三役が、それこそ自らが電卓をたたくような勢いで大小とりまぜて役所のあらゆる仕事をこなそうとしているらしい。しかも、官僚による国会答弁を禁止する意向なので、国会の委員会では大臣、副大臣が自ら答弁するということになる。しかし、自分で行政をする・・・それも大問題ばかり・・・、加えて野党・自民党の強烈な追及が見込まれる中で国会対応もする・・・なんて、そんなスーパーマンのようなことができるのか、過労やストレスで倒れる三役が続出しないか、これまた心配になる。それやこれやで、難問山積というところであるが、まだ1ヶ月が経過したにすぎない。



(2009年10月18日記)

 民主党新政権の誕生は、こちらから。

 民主党新政権出だしは、こちらから。
カテゴリ:徒然の記 | 23:40 | - | - | - |