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徒然162.年金破綻論の当否

【徳川家康公御遺訓】 人の一生は、重い荷物を負って、遠い道を行くようなものである。決して急いではならない。不自由はいつものことと思えば、足りないと思うこともない。あれがほしいと思うときは、困窮したときのことを思い出せ。忍耐は無事で長生きの秘訣であり、怒りはすなわち敵だと思え。勝つことばかりを知っていて、負けることを知らないものは、結局のところ害がその身に及ぶことになる。何事も自分を責めるようにし、他人を責めるな。及ばないのは、過ぎるよりましというものである。


 土曜日のこと、たまたま小旅行で外出していた。早朝に出て、自宅に帰りついたときには、既に午後8時を回っていた。その留守中に、郵便局の人が来てくれたらしくて、簡易書留が配達できなかったという「お知らせ」の紙がポスト入っていたのである。それによると、その日のうちに郵便局まで取りに来るなら午後11時半以降にし、そうでなくて再配達を希望する場合は、電話かインターネットで連絡してくれという。しかし、もう電話できる時間を過ぎている。そこでインターネットなら可能だろうかと思って、午後10時すぎに日本郵政株式会社のホームページを開いた。そうしたところ、いくつかクリックをしていくうちに、明朝の配達をお願いすることが出来たのである。翌日、本当に来るのかなぁと思いつつ、自宅で待っていたら、実際にその郵便物が配達されてきた。いやぁ、何でもインターネットで、便利な時代になったものだと実感する。

 そういうようにして届けられたのは、私の年金証書である。それに年金決定通知書というものが添えられていて、200万円台にも届かないわずかな年金額が、麗々しくタイプされている。なんだ、こんなに少ないのかと落胆することしきりである。ついでに、「在職中につき支給停止。支給額ゼロ」とある。「いったい、これは何ということだ、そんな絵に描いた餅なら、こんな紙を送って来るな」と言いたいところである。しかし、逆にいうと、私のように還暦に達した人間でこの程度の雀の涙のような年金をもらいつつ、何か別の仕事を探してようやく生活の糧にありつけている方も多いのであるから、むしろ感謝しなければいけないと、殊勝に思うべきなのかもしれない。それはともかくとして、こんな寡少な額で老後はやっていけるのかと心配になってしまった。もっとも65歳になると、これに加えて、夫婦ともに老齢基礎年金をもらうことになるので、そうするとあと130万円は増えるが、それでも、私の父母が現にもらっている年金額には遠く及ばない! 話には聞いていたが、やっぱり本当だった。

 家内に言うと、「もうすぐ住宅ローンも終わるから、その分を積み立てましょうよ」という。そうすると、何年、食いつなげるかと計算したところ、その分だけで家計を5年くらい補填できるとして、やっぱり70歳すぎには、退職金を取り崩していかないといけないなぁ・・・ということになった。その前に、このまま数年間は働けそうなので、まあ何とかなるという気がする。でも、私が体を壊したりすると、計算が大きく狂うし、その前に、巷間いわれている年金の破綻などという事態が起きれば、元も子もない。しかし、本当のところ、その真偽はどうなのだろうと思っていたところ、昨日発売された東洋経済(2009年10月31日号)に、たいへん参考になる記事が載っていた。

1.公的年金制度の現状

  |棒ひとりの厚生年金(老齢年金)給付額は、月平均約20万円
 ◆々睥霄圈弊ぢ喙腓65歳以上)世帯数は、20年前の3倍以上
  公的年金加入者数は7007万人、受給権者数3480万人。
 ぁ)菁、保険料28兆円で、それに国庫負担7.7兆円と、積立金総額191兆円の運用益を加えて、45兆円が年金給付に使われている。国の一般歳出は47兆円であるから、ほぼそれに匹敵する。
 ァ々睥霄埓ぢ咾裡僑院鵑、公的年金・恩給だけで生活している。その割合は、10年前より10%アップした。
 Α,舛覆澆法高齢者1世帯当たりの平均所得金額は、公的年金・恩給が211.6万円、稼働所得が50.5万円、財産所得が17.6万円、仕送り・企業年金・個人年金が16.6万円、社会保障給付金が2.5万円。

2.年金の額

  並膣覿箸膨蠻まで勤めた平均的サラリーマン。年収600万円の場合で、妻が専業主婦のとき) 65歳までは、報酬比例部分131万円のみ。65歳になると、老齢厚生年金131万円+老齢基礎年金73万円+加給年金39.6万円=小計244万円。(妻が65歳になったときに、加給年金はなくなるが、その代わり老齢基礎年金65万円+振替加算5.7万円)=合計275万円。

 ◆並膣覿箸旅盖薀汽薀蝓璽泪鵝G収1000万円の場合で、妻が専業主婦のとき) 65歳までは、報酬比例部分165万円のみ。65歳になると、285万円。(妻が65歳になった67歳のときに)329万円。

3.家計シミュレーション

  憤貳眠板蹐両豺隋法。毅虻仟紊良徂愡匐‘鷽佑硫板蹐如夫の年収600万円、妻の年収100万円。子供は私立大学と私立高校で、子供の学費があり、さらに住宅ローンが77歳まで残っている。退職金1500万円。65歳までは仕事を続けるが、年収は半減という想定で計算すると、年金は、65歳まで報酬比例部分108万円、65歳から231万円、69歳(妻が65歳となる)から272万円となる。そしてこの想定では、73歳時点で貯金が底をつき、破綻してしまう。そこで、この計算をしたフィナンシャル・プランナーのレシピは、住宅ローンの借換え、生命保険の見直し、妻が引き続き働くことだった。それなら、毎年、20万円ほどの旅行に行けるという。

 ◆並膣覿箸旅盖薀汽薀蝓璽泪鵑杷収1000万円の場合で、妻が専業主婦のとき) メタボ家計になりやすい。つまり、メリハリのない家計で生活費が膨張し、教育費が高く、家計簿を付けず、旅行好きで、外食費や飲み代や理容美容などの消えモノ消費が多く、義理で多くの生命保険に加入し、金融商品は勧められるままに購入する。そこで、これに対する対策は、ライフプランを描き、手取り収入を把握し、目標貯蓄額を持って無駄遣いを防ぎ、生命保険を見直し、金融商品はよく比較してから選ぶというものである。なかなか、耳が痛い指摘である。もっと具体的にいえば、月25万円ほどに生活費を落とせばほぼ年金額で生活できる。教育費や住宅ローンが終わっている以上、年間300万円でも貯金できればそれだけで1200万円。その気になれば挽回が早いという。いやはや、その通りである。

4.年金破綻論の誤り

  敘肪章声圓侶彁擦料按鵑おかしい】 2031年に厚生年金か破綻する(2009年5月2日・毎日新聞)という記事は、日本の実質経済成長率が今後100年間マイナス1.2%、特殊出生率は1.26という前提である。しかし、こんな非現実的な前提でこれからの日本経済や年金政策を語るなどという馬鹿なことは、するべきでない。経済がこんなに長くマイナス成長を続けるはずがないし、減に特殊出生率だけを見ても、最近はこの前提を上回っていて、2006年が1.32、2007年が1.34と、わずかながらも増加しつつある。

 ◆收ぢ經嵒垳平論には見落としあり】 よく、若い世代ほど年金の負担が重くなって不公平だという主張をする者がいるが、後の世代になればなるほど、教育費や住宅取得費の支援、相続、社会資本整備の恩恵を受けているはずで、不公平というならそれらを金銭に換算してから論ずるべきである。

 【公的年金は債務超過だと主張する】 公的年金には530兆円の債務超過がある主張する向きがある。しかし、これは明らかに賦課方式と積立方式を混同した議論である。年金給付は、賦課方式では、その年に納付された保険料収入で賄われる。これに対して積立方式では、あらかじめ積み立てた保険料とその積立金運用収入で賄われる。日本の場合は、190兆円の積立金を持っているから一見すると積立方式のように見えるが、あくまでも賦課方式が基本である。現に、毎年の年金財政では、その積立金が取り崩されることもなく、運用収入の一部が年金給付に回されているにすぎない。だから、まったく正常に運営されているのである。
 仮に、一部の論者のように現在の賦課方式をこれから積立方式に変えようとすると、計算上450兆円が必要である(高山・一橋教授試算)。それもそのはずで、現役世代は自分たちの老後のために保険料の積立てをしなければならないし、過去に保険料を拠出した分に対応する給付債務(年金給付の累積額)の積み立て不足があるので、こういう額となる。これを「二重の負担」という。


 ぁ收冦方式移行論は二重負担が問題】 賦課方式は少子高齢化には弱いので、積立方式に移行してはどうかという議論があるが、やはり二重の負担が問題となる。もしこれから積立方式に移行すると、過去に保険料を拠出した分に対応する給付債務とバランスするような巨額の積立金が必要になり、その必要額と既存の積立金(厚生年金+国民年金)150兆円との差額は、550兆円にものぼる(2009年財政検証時)。これほどの「二重の負担」を敢えて行って移行したとしても、日本版401Kの確定拠出年金のように、経済変動にはからきし弱い年金となり、別の意味での大きな不都合が生まれるのである。

 ァ斂で爾料加で年金は破綻するの嘘】 保険料の未納の増加で、年金制度は早晩破綻する可能性が大きい(2008年1月7日・日本経済新聞)と主張する向きもある。確かに、国民年金の納付率は1994年頃まで85%程度であったが、経済の低迷や雇用環境の悪化で、2002年以降は60%台になってしまった。ところが、シミュレーションをしてみると、現状の65%程度の未納が続いても、将来の所得代替率や年金財政には影響がないということが判明した。その理由は、次のとおりである。
 まず、公的年金といっても、国民年金だけでなく、厚生年金や共済年金もある。1階部分の基礎年金はこれらが統合されているが、このうち国民年金のみに未納があり、それは公的年金全体でみれば、わずか5%にすぎない。それに、国民年金だけで10兆円の積立金があるが、未納になったらここから立替え払いをすればよいだけである。そして将来、その者には保険料が給付されないから、そのときの納付者の保険料は積立金に上乗せされて回復するということになる。ちなみに、未納の定義は、24ヶ月間以上未納というものである。


 Α擺霑断金の税方式化には問題多し】 年金未納問題を解決する策として、基礎年金を消費税などで負担するいわゆる税方式にすればよいとの主張がされている。しかし、移行期間を考えると、税方式でも未納期間は減額されるので、低年金者が出てしまい、それを解決するには長期間かかる。もし、過去の未納を問わないとすると、せっかく自らのお金で保険金を収めた者は不公平と感じるだろう。それでも支給しようとすると追加財源は14兆円、消費税率換算で5%分にもなる。しかも、これで得をするのは今まで事業主負担をしていた企業で、得をするのは消費税を負担する勤労者や年金受給者世帯である。

 ・・・・・なるほど、年金制度というものが、これで良くわかった気がする。

(2009年10月27日記)
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