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京の紅葉(4)高台寺のライトアップ

まだ明るいうちに撮った高台寺の入口


 永観堂で思わず時間を使ったので、そこを出る頃には、もう午後4時半を回っていた。そこで出口にもうひとつ、観光客の列が出来ていることに気付いた。午後5時半から行われるライトアップのために並んでいるらしい。我々は今、拝観したばかりであるから、別のところ見ようということで、前回9月に来たときに見逃した高台寺に行くことにした。こちらも、ライトアップで有名である。タクシーで向かったのだが、運転手が生粋の京都弁で、こんなことを言うのである。「お客さん、知ってまっか? お寺って、税金タダなんでっせ。だから、紅葉だライトアップだ何だとと言いよって、観光客からぎょうさんお金を巻き上げて、それで祇園で遊ぶんですわ。ほれで、街の噂になったら、今度は大阪のキタへ行って遊んどんのですわ。ひどいもんでっせ。だから、税金をがっぽりとらな、あきまへんなぁ」・・・私たちは、ただただ、苦笑するのみだった。

高台寺の庫裏


 ところで、目指す高台寺は、臨済宗建仁寺派の禅寺で、秀吉とねねの寺として知られている。そのHPによれば「正しくは高台寿聖禅寺といい、豊臣秀吉没後、その菩提を弔うために秀吉夫人の北政所(ねね、出家して高台院湖月尼と号す)が慶長11年(1606)開創した寺である。寛永元年(1624)7月、建仁寺の三江和尚を開山としてむかえ、高台寺と号した。造営に際して、徳川家康は当時の政治的配慮から多大の財政的援助を行なったので、寺観は壮麗をきわめたという。しかし寛政元年(1789)以後、たびたびの火災にあって多くの堂宇を失い、現在残っているのは旧持仏堂の開山堂と霊屋、傘亭、時雨亭、表門、観月台等で国の重要文化財に指定されている」とのことである。要するに、亡くなった秀吉を弔うため、ねね夫人が家康に頼んで金を惜しまない援助を受けたものだから、豪華絢爛たるお寺となったが、その後たびたびの火災にもかかわらず、これだけの建物が現存しているというわけだ。そういうわけで、桃山期の絢爛さと、武士が好んだ禅宗様式が混然と一体になっている。

夕焼けに映える八坂の五重塔と、瑞兆の印


 高台寺には、夕暮れ時に着いた。夕焼けに映えてちょうど八坂の五重塔が見え、その右手にはやはり夕日の残照に照らされて雲が見えると思ったら、夕焼け空に不思議なものを発見した。ピンク色に染まった縦の棒のようなものが、宙に浮いているではないか。それは動いていないから、雲のかけらだろうと思われるが、ただ事ではない。自分で勝手に、これは瑞兆だと信じておこう。その方が幸せである。

高台寺の勅使門とその脇を照らす発光ダイオード


 さて、観光客の列の中に混じってしばし並んで、いよいよ高台寺のライトアップを拝見することとなった。いやまあ、一言でいえば、闇夜にぽっかりと浮かぶ灯りを見ているようで、とても幻想的な風景である。紅葉の庭園は、もちろん赤く染まっているが、暗いところはあくまでも暗いままである。そういう中にあってまず方丈に入れていただき、前庭から勅使門を見た。暗い中を発光ダイオードの青やら緑やらの光が走っている。あたかも前衛劇場のようであるが、それで何か始まるのかと期待していたら、本当にたったそれだけだったので、私も含めて皆さん、いささか拍子抜けした。これでは高台寺の名が泣く。こんなことなら、ちゃんとしたアーティストに依頼すべきだろう。

ライトに照らされる紅葉


 それから、お庭に出て、偃月池と臥龍池の周りを廻ると、水面に紅葉が反射して、とても美しい眺めとなっている。その池には、臥龍廊という、まるで龍が伏せたときの胴体を模したような長い廊下が架けられていて、それがそのまま秀吉とねね様をお祭りしている霊屋(みたまや)につながっている。その臥龍廊もまた、池の水面に反射して、幻想的な景観を造り出している。それからさらに坂を上がっていくと、そこは竹林で、これもまた、緑色がとてもよくライトに映えて、奥行きのある深遠な空間を現出していた。それから、出口へと向かったのである。

臥龍池周囲の紅葉と臥龍廊を写す水面


 なお、たいそう残念なことに、境内では三脚の使用が禁じられているから、夜景の写真をブレないで撮るのが難しかった。カメラを動かないよう一生懸命に構え、しかも2秒タイマーで撮ったのであるが、それでも使える写真は、撮った写真のほんの2〜3割程度であった。その2秒タイマーでシャッターが切れるまでの間、暗い中で大勢の観光客に体が押されて、動いてしまったことも少なからずあった。まあ、これは仕方がないところである

臥龍池周囲の紅葉と臥龍廊を写す水面


 ついでにいえば、こうして高台寺のライトアップを見終わって、たぶん午後7時前だと思うが、境内の外に出たところ、そこに長蛇の列が出来ていたのには、びっくりした。ざっと見渡して、少なくとも2〜3000人はいようかと思われるほどである。この方々たちはすべて、この高台寺のライトアップを見に来ているのだという。ははぁ、すごいものだと驚いたのである。ちなみに、そこから「ねねの道」を通り、祇園神社の境内に出てから、四条通り沿いの蕎麦屋で、京都名物のニシン蕎麦をいただき、宿の新都ホテルへと戻った。

ライトに照らされて幻想的な竹林



(2009年12月3日記)



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