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京の紅葉(9)二条城の秋景色

二条城の東南隅櫓


 朝早く起きて、二条城へ行った。私は、学生のときに行ったきりだったので、それからもう40年余も経ってしまったことから、そのうち機会があれば見学してみたいと思っていたからである。二条城は、そのHPによると、「慶長8年(1603年)、徳川将軍家康が、京都御所の守護と将軍上洛のときの宿泊所として造営し、3代将軍家光により、伏見城の遺構を移すなどして、寛永3年(1626年)に完成したものです。豊臣秀吉の残した文禄年間の遺構と家康が建てた慶長年間の建築と家光がつくらせた絵画・彫刻などが総合されて、いわゆる桃山時代様式の全貌を垣間見ることができます。徳川家の栄枯盛衰のみならず、日本の歴史の移り変わりを見守ってきたお城です」とある。また、いただいたパンフレットには、「慶応3年(1868年)の大政奉還によって二条城は朝廷のものとなり、明治17年(1884年)に離宮になり、昭和14年(1939年)に京都市に下賜されたとのこと。平成6年(1994年)には世界文化遺産に登録され、平成15年(2003年)には築城400年を迎えた」とのこと。ははぁ、いまは京都市の持ち物なんだ・・・。

二条城の正門


 この稿の冒頭の写真は、京都市営地下鉄 東西線 二条駅を降りてすぐの信号を渡ったところから撮った、二条城の東南隅櫓である。色彩を少しヴィヴィッドにしてあるから、いささかあざとい印象を与えないでもないが、まあ秋真っ盛りだから、こんなものである。東大手門の前まで行ったが、案の定、修学旅行の子供たちが多い。しかし、その子たちがいくら多くても目立たないほど、門が大きい。堂々とした構えである。姫路城と同じく戦争には1度も使われたことはないというが、軍事施設だから頑丈に出来ているのは当然だ・・・。

 まずは唐門をくぐって二の丸御殿に入る。いやあ、大きい、大きい。だからというわけでもないが、清々としている。庭園内を含めて、紅葉などはついぞ見かけず、もっぱら松の木ばかりである。やはり、貴族や僧侶ではなく、ここは武士の館であることが一見してわかるというものだ。さて、その二の丸御殿であるが、全体として、四角い部屋を左上にどんどん継ぎ足していったような形状をしている、なかなか面白い建て方である。建築の図面を見ると、神社の神に奉納する幣帛として使われる白い紙を思い出してしまった。

=二条城の二の丸御殿の唐門


二の丸御殿の入り口


 入り口は「遠侍(とおざむらい)」の棟で、その車寄の正面が柳の間と若松の間である。ここは来訪者の受付けらしい。そこで受付けを済ませた大名は、虎の間つまり虎の絵が描かれた三つの部屋に通され、そこで控えていたようだ。次は「式台(しきだい)」の棟で、参上した大名はここで老中に挨拶をし、献上品を取り次いでもらった。それから「大広間」の棟に上がって、ここで諸大名は将軍と対面することになる。時代劇でよく見かけるシーンで、烏帽子直垂姿の大勢の大名たちが、将軍に向かって一斉に座りながら平服している場面があるが、あの舞台がまさにここらしい。しかも面白いことに、外様と譜代大名とで控えと対面する部屋を使い分けられていたようだ。外様の場合は、大広間の一の間限りであるが、親藩と譜代の場合は、次の黒書院の棟において内輪の話をすることができた。その黒書院の隣は白書院の棟で、ここは将軍の日常の居間と寝室である。

  大広間の一の間は、幕末に第15代将軍徳川慶喜が、ここに諸大名を集めて大政奉還を発表したところである。金地に豪放で立派な松が描かれていると思ったら、狩野派の手によるものだからそれは当然なのであるが、本物の障壁画は別に収納されていて、これは模写作品らしい。天井には、四方が丸く折り上がった「折上格天井」で、一の間は将軍が座るところであるからさらにもう一段折り上がった「二重折上格天井」となっている。また、二の丸御殿の床板は、これを踏むと音が成るように出来ていて、「うぐいす張りの天井」といわれている。これは、敵が侵入したときに、それがわかるように造られているからである。

 残念なことに、二の丸御殿の中は撮影禁止であったので写真はないが、京都の街中にあることから、来ようと思えば、いつでも可能である。それはともかく、二の丸庭園は、書院造庭園で、池の中央には蓬莱島を、その左右には鶴亀の島を配してある。あの小堀遠州の作という。煩雑な装飾はあまりなくて、きれいさっぱりしている感じである。さすが武士というところである。

二の丸庭園


本丸への門と内堀に架かった橋


 二の丸庭園を離れて、もっと中に進み、内堀に架かった橋を渡って本丸の遺構に入った。右手には本丸御殿があり、公開はされていない。左手には本丸庭園があり、そこを突っ切る形で歩いていくと、天守閣跡に着く。実は天守閣はもう残っていなくて、ただ高台の基礎が残っているだけであるが、そこを上がって周囲を見渡してみたら、いやもう素晴らしい景色である。なかでも、内堀の水面に映える紅葉の赤と銀杏の黄が美しい。しばらく、それに見とれてしまった。来てよかったと思った瞬間である。

天守閣跡からみた二条城の秋の景色


天守閣跡からみた二条城の秋の景色






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(2009年12月5日記)


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