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愛宕神社の桜と鯉

愛宕神社の出世の石段


 東京都港区の神谷町駅近くにある愛宕神社は、私のオフィスからほど近いところにあるから、よく出かける。桜の花見といっても、他の名所と違って染井吉野しかないので単純そのものではあるのだが、そもそもここは、これほど浮世離れをした場所が東京の都心の真ん中にあるとは想像もつかないという意味で、私の好みにとっても合うところなのである。だいたい、近づくと見上げるような出世の石段がドーンと目の前にある。登るたびにこれは大変だと思いつつ一歩一歩階段を踏みしめていく。そして、よせばいいのに、真ん中辺りで、おそるおそる下を振り返る。あらら、下手をすると落ちそうだと思いつつ、振り返ったことをちょっぴり後悔し、またそのまま登り続け、てっぺんに至ってやっと、ほっとするということを、行くたびに繰り返している。

出世の石段を登り切ったところで振り返る


 実は、登るのが嫌なら向かって右手の傾斜がゆるい女坂を行けばいいし、実はこれは秘密・・・ではないか・・・向かって左手のところには、高層ビルの建設で最近出来たエレベーターで上がってもよいという誠に便利なご時世なのである。しかし私は、いまだにこの出世の石段・・・寛永11年に四国丸亀藩の家臣の曲垣平九郎が馬で往復したと伝えられている目のくらむような階段・・・を登るという、サラリーマンの鏡みたいなことをしている。

愛宕神社の池


 さて、この桜の季節、標高26メートルの石段を登りきったところの右手にある池に目をやると、ああ、いたいた・・・と、自分の顔が自然にほころんでくるのがわかる。また今年も、池一面に散る桜の花びらの下でたくさんの錦鯉が群れていて、必死に餌をねだっているのである。ここには、お濠のように、鳥という手ごわい競争相手はいないから、錦鯉どうしの競争ということになるが、それでもまあ、その激しいことといったらない。まず、大きな口を開けて・・・その時に、チュボ・チュボ・チュボという音がする・・・群れて集まり、それが他の鯉を次々に乗り越えてどんどん迫ってくるほどである。それを見ていると、何だか、サラリーマンどうしの競争にも思えてきて、いささか浅ましくなるが、なるほどこれが生存競争というものかとも思う。

愛宕神社の錦鯉


 池の周囲に目をやると、石の上に生えた苔の緑が美しいし、その上に散る桜の花びらのほのかなピンク色が、よく映えている。ううーむ、これぞ私がイメージする日本の美である。こんなものを真昼間に都心のど真ん中で見られるなんて、何て運が良いのだろうと思う。そうやってひととおり池の周りを巡り、そしてお参りしようとしたが、最近はどういうわけか参拝客が一列に並ぶものだから、少しも列が進まない。お賽銭箱のはるか手前で一礼するだけで済ませ、神域の隣に行った。

愛宕神社の錦鯉


 そこは、NHKの放送会館がある広場で、その周囲の染井吉野の桜の木が満開を迎えていた。その下で、今年もサラリーマンの皆さんがビニールシートを敷き、皆で寄り添って仲良くお弁当を食べている。見るところ、同じ職場の人たちというより、同世代のグループが多いようだ。こういうところにも、時代の流れが見受けられる。

NHK放送会館がある広場の染井吉野の下でお花見


 愛宕神社については、この悠々人生でも、ブログ、ビデオ(桜と鯉)、(出世の石段祭)などでこれまで何回も取り上げてきたが、やはり今回も、単に訪れるだけでは気が済まなくて、何枚か写真を撮ってしまった。ともかく、私の好きな神社なのである。

NHK放送会館がある広場の染井吉野と愛宕タワー



(2010年4月15日記)



 愛宕神社の桜と鯉( 写 真 )は、こちらから。


 桜の季節 2010年(エッセイ)は、こちらから。


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