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東日本大震災 [Day42]

アメリカのエネルギー省公表の放射性物質の拡散状況


 これは、福島第一原子力発電所付近の大気中の放射性物質につき、4月18日の時点での詳細な拡散状況が示されたものである。図中でくねくねしている線は、飛行機で観測した際の飛行経路を示す。つまりこれは、実測値なのである。地上の測定ポイントは、何千もあるそうだ。私は知らなかったが、この図は、すでに3月22日以来、アメリカのエネルギー省から、調査結果として公表されていた。それによると、3月12日に福島第一原子力発電所で原子力事故が発生した直後の3月15日に、日本に33名の国家原子力安全管理委員会のチームを派遣して展開させ、それと国防省の航空機の調査結果をつきあわせて作成したそうだ。うーむ、本来は日本政府、特に原子力安全委員会が、こういうものを作ってただちに公表すべき立場にあるのだろうが、だいたいこんなにタイミング良く、これほど詳細な調査ができたものか、はなはだ疑問である。これを見ると、30キロメートル圏外でも、飯舘村など新たに計画的避難地域とされた区域も、ちゃんと高濃度汚染区域となっているから、従来のように単純に円を描くように区域を設定するのではなく、本来はこうした実測された汚染地図を元に規制区域が検討されるべきものだったのだろう。

海域における放射能濃度のシミュレーション(4月20日)


海域における放射能濃度のシミュレーション(5月1日)


 次に文部科学省は、4日前の4月16日に、「海域における放射能濃度のシミュレーション(第二報)」というものを発表していた。これは、独立行政法人海洋研究開発機構が開発したJCOPE2(日本近海の水温や塩分変動とともに、海況に大きく影響する黒潮や親潮などの海流系について、蛇行のような流路変動や中規模渦の挙動等を予測するモデル。再現メッシュは8km四方)と、JCOPET(前記モデルを高解像度化し潮汐及びより精度の高い海上風の影響を取り入れ、高精度な再現が可能なモデル。再現メッシュは3km四方)とを使って行ったシミュレーションの結果である。

 それによると、福島沖を含む南東北沖の海流場は、日本海流(黒潮)と対馬海流分岐流(津軽暖流)、千島海流(親潮)が邂逅し、複雑でゆっくりとした流れとなっている。この複雑な流れとともに、福島第一原子力発電所付近に滞留している放射性物質を含む水は、沖に向かって拡散する。特に、4月中旬における福島第一原子力発電所の沖合では、放射性物質を含む水は徐々に拡散するものの、極めてゆっくりと、やや南寄りで沖へ移動すると予測される。具体的には、同発電所30km沖合海域付近における放射性物質を含む水は、4月14日〜20日の間、薄まりながら分布域をやや南寄りで沖へ広げていくとの計算結果になっている。

 半減期(ヨウ素131は約8日、セシウム137は約30年)は考慮されているから、5月30日になると放射性ヨウ素131はもうなくなり、放射性セシウム137だけが岩手県沖から茨城県沖にかけての太平洋沖を漂うという構図である。しかも、その辺りは初鰹の漁場らしい。すでに4月上中旬の3回、茨城県沖で獲れたコウナゴという小魚から基準値以上の放射性物質が検出されて漁はできなくなった。これに続いて7日、千葉県で水揚げされた勝浦市沖のカツオから、1キログラム当たり33ベクレルの放射性セシウムが検出された。これは、暫定基準値を大きく下回るとはいえ、消費者としては、いよいよ大型魚まで汚染が広がったのかと暗澹たる気持ちとなる。 ただ、セシウムは生物の体の中ではカルシウムと同様な働きをするので、大型の魚では骨に集まると思われるから、魚の肉を食べている限りはさほど気にする必要はないように思える。いずれにせよ、そういったことをちゃんとした専門家がデータをもって説明してくれれば、素人としては納得するのであるが、東京電力にしても原子力保安委員会のようなしかるべき政府の機関にしても、そうした努力をしているとはまったく思えないから、問題だと思うのである。


海域における放射能濃度のシミュレーション(5月15日)


海域における放射能濃度のシミュレーション(5月30日)


 それにしても、このような調査結果やシミュレーション結果は、あまり新聞で取り上げられなかったが、私はこういう情報こそが大切だと思う。それを見て、各人が現在の状況を自ら判断できるからである。こうした結果が出次第、常時どんどん公表して、国民や消費者の選択にゆだねられるべきだと思うのである。そうでないと、国民の間に、政府や関係機関は都合の悪い情報を隠しているのではないかとあらぬ疑念を持たれ、行政不信が増す結果となるからである。もっとも、そうはいっても東京電力のように、出た結果を碌に検討しないで慌てて発表し、専門家からそれはおかしいと言われると、再検討した結果、あれは間違いだった、いやいやそれも誤りだったなどと二度も三度も訂正するという体たらくでは、これまた困ってしまうのである。

 4月21日、東京電力は、福島第一原子力発電所第二号機の取水口付近から今月1〜6日の間に海へと流出した高濃度の汚染水中(520トン)の放射性物質の総量は、4,700兆ベクレルと発表した。これに対して4〜10日にかけて意図的に流出させた低濃度の汚染水(1万トン)中の総量は、1,500億ベクレルなので、その3万倍もの汚染水が流れ出ていたことになる。

 枝野幸男官房長官は、22日午前0時から、福島第一原子力発電所から半径20キロメートルの地域を災害対策基本法に基づく警戒区域に設定し、原則として立入りを禁止すると発表した。違反には、罰金又は拘留という処罰が科せられる。また、これと同時に、住民の一時帰宅を認めることとした。それは、一世帯あたり代表者ひとりを20人を一班としてバスで送迎し、在宅時間は最大2時間程度で、1〜2ヶ月で終えるという。ただ、半径3キロメートル以内では、リスクがあるとして、一時帰宅は行わない。また、妊婦と中学生以下の子供は、参加を認めないという。



(2011年 4月21日記)


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