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東日本大震災 [Day48]

緊急時迅速放射能影響予測ネットワーク


 4月25日、前々から求められていた「緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム(SPEEDI)による計算結果」が毎日公表されるようになった。そもそも原子力事故に際して放射能汚染がどこにどの程度広がるかということを示すシステムで、年間7億円以上もの予算を費やして運用されているシステムである。まさに今回の福島第一原子力発電所の事故のようなときに、役立つはずだった。ところが、地震によって肝心のモニタリングポストが壊れてしまって、全くデータが入らなくなった。そこである程度の推測されるデータに基づいてシミュレーションをせざるを得なかったのはやむを得ないところであったが、それにしても、その試算が出来ているのにもかかわらず、誤解を招くなどのつまらない理由でなかなか公表されなかったのは、どうにも理解に苦しむところである。それやこれやで、初めて累積被曝量が公表されたのが3月23日である。その後も一向に公表されなかったが、やっと4月11日になって第二回目が発表された。その後4月25日以降は、第三回目の累積被曝量とともに、その元となったデータと思われる事故が発生した3月11日(金)午後4時以降毎正時のものが公表されるようになった。事故から1月半経って、ようやく大きく前進したものといえよう。

 ところで、上にある図が、3月12日から4月24日までの福島第一原子力発電所から放出された放射性物質による累積外部被曝量を示すものである。これによると、確かに計画的避難区域となった自治体、たとえば原子力発電所から北西方向にある飯舘村などは、高濃度の汚染のラインが伸びているし、南方向にある広野町などもやや汚染されていることがわかる。しかしその反面、真西方向にある田村市や川内村などは、ほとんど問題のないレベルで汚染は見られない。これらはすべて、この間の風向きによるものであり、こうしてたまたま原発の風下に当たった自治体や地域の皆さんにおかれては、本当に不運としか言いようのないところである。

 その風向きであるが、次のリンクで示すように、1時間おきのデータから主要なものを抜き取って、それをパラパラ漫画のように見てみると、この福島第一原子力発電所周辺の風は、発電所を中心にXの字を描くようである。つまりそのほとんどが北西方向とその反対方向に流れ、たまに南西方向とその反対方向に吹いていることがわかる。反対方向は太平洋の方であるから、これはあまり迷惑をかけないとして、やはり陸地に向かった風が問題である。これなどを見ていると、原子力発電所を中心にコンパスで描くように避難地域を設定するというのも考えものである。つまり、最初はそれでよいとして、しばらくしてデータが集まってきたら、それに基づいてこの種のシミュレーションを行い、その結果によって高汚染地域が判明したならば、距離にかかわらずこれを早く指定すべきであろう。それが科学的対策というものである。


 緊急時迅速放射能影響予測は、こちら

 話は変わるが、これまでこの福島第一原子力発電所の事故をめぐっては、発表する主体が東京電力だったり、原子力安全保安院だったり、はたまた文部科学省や原子力安全委員会だったりと、たくさんあって、しかもそれぞれ言うことが微妙に違っていたりして混乱を招く原因であったとの報道がされるようになった。そこで細野豪志首相補佐官が音頭をとって、情報発信の正確性、透明性を確保するため、これからは共同記者会見を開催することとなったという。この共同記者会見では、「福島第一・第二原発の状況、福島第一から漏出する放射線の状況、政府と東電の対処の状況」に限定して説明する。他方、福島原発周辺住民の避難や、放射性物質拡散による農作物、水産物の影響や対策については、これまで通り官邸と担当省庁から情報発信するし、基本的な方針については、今後も枝野幸男官房長官が国民に情報提供するとのことである。

 そして25日にその第一回共同記者会見が開かれたが、始めてから終わるまでに、4時間もかかったという。その意気込みはよいとして、これではそれぞれの部局の本業が疎かにならないか、あるいは詰めと調整に手間取ってかえって中身の薄いものにならないか、老婆心ながら、いささか心配になるところである。

 この点、9.11テロのときのジュリアーノNY市長のコメントは、誠に適切である。「危機管理の要諦は、指揮と制御である。制御は究極の目標だが、そもそもそれはできないことである。だから、誰かが責任を負い、明確な方向性を示す必要がある。指揮をする上で大事なのは、ワン・ボイスだ。それが出来なくとも、ワン・セントラル・ボイスにすべきである。私の記者会見には州知事や関係部署の職員を同席させ、専門的な事柄も含めて全てその場で取材できるようにした・・・。」
 
 ふうむ、日本ではなかなかこうはいかない。そもそも日本の組織の風土は、普段から誰がどんな立場でどうやって仕事をしているのかよくわからないままに全体として組織が動いて行って、気が付いたら仕事が終わっているというパターンが多い。今回の原子力事故に際して東京電力や政府の関係機関がバラバラに動いて対応してきたが、これこそ典型的な日本の組織の見本のようなものである。だから、危機に直面しても、そこへ素晴らしいリーダーシップをとる人間が彗星のごとくいきなり現れてバタバタと物事を片付けて危機を脱する・・・などというハリウッド映画みたいなことを期待するのが、そもそも間違っているのかもしれない。




(2011年 4月27日記)


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