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長瀞ライン下り

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 ようやく11月になり、家内と「近場に紅葉を観に行くには、少しばかり早すぎるね。」という話をしていたところ、「久しぶりに長瀞に行ってみよう」ということになった。実は9年前の9月半ばに家内と一緒に長瀞へ行って、七草寺めぐり、SL撮影、ライン下りと、色々と盛りだくさんに楽しんだからだ。「もう季節が季節だけに、七草寺めぐりは無理だが、SL撮影とライン下り、それに時間があれば宝登山ロープウェイに乗ってみよう。紅葉が綺麗だと良いけれど。」という気持ちで、出掛けることにした。

 アプリで調べると、文京区の我が家から池袋にて東武東上線に乗り換え、小川町経由で寄居にて秩父鉄道に乗って長瀞で降りると、2時間25分で行ける。ところが、別ルートとしてJRで熊谷まで行って秩父鉄道に乗り換えて長瀞まで行くと、2時間40分もかかる。この場合は秩父鉄道に53分も乗っていないといけない。ちなみに前の寄居経由ではそれが23分だから、この秩父鉄道の乗車時間の違いだ。往復で30分の人生の無駄なので、前の寄居経由のルートにした。

 逆方向だから土曜日ながら通勤ラッシュにも全く無縁で、寄居駅に着いた。東武東上線から秩父鉄道に乗り換えようとしてびっくり・・・改札がない。スイカ(Suica)カードをどうすれば良いのだろうかと思っていたところ、階段の脇に「ピッ」とタッチする機器があり、どうもこれでカードに記録しておけるようだ。


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 それを2回繰り返して秩父鉄道の電車に乗ったのだが、プラットホームのレトロな雰囲気と、乗った電車の吊り革などを見て、恐れ入った。まるで昭和40年代のようなのである。特に長瀞駅舎では、小さなサイズの四角い格子の枠にはめられたガラスをよく見ると、向こうの人や建物が歪んでいる。これは、現代的な工業生産法による以前のガラス製法のもののようだが、割れてしまったらどうするのだろうと、思わず心配するほどだ。駅舎の傍にある郵便ポストも、未だに円筒状の丸型ポストだし、しかも塗装が相当に剥げている。レトロにしても、やり過ぎのような気もしないではない。

 秩父鉄道のSL、パレオエクスプレスに乗ろうとしたら、故障で既に1ヶ月ほど運休なのだそうだ。秩父鉄道といえば、「首都圏で最も近くでSLに乗れる鉄道です」というのが売り物なのに、故障とあれば、残念だが仕方がない。それにしても、SLにはお金をかけているのに、駅舎や普通車両に投資をした形跡はほとんど見当たらない。ついでに言うと、長瀞ライン下りも、秩父鉄道の経営だったから驚いた。

 さて、その長瀞ライン下りだが、もう100年の歴史があるそうだ。待合室に掲げてあった写真を見ると、屋根付きのいわゆる屋形船で、芸者衆と舟旅を楽しんでいる姿が写っていた。長瀞駅前の観光案内所前に置かれたテレビでは、NHKの番組「ブラタモリ」で、ここ長瀞が取り上げられた様子が放映されている。それによると、長瀞を訪れる観光客の数は、年間270万人だという。なるほど、これだけの数のお客さんが来てくれるからこそ、秩父鉄道が潤っているのだろう。だから集客の目玉であるライン下りが重要となるはずである。


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 駅前で、ライン下りの切符売り場に行くと、上流の上長瀞駅近くの親鼻橋から、長瀞駅近くの岩畳まで下るAコース(約3キロ)と、その岩畳から下流の高砂橋まで下るBコース(約3キロ)という2つのコースに分けて運航しているようだ。私が聞いたときにはAコースが混んでいてBコースはそうでもないと聞いて、まずBに乗ることにした。長瀞駅の踏切を渡って両側の食堂やらお土産屋さんを抜けて行くと荒川の川原にある岩畳乗船場所に出て、そこから舟に乗った。快晴の日で、空が真っ青である。

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 舟はざっと見たところ20人乗りで、私と家内は最後に乗船したから、思わず、舳先(へさき)に座ることになった。私の前には船頭さんがいるだけだから、視界が開けていて写真が取りやすい。ここ数日は晴れているから、水の量が高さで5cmほど少ないそうだ。そのため、時折、ガリッと音がして舟底を擦っていた。

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 川幅が広いところを過ぎたら、すぐに川幅が狭い急流に差し掛かった。「大河瀬(おおかわせ)」という。水がかかるから、舟に備え付けのビニールを被った。ジャボジャボ、ザザザーという水音が大きくなって、舟が左右に揺れる。それを、舟の前後に乗り組んでいる2人の船頭さんが、長い竿1本を操って必死に操船する。おっと、やっと乗り切った。これは、ちょっとしたスリリングな経験である。あとは左右の景色をゆったりと楽しんだ。

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 特に、石畳から続く岩は、面白い外観をしていて、ミルフィーユのような層状でしかも傾いている。こういう岩をじっくりと見た。これらは、海底に堆積した地層がプレートの移動に連れて大陸の下に潜り、しかもそれが斜めに引き伸ばされて何層にもなり、地下深くからこの地表面に出てきたものだそうだ。

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 更に先へと行くと、カエルのような形をした岩があったりして、景色に変化がある。しかも、川の水の色が紺碧、真っ青、石の回りの逆巻く白と変化するのを眺められる。加えて、川面には、野鴨が遊び、水中には鯉がいた。誠に、長閑な風景である。

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 やがて、Bコースの終点である高砂橋に着いた。その少し前、船頭さんから「お客さんから『この舟は、今は下って来たけど、もう一度戻るときには、どうするのだろう?』という質問をよく受けますが、その答えは、あそこにあります。」と話していた。その指さす方向を見ると、舟をクレーンで吊り上げてトラックの上に重ねて載せ、また出発点まで運んでいる。我々は前回来たので分かっていたが、これは、良い考えだ。そしてお客の我々はというと、マイクロバスで、また石畳近くの長瀞駅裏手の乗船券発売所まで送ってくれるのである。

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 その乗船券発売所まで帰ってきて、面白かったので、もう一つのAコースにも乗ろうということになり、バスで上流の親鼻橋に向かった。舟に乗るのが最初になったので、先程とは逆に、今度は艫(とも)に座ることとなった。向かい側は乗客の頭で撮りにくいが、背中側には振り返りさえすれば障害物なく撮れる。

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 舟は親鼻橋乗船所を出発した。出てすぐのこと、左手の川中に、岩がいくつかあり、水に洗われている。そのうちの一つだけが、他と違うと思った。そこで良く見たら、何だ、煉瓦の塊の人工物だった。妙なものが川中のあると思いつつ、川の流れに身を任せていたところ、やがて前方に、川を横切る鉄道橋が見えた。たまたまタイミング良く、秩父鉄道の電車が通っている。ただ、人の頭に遮られて、カメラをちゃんと構えることができなかったことは残念だ。その荒川橋梁は、100年前に完成して、まだ現役だそうだ。しかも、橋脚が煉瓦で出来ている。それが、先程、川中で見たものと同じなので、びっくりしてしまった。「では、あの煉瓦塊は、どこから来たのだろう。この上流にあった昔の構造物が洪水か何かで壊れて流されたからか?」などと考えたら、まるでミステリーだ。

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 左手に、亀の子岩なるものが見えた。先程のカエル岩のようなものだが、それよりは、もっと厚みがある。「小滝の瀬(こたきのせ)」に差し掛かった。Aコースの大河瀬のような急流スポットだ。途中で1mほどの段差があるところを通るらしい。急に川幅が狭くなり、ザアーザアーという水音が高くなったと思ったら、腰が揺れる感じがした。段差を通過したらしい。ちょうどディズニーランドで、乗り物に乗っているようなものだ。それから流れは緩やかになり、「秩父赤壁」と名付けられた高い断崖を過ぎて、舟は岩畳へと戻ってきた。

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 岩畳の近くを散歩していたら、お昼を過ぎてかなり経ったので、家内とその辺の食堂に入り、トロロ蕎麦を頼んだ。それなりに美味しく味わって、満足して出て来たら、日はやや傾き、11月らしく風が冷たくなってきた。宝登山ロープウェイには、行けないこともなかったが、家内と相談して、今日はあまり欲張らないでこの辺で帰ろうということになり、来たときと同じルートで帰京した。



(2018年11月 3日記)


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