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新型コロナウイルス緊急事態宣言 (第1部)

米国立アレルギー感染症研究所 ニュースリリース2月25日に掲載された新型コロナウイルス



1.2月から3月にかけての政府や知事の対応

 新型コロナウイルスの国内感染者数は、2020年2月15日から29日までは、1日当たり15人から25人の間で推移していた。3月に入って、7日頃から連日50人を越えるようになり、とうとう3月27日からは123人と、100人の大台を越した。4月になっててもその勢いは衰えず、4月3日には353人と、感染者が急増するようになった。

 この間の政府の対応を見ていると、危機管理の司令塔がいない感じがしてならない。東日本大震災のときは、枝野幸男官房長官(当時)が自ら、連日寝ないで記者会見をやり、普段は政府に批判的なネットの皆さんから、「枝野、寝ろ」という好意的なコールが起ったことは記憶に新しい。今回は加藤勝信厚生労働相がその任に付いているのかと思ったが、紙の棒読みにとどまり自ら積極的に国民と対話しようという雰囲気が感じられない。ただ、顔色が良くないので体調が悪かったのかもしれないが、それならそれで危機管理能力と発信力のある大臣に任せるべきだ。

 そういう意味では、小池百合子東京都知事は、ニュースキャスター出身であるだけあって、都民との対話ができているので、大したものだと思う。例えば、政府の専門家会議から聞いた大臣などが「換気ができていない密閉された空間には行かないように、そこで大勢の人と近付いて話したりしないこと」などとモタモタした説明をしているときに、「密閉、密接、密着の三密は避けるように」と、わかりやすいキャッチフレーズで話していたので、私は、これは都民と会話ができる人だと感じた。このような緊急事態になると、政治家としての説明能力が露わになる。

 国民がマスクが足りないと毎日イライラしていた。実は私も、2月の初めからマスクを求めて近くのドラッグストアやスーパーを何軒も何度も回ったが、それでも全く手に入らない。そういう時、2月中旬の頃だったか菅義偉官房長官が、「現在のマスク供給数は月間1億枚だが早急に6億枚まで引き上げるので、3月中には国民に行き渡る」と説明していた。私はこれで先に光明が見えたと思った。ところが、3月末になっても何も変わらず、市中では1枚も手に入らない。やはり官房長官のあの発言は、嘘でたらめの類いだったのかとガッカリした。その後、官房長官が表に出てくることはなくなった。新聞記事によると、「官房長官を傷つけてはいけないと、周りが押さえている」とのこと。国難ともいえる緊急事態なのに、そんなことをやっている場合かと言いたくなる。

 マスクといえば、4月に入って直ぐのこと、安倍晋三総理が国会で突然、「全世帯に布マスクを2枚ずつ再来週頃に郵便で配布する」と表明した。これも、新聞記事によれば、総理官邸の誰かが「国民がマスクがない、マスクがないと、ご不満のようなので、マスクを全世帯に配布すれば、そういう不満はパーっとなくなりますよ」と進言したという。本当だとしたら、あまりに短絡的な発想だ。この布マスクは30回ほど洗えるそうだが、専門家によると目が細かい不織布ではなくて、目の粗い布なのでウイルス防御という面では全く役に立たないそうだ。ただ、感染者がウイルスを撒き散らすのはある程度防げるそうなのだが、そのためにわざわざ5,300万世帯に単価200円のものを2枚ずつ、送料込みの合計で466億円もかけて配布するのかという気がする。それだけのお金があるなら、台湾がやっているように、不織布のマスクを配給制にして国民が確実に入手できるようにすべきだったと思う。ただこれも、マイナンバーカードの普及率がまだ15%にも満たないから、無理かもしれない。

 その後、新型インフルエンザ対策特別措置法の改正で新型コロナウイルスが法律の対象になると、同法の担当大臣が西村康稔経済財政再生相となった。ところが、全体をまだ掌握できていないのか、それとも経済担当が急に公衆衛生も担当することになって勝手が違うのか、こちらも情報発信が紙の棒読みに終わっていて、国民からすると「自分の言葉で語っていない」ので、誠に物足りない。素人の大臣ではなく、たとえば公衆衛生の専門家で、それなりの地位にある責任者が、毎日、患者数、その属性、マスクや消毒剤の流通、トイレットペーパーの生産と流通、諸外国の様子、ちょっとした公衆衛生の知識などを懇切丁寧に説明するだけで、かなり違うと思う。

 その点、台湾では、陳其邁行政院副院長(副首相)の下、中央感染症指揮センターの陳時中衛生福利部長(保健相)及びデジタル政策担当の唐鳳行政院政務委員(無任所大臣)が主導して、マスクの配給制などの誠に時宜に適した政策を展開し、また国民との対話を進めている。私はたまたま、2月8日から4日間、観光で台湾旅行に行ったが、その当時の台湾の感染者数が確か日本と同じくらいでまだほとんどいなかったのに、もうその時点で、ホテルに着けば体温をチェックされるし、レストランでは入口で消毒液を吹き付けられるしで、最大限の厳戒体制だった。蔡英文総統がかつてのSARS騒ぎのときの衛生担当部長だったという巡り合わせもあるのだろうが、ともかくやれることは何でもやるという姿勢で、信頼が持てた。その成果として、2月から4月にかけて世界各国の感染者数が飛躍的に伸びる中、台湾の感染者数は339人、うち死者5人と、非常に低く押さえ込まれている(4月4日現在。同時期の日本は感染者数3,139人、うち死者77人。アメリカはそれぞれ213,600人、4,793人と、まるで比較にならない。)。

 私が台湾旅行に行く直前の2月3日には、豪華客船ダイヤモンド・プリンセス号事件が専ら世間の耳目を集めていた。香港の感染者が一時乗船していたために、船内で新型コロナウイルスの感染が広がった事件である。公海上にあったが、急遽、横浜港に寄港して、その検疫をするということで、検疫官が乗り込んでいった。ところが、日本国内では、私も含めてどこか他人事のような感じだった。そういう中、私は台湾旅行から2月12日に日本に帰ってくると、台湾の厳戒体制と比べて日本では、テレビで手洗いが呼びかけられるくらいで、緊張感など全くなく、こんなことで良いものかと思ったものである。

 厚生労働省の方も、恐らくダイヤモンド・プリンセス号に人的資源と時間を取られて、とりわけPCR検査の能力を増やすとか、マスクや消毒薬や人工呼吸器を増産させるとか、感染症対応の病床を用意するとか等の日本全体の防御ということに目を配る余裕がなかったのではないかと考える。そのダイヤモンド・プリンセス号事件も、事件処理に当たった関係者はご苦労されたとは思うが、外から見ていると単なる検疫作業の延長という感覚でやっていて、肝心の船内の感染防止、乗客乗員の保護という観点が欠けていたのではないか、船をウイルス培養器にせずもっと早く乗客だけでも外に出せなかったのか、現場責任者は何をしていたのかなどと、徹底的に検証されるべきだと思う。この関係で検疫官などに10数人もの感染者を出したという点は、この検疫は失敗に終わったと言われても仕方がない。

 発生直後にこの船に乗り込んだ神戸大学の岩田健太郎教授が「ウイルスがいるかもしれない『レッドゾーン』と、安全な『グリーンゾーン』がグチャグチャに入り乱れていて、どこが危険なのかがわからない。なのに、船内で作業する医師や厚生労働省の職員らスタッフはマスクもしていなかったり、手袋だけ嵌めていたりでチグハグだ。心底怖かった」と表現した。これは、この結果を見れば真実を語っていたと思う。船内に、やや過剰といわれてもよいから、先々を見越して適切な手を打つという危機管理のセンスがある公衆衛生の指導者がいなかったのかと残念に思う。その点、自衛隊が確か2,000人ほど出動したと聞いている。それでいて、防疫という面では素人の自衛隊員からは1人の患者も出さなかったことは、誠に立派なことだと思う。素人だからこそ、「正しく恐れて、正しい防疫の手順を踏んだ」ものと思われる。

 その一方、2月の半ばを過ぎると、国内の感染がどんどん進んで、北海道では鈴木直道知事が札幌雪祭りを契機に全国で一番多い感染者を出したことから、警鐘を鳴らしていた。注目すべきは、地方では、和歌山の仁坂吉伸知事もそうなのだけど、最高責任者の知事自らが発表するという流れができて、危機管理がしっかり機能しているという印象を道民や県民に与えている。これこそ、地方分権を踏まえた危機管理のあり得べき姿だ。2月15日の記者会見で仁坂知事は、「メディアにお願いですが、新型コロナウイルスに感染した医師が誰でどこに住んでいるんだとか、そういうことは差別やいじめに繋がるので、社会正義に反していることはやめていただきたい」などと、誠に正論を語っていて、胸がすく思いがした。

 2月28日になって北海道の鈴木知事が、「政治決断」として小中学校の休校を打ち出し、引き続き週末の外出自粛を求める事実上の緊急事態宣言を出した。おそらく、これに刺激されたのだろうが、翌29日になると安倍首相が全国一斉休校を打ち出した。全く唐突で、それまで寝ていたものが急に起き出して、暴れ始めたようなものだ。多分このままではいけないと、突然、首相指導型を見せようとしたのだろうが、これこそ、過剰反応というものだ。これによって迷惑を被る共稼ぎ世帯も多かっただろう。政府部内で慎重に検討すれば、たとえば感染率や患者数が一定以上の都道府県に限るという手もあったはずだ。


2.特別措置法の成立

 一般に、緊急事態の内容は、その国民への危害の現実化とその恐れの程度に応じて決まることになっている。その最たるものは、武力攻撃事態における国民保護法制である(平成16年6月に成立し、同年9月から施行)。他国による日本への武力攻撃が起こると、国民の財産はもとより、国民の生命そのものが直接危険にさらされる。だから、それ相応の強い措置が法律で設けられている。避難計画と指示、買占め等防止で、これとともに別法で道路、空港、港湾を自衛隊が優先使用することになっている。その性格上、災害対策基本法が参考にされた。新型インフルエンザ対策特別措置法(平成24年法律第31号)は、これらの法律を参考としつつ、SARSの経験と急速に蔓延する伝染病の性質を踏まえて立案されたものである。

 今回の新型コロナウイルス対策には、一から法律を作っている時間的余裕がないため、既存の新型インフルエンザ対策特別措置法(平成24年法律第31号)の定義に新型コロナウイルス感染症を追加することにより、同法の枠組みをそのまま使ったものである。国会での審議は、わずか3日間で成立した。この法律に基づき、新型インフルエンザ等緊急事態宣言(2年未満の期間限定)を行うと、次の措置が可能となる。

(1)外出自粛要請、学校、興行場、催物等の制限等の要請・指示

 都道府県知事は、住民に対し外出の自粛を要請できる(第45条第1項)。多数の者が利用する施設(学校、社会福祉施設、建築物の床面積の合計が千平方メートルを超える劇場、映画館や体育館など)の使用制限・停止又は催物の開催の制限・停止を要請することができる(第45条第2項)。正当な理由がないのに要請に応じないときは、特に必要があると認めるときに限り、要請に係る措置を講ずべきことを指示できる。ただし、いずれも罰則はない。

(2)住民に対する予防接種の実施(第46条)

(3)医療提供体制の確保(第47条―第49条)

 臨時の医療施設を開設するため、土地や建物を強制使用することができる(第49条)

(4)緊急物資の運送の要請・指示(第54条)

(5)政令で定める特定物資の売渡しの要請・収用(第55条)

 都道府県知事等は、新型インフルエンザ等の対応に必要な物資の売り渡しを業者に要請することができ、不当に応じない場合は収用することも可能(第55条)。また、不当に売り渡しに応じなかった業者に対して、罰則がある(第76条)

(6)埋葬・火葬の特例(第56条)

(7)金銭債務の支払猶予等等(第58条)

(8)生活関連物資等の価格の安定(第59条)

 買い占め売り惜しみ防止法・国民生活安定緊急措置法等の的確な運用

(9)政府関係金融機関等による融資(第60条)



3.緊急事態宣言の前夜

 新型コロナウイルスの全国的な感染爆発(アウト・ブレイク)が起こり、医療機関が患者を受け入れる能力を超える事態(オーバー・シュート)となると、改正新型インフルエンザ対策特別措置法の緊急事態宣言が出されるかどうかの問題となる。4月3日現在、政府はまだその事態には至っていないと判断しているようだ。確かに、首都圏や関西圏では、感染者数が急拡大する予兆が見られるものの、未だ全国レベルに至っているとは言えない。

 新型コロナウイルスは、人と人との距離が近いときに伝染るということで、他の人から2メートルは距離を置くべしと言われる。これを「ソーシャル・ディスタンシング」と言うらしい。なるほど、言い得て妙だ。それから、中国政府が武漢でやったように、外出禁止令で街を一斉にシャット・ダウンすることを、「ロック・ダウン」と言うそうだ。専門家の試算によると、これを行って外出する人数を8割減らせば、感染者数を激減させられるそうだ。

 日本では、法律に基づく緊急事態宣言を行っても、先ほど述べたように罰則なしの要請・指示なので、外出する人数は、おそらく首都圏で6割減、関西圏で4割減程度だろう。そうすると、イタリアのように、アウト・ブレイクと医療機関のオーバー・シュートが起こるのは、もはや避けられない予感がする。ヨーロッパで最も早くアウト・ブレイクが起こったイタリアの4月4日現在の感染者数は、11万5242人、うち死者は1万3912人となっている。ちなみに日本は感染者数3139人、うち死者77人だ(ただし、ダイヤモンド・プリンセス号の712人の感染者は除外している)。


例年は花見客で盛り上がる上野公園も閉鎖


 毎年3月末から4月にかけては、私の大好きな桜の季節である。ところが、今年は桜の写真を撮りに行こうにも、東京都知事より3月28日からの週末の外出自粛が求められているので、どこにも行けない。新宿御苑、六義園などの桜が美しい公園も全て閉園している。例年は花見客で盛り上がる上野公園も閉鎖だ。私は、やむを得ない理由で自宅から上野に歩いて行ったとき、公園内の桜通りにはブロックが置かれ、人っ子一人いなかった。道の遥か先を見たら、二人の人影があったが、よく見ると警備員だった。

 本日は4月4日だが、直ぐにでも緊急事態宣言が出されていてもおかしくない状況になってきた。別荘を持っている友達は、自分の車で既に長野県に避難している。私は、かねてから公共交通機関派だったから、こういうときには車がないので不便だ。いや、たとえ車があったとしても、もし自分が感染者だったとしたらウイルスを地方に拡散するようなものだから、東京から出るべきではないだろう。仕方がないので、朝夕の散歩以外は何処にも行かずに家に籠っているつもりだ。事態がどんどん悪くなっていって、もうどうにもならなくなったら、家内とともに如何にして生き残るかを模索することになるかもしれない。父母の世代とは違って、私たちの世代には戦争というものがなくて良かったと思っていたが、代わりにこの未曾有の災難が降り掛かってきてしまった。(1から3までは、4月4日記)


4.諸外国の強権的措置

 4月7日、政府の緊急事態宣言が出された。一般の人々に対しては、外出の自粛をはじめ、学校や興行の自粛等が求められる。ところがこれは、あくまでも要請であり、従わなくとも罰則はない。この点、次のように欧米やアジア諸国で行われている「ロックダウン」つまり都市全体を封鎖し、罰則をもって人の移動を禁止する「外出制限令」に比べて、大甘で実効性が期待できないという論評がある。

(1)ニューヨークでは、3月30日から市長令で、公共の場で人との距離を保つことを徹底していない場合、最大500ドルの罰金。

(2)イタリアでは、3月12日から政令で、行き先と理由を記した証明書を携帯していない人には最大3,000ユーロ(約35万円)の罰金。施行後1週間でおよそ11万人以上が警告を受けた。

(3)フランスでは、3月17日からの外出禁止令で、テレワークできない仕事や必要不可欠な買い物など特定の目的(証明書の携帯が必要)以外の外出に135ユーロ(約16,000円)の罰金、これを15日以内に繰り返すと罰金200ユーロ、30日以内にさらに違反を重ねると禁錮6ヶ月以下が科される。発令から2週間の検挙数は359.000件に上ったという。

(4)イギリスでは、外出できるのは必需品の買い物、1日1回の運動、やむを得ない医療と通勤だけとし、3月25日に成立した法律により、公共の場で3人以上で集まった場合、最低30ポンド(約4,000円)の罰金。

(5)震源地である中国の武漢では、1月23日から都市封鎖が行われた。都市内や市境をまたぐ交通機関や高速道路を封鎖して出入りができないようにし、市民らに武漢を離れてはならないと通告した。居住区ごとに、厳格な監視が行われた。テレビ映像によると、家族内で麻雀の卓を囲んでいるときに公安(警察)が踏み込んで、卓を壊すようなことをしていた。人と人との間の密接な接触を防ぐためというが、家族内のことまで公権力が介入するのは明らかにやり過ぎだ。なお、この封鎖は、感染していない人に限って、4月6日に2ヶ月半ぶりに解除された。

(6)シンガポールでは、当初は、対外的には厳格な国境管理を行うものの、国内では厳しい移動や外出の制限措置を取らず、アプリで感染者の行動を追跡し、人と人との距離を空けさせる「社会的距離」を導入するなどして、それなりの成果を上げていた。ところが、追跡ができない事例が大幅に増えてきたことから、ついに4月7日から全面的な外出禁止令に踏み切った。違反者には、罰金10,000シンガポールドル(約25,000円)若しくは6ヶ月以内の禁錮刑又はその両方が科される。

(7)マレーシアでは、3月18日から、外出禁止令が出された。日用品の買物と通院のため車1台につき1人だけ外出が許されるが、それ以外は禁止される。違反者には、罰金100リンギット(約25,000円)若しくは6ヶ月以内の禁錮刑又はその両方が科される。当初は、違反者に口頭注意するのなど柔軟な対応を取っていたが、不要不急の外出など違反者が続出したことから、軍隊も動員して警察とともに検問やパトロールなどに当たるようになった。3月27日には、首都クアラルンプールの高級住宅街であるモントキアラ地区でジョギング中に警察官に呼び止められ、自宅に戻るよう促されたにもかかわらず無視して反抗的な態度を取った11人が逮捕された。その内訳は、日本人4、韓国人3、インド人2、英国人1、マレーシア人1とのこと。こんなことで逮捕される日本人がいるとは誠に情けないが、うち1人は日本の最大手電機メーカーの駐在員だという。これは特定の地区だけの数字だが、3月29日には全土で828人が逮捕されたとのこと(時事通信)。

(8)フィリピンでは、3月17日から、ルソン島全域で生活必需品を購入するための外出を除いて、市民が移動することを大幅に制限さている。ドゥルテ大統領は、4月4日、「市民が自宅待機などの措置を破った場合、警官らが射殺も辞さない事態が有り得る」と国民に警告した。麻薬取締りのときと同じく、めちゃくちゃだ。

(9)インドでは、3月22日から、全土に日中の(首都ニューデリでは全日の)外出禁止令が出された。ビデオ映像によると、違反者には、警察官が罰として、その場で腕立て伏せをさせたり、鞭で打ったり、頭にコロナの被り物を被せたりと、まるで前近代的な刑罰を科していて、心底驚いた。


 こうして見ると、どの国も、強権的な措置を講じている。それも、かなりのものだ。アメリカやヨーロッパの国々では、戦争や災害のようないわば緊急時への対応して行われていると考えられる。ところがアジア諸国では、元々強権的な体質の政府が多いことから、それなりの措置をとっている。それにしても、フィリピンやインドはやり過ぎだ。でも、お国柄が現われているから面白い。


5.微温的な日本の緊急事態宣言の理由

 それに比べて、日本の今度の改正新型コロナウイルス特別措置法に基づく緊急事態宣言は、一般向けには外出の自粛、学校や興行場などの管理者には要請や指示ができるものとしているが、あくまでも要請ベースにとどまり、罰則をもって強制するものではない。感染防止のための集会禁止規定もない。ただ、一定の要件を満たせば、土地所有者の同意を得ないで土地等を使用できるとしているくらいだ。もちろん、これには補償がある。その他、罰則はといえば、特定物資の隠匿や損壊への懲役又は罰金と、立入検査の拒否や妨害への罰金しかない。

 それはなぜかというと、現行憲法の基本的人権の尊重の観点からは、それが限界だからだ。罰則をもって外出禁止を命令することは憲法22条の居住移転の自由に、同じく集会禁止命令は憲法21条の表現の自由に反する。先に述べたように土地所有者の同意を得ないで土地等を使用できるとする規定があるが、これも憲法29条上、問題なしとはしないところだが、財産権であるからこの程度は公共の福祉の観点からは許されると解されている。これが本法の限界である。たとえ武力攻撃事態であっても、考え方は同じである。

 どうしてこういう構造なのかといえば、突き詰めていうと、日本国憲法に緊急事態条項がないからだ。かつての大日本帝国憲法では、戒厳大権など4つの緊急事態条項があった。しかしこれによって基本的人権が大きく制約されたのは歴史的事実である。その反省から、日本国憲法では緊急事態条項が設けられなかったとされる。だから我々は、その制約の下で最大限、何ができるかを考えなければならない。 憲法に緊急事態条項がない中で、憲法の根本である基本的人権を一時停止するようにするには、憲法13条の「公共の福祉」を理由にするしかないが、そんなことは果たして可能だろうか。

 現在の日本の緊急事態宣言の要件は、次の通りである。

「新型インフルエンザ等(国民の生命及び健康に著しく重大な被害を与えるおそれがあるものとして、重篤である症例の発生頻度が相当程度高いものに限る。)が国内で発生しその全国的かつ急速なまん延により国民生活及び国民経済に甚大な影響を及ぼし又はそのおそれがあるものとして、感染経路が特定できず、あるいは感染が拡大している事態が発生したと認めるとき」である。

 4月8日、世界の新型コロナウイルスの感染者は、1,317,130人、うち死亡は74,340人(死亡率は0.56%)である。これに対して日本の感染者は、4,472人、死亡は98人(死亡率は0.02%)となっている。死亡率が小さいが、これは感染者数が次のグラフ(出典:NHK)のように最近になって急増したことによるもので、あと2週間もすれば、残念ながらかなり増加するものと思われる。とはいえ、この今の状況で「重篤である症例の発生頻度が相当程度高い」といえるか、法律の規定の「当てはめ」としては、いささか疑問が残るところである。


NHK日本国内の感染者数


NHK日本国内の感染者数


 そういう状況では、罰則のない自粛要請が、ちょうど良い収まりではないかと思うのである。基本的人権を尊重するという意味でも、その方が望ましい。ところが、中国に次いで先進国中で最初に新型コロナウイルスの急速な蔓延で医療崩壊に陥ったイタリアでは、4月8日現在の感染者は、132,542人、死者は16,525人(死亡率は12.5%)である。医療現場は、患者が殺到して満足な治療もできず、遂にはトリアージの考えまで適用して、人工心肺機器を若い人に先に使うほどの混乱ぶりだった。

 では、現にこういう事態になったら、いや現にならなくともそういう事態になることが十分に想定される事態になったらどうか。それくらいに切迫した状況になってはじめて、外出禁止令を出して罰則をもって強制するべきではないかという議論をする土俵に上ることが出来るというものだ。その場合、国民の外出を一律に禁止することが、現下の疫病の急激な拡大とそれによる多くの国民の命を守る上で必要不可欠であることを立証した上で、現在の緊急事態宣言の要件に何を加えるかであるが、ひとつは死亡率の高さが有力な要件になると考えられる。憲法13条に規定する通り、人間の命は何よりにも増して尊重すべきであるから、憲法の基本原理である基本的人権も、緊急事態宣言が出ている僅かな期間と都道府県の区域に限って、一時制約を受けてもやむを得ないし、それこそが公共の福祉に適うものと説明するのが一案である。

 ただ、私は、繰り返しになるが今のような程度の事態では、基本的人権を一時棚上げしてまで、外出禁止を罰則をもって担保するようなことをすべきでないと思う。相手が業者ならば、現行法のように命令をして罰則を科すことはできるが、一般国民を相手に外出禁止令違反を罪に問うなら、他の法律の先例からすると、禁錮刑どころかせいぜい罰金10万円以下というのが相場だろう。そんな中途半端な罰金なら、守らない人が次々に出てくるし、それくらいであれば罰則など、ない方がよい。ただでさえ疫病騒ぎで人々が精神的に負担の多い日々を送っているのだから、そこに警官による外出の取締りがあっては、ますます世の中が暗いムードになりかねない。代わりに、特に興行や大型商業施設など企業に対する都道府県知事による中止の指示に反したような場合、その企業名は公表することにして、自ずと社会的制裁が下るようにしておけば良いのではないかと考える。(4と5は、4月6日記)


6.緊急事態宣言の発出と緊急事態措置

 4月7日、政府は、改正新型インフルエンザ対策特別措置法に基づき、東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県、大阪府、兵庫県、福岡県の7都府県を対象として、緊急事態宣言を発出した。

(1)まず不思議に思ったのは、「対象区域になぜ愛知県が入っていないのだろうか」ということだ。4月10日現在になるが、新型コロナウイルス患者数は、次のようになっている。

 東京都  1,519人
 大阪府    616人
 神奈川県   381人
 千葉県    354人
 埼玉県    285人
 兵庫県    287人
 福岡県    250人


 これに対して、愛知県は301人と、4番目の千葉県と5番目の埼玉県の中間の患者数なのに、なぜ指定されなかったのか、どうにも理解しかねる。政府の基本的対処方針等諮問委員会は、「当該都府県内の(1)累計の感染者数、(2)感染者が2倍になるまでの「倍加時間」、(3)1日あたりの感染者数に占める経路を追えない感染者数の割合」の3つを基準にしているというが(2020年4月10日付け日経新聞4面)、その具体的数字は明らかでない。

 朝日新聞によると、「各自治体にとって病床の確保が喫緊の課題となっている。軽症者も含めて感染者を全員入院させる現在の仕組みでは、破綻(はたん)は避けられない状況だ。・・・政府の専門家会議は1日、東京、神奈川、愛知、大阪、兵庫の各都府県について『医療提供体制が切迫している』と指摘。『今日明日にでも抜本的な対策を』と求めた。」としている。ここでは、ちゃんと愛知県を取り上げている。これに対して名指しされたほとんどの都府県はその方向で検討を進めているようだ。ところが、愛知県の大村秀章知事だけは「2日に臨時の会見を開き、『医療提供体制は十分確保している。迷惑千万だ』と専門家会議の指摘に反発した。感染状況も『どっと拡大しているわけではない』として、軽症でも感染者を入院させるという方針を変える必要はないとの考え」だそうだ(4月3日付け朝刊)。こういう、いわば「可愛くない」態度も、指定されなかった背景にあるのだろう。

(2)次に、この政府の緊急事態宣言を受けて、対象とされた都府県が緊急事態措置を行うのであるが、4月8日から10日かけて国と東京都が調整中という話が伝わってくるだけで、その措置がなかなか発出されないのである。私は、「どうしたのか、事は人間の生死にかかわるのに」と思っていたら、その様子がわかってきた。

 要は、国がまずは外出の自粛程度の「穏便な」措置を目指していたのに、東京都はそれだけでなく施設の使用制限という「強力な」措置を求めていて、その調整が長引いていたからである。他の府県は、東京都ほど感染が拡がっていないことから、内心は「穏便な措置でよいではないか、それ以上に休業などを求めると補償の問題が出てきて財政が持たない」と思いながら、その国対東京都のバトルの様子見をしていたからである。現に千葉県知事などは「我々は東京都ほど財政に余裕があるわけではない」と言い、神奈川県知事は「まずは自粛で、その効果を見てからでよいではないか」と言って、東京都を牽制していた。

(3)以上の国(西村康稔経済財政再生大臣)と東京都(小池百合子知事)の調整は、私の見るところ、東京都側の圧勝に終わった。まるで政治家としての役者が違って、国が東京都に押し切られたのである。パンデミックを目前に控えた東京都と、さほどではない他の府県や経済の先行きを気にする国との真剣さの違いが出たのだと思う。

 経済に対する打撃を懸念する国側は、東京都に対して、「新型コロナウイルス感染症対策の基本的対処方針」に書かれた通り、「まん延の防止に関する措置として、まずは法第45条第1項に基づく外出の自粛等について協力の要請を行うものとする。その上で、都道府県による法第24条第9項に基づく施設の使用制限の要請を行い、特定都道府県による法第45条第2項から第4項までに基づく施設の使用制限の要請、指示等を行うにあたっては、特定都道府県は、国に協議の上、必要に応じ専門家の意見も聞きつつ、外出の自粛等の協力の要請の 効果を見極めた上で行うものとする。」(10P)と求めたはずだ。


都道府県別の感染者数



 ところが東京都は、「とりあえず」外出自粛要請をして様子を見るということでは目前に迫っているパンデミックによる医療崩壊を避けられないと考えたのであろう。外出自粛の要請と施設使用制限の要請を「同時に」行い、かつ施設使用制限に応じた中小事業者に50万円(2事業所以上は100万円)の「感染拡大防止協力金」を支給することまで表明した。それに伴う予算措置は、1,000億円だという。他の府県は、とてもそのような余裕はないので、国に頼ることになるだろう。国は、地団駄を踏むことになる。

 国と東京都との溝が埋まらなかった部分は、もちろんこれだけではない。特別措置法第45条第1項に基づく東京都知事による緊急事態措置のほかに、東京都知事が特別措置法第24条第9項に基づく都道府県知事による協力の要請を幅広く発出するという主張をしたらしい。これは、本来は緊急事態宣言や措置等が出される前のいわば「つなぎ」として想定されていた条文だが、東京都は国との見解の相違を埋めるために持ち出したようだ。具体的には、居酒屋や理髪店や小規模ホームセンターも全面的な休業要請の対象に加えたいという都の考えに対して、これらは社会生活を維持する上で必要だからやり過ぎだと、国が消極的だったそうだ。

 調整の結果、居酒屋や理髪店や小規模ホームセンターについては休止要請まではせず、適切な感染防止策を講じた上での営業を認める。ただし、居酒屋は午後8時まで、酒類の提供は午後7時までとなった。しかしながら、東京都の発表を見てみると、結果的にこれは特別措置法に基づかない協力要請とされたようだ。この辺りの経緯と法的な理由は、明らかになっていない。話が誠に輻輳しているので、それを整理して並べると、次のようになる。

  ‘段盟蔀嵋,亡陲鼎政府の緊急事態宣言(法第32条第1項)から始まり、

 ◆‘段盟蔀嵋,亡陲鼎都道府県知事による緊急事態措置(法第2条第3号・45条)(違反者には特に罰則はないが、守らない者に対して都道府県知事は指示ができるし、その公表規定もある。)

 【 特別措置法に基づく都道府県知事による協力の要請(法第24条第9項)・・・東京都の発表には法的根拠がはっきりとは書かれていないので、よくわからない。おそらくこれらは、結果的に次のい箸覆辰燭里任呂覆いと思われるが、真偽不明。いずれにせよ要請ベースであることには変わりがない。】

 ぁ‘段盟蔀嵋,亡陲鼎ない都道府県知事による緊急事態宣言や自粛要請(行政指導)

 ちなみに、国との交渉を終えた小池百合子東京都知事は、その直後の記者会見で、次のようなやり取りがあったそうだ(日経新聞4月11日付け)

記者の問い「休業要請や協力金は都の財政基盤があるからこそできるとの意見もある。緊急事態宣言の対象の府県には、都のモデルを追随してほしいと考えているか。」

小池都知事「それぞれの地域の特性があり、だからこそ都道府県知事に権限を与えたと思う。ただ権限は代表取締役社長(知事)にあると思っていたら、天の声(= 国)が色々と聞こえまして、中間管理職になったような感じだ。やはりそれぞれで事情が違うので、まずは東京都としてなすべきことを知事としてやっていく。」

 これは、地方分権で都道府県知事に感染症対策のほとんどすべての権限を与えておきながら、この改正新型インフルエンザ対策特別措置法に限っては、基本的対処方針という中に書き込んだ「調整権限」で国が都道府県をコントロールしようとしている仕組みそのものに無理があると考えられる。二つの方向がある。そのひとつは、地域の事情を知り住民により近いところにいる都道府県知事に全て任せて国はバックアップに徹するか、あるいは地方分権前のかつての機関委任事務を復活させて国が統一的な感染症対策を作ってその手足として都道府県を使い、万が一にも国の指示に反する知事が出てきたら最終的には罷免するくらいの仕組みを作るかだ。そうでなければ、施策の統一的な実施はできるものではない。しかしながら、これだけ地方分権を進めた以上、もはや前者の道しかないように思える。

(4)東京都における緊急事態措置等(令和2年4月10日)

 都内全域を対象として、令和2年5月6日(水曜日)まで、新型コロナウイルス感染症のまん延防止に向け、以下の要請を実施

 (1) 都民向け:徹底した外出自粛の要請(令和2年4月7日から5月6日まで)
・新型インフルエンザ等対策特別措置法第45条第1項に基づき、医療機関への通院、食料の買い出し、 職場への出勤など、生活の維持に必要な場合を除き、原則として外出しないこと等を要請

 (2) 事業者向け:施設の使用停止及び催物の開催の停止要請(令和2年4月11日から5月6日まで)
・特措法第24条第9項に基づき、施設管理者もしくはイベント主催者に対し、施設の使用停止もしくは 催物の開催の停止を要請。これに当てはまらない施設についても、特措法によらない施設の使用停止の協力を依頼 ・屋内外を問わず、複数の者が参加し、密集状態等が発生する恐れのあるイベント、パーティ等の開催についても、自粛を要請


東京都の措置


東京都の措置


 この表の「2.対象施設一覧」のうち、「基本的に休止を要請する施設(特措法施行令第11条に該当するもの)」とは上記(3)△法◆崙蛋舎,砲茲蕕覆ざ力依頼を行う施設」とは上記(3)い法◆峪楡澆亮鑛未砲茲辰討狼拔箸鰺彑舛垢觧楡漾廚眈綉(3)い乏催するものと思われるが、定かではない。

(5)緊急経済対策

 緊急事態宣言と軌を一にして、「新型コロナウイルス感染症緊急経済対策〜国民の命と生活を守り抜き、経済再生へ〜」が閣議決定され(4月7日付け)、その内容が明らかとなった。事業規模は約108兆円で、過去最大の経済対策となる。事業継続に困っている中小・小規模事業者に最大200万円、個人事業主に最大100万円を支援する。また生活に困っている世帯に30万円を現金で支給する。新型コロナへの治療効果が期待されている抗インフルエンザ薬「アビガン」の増産も支援する。20年度中に現在の最大3倍にあたる200万人分の備蓄を確保するなどである。


緊急経済対策




7.アジア諸国と欧米諸国の違い

 本日(4月11日)現在、東アジア諸国と欧米諸国について、新型コロナウイルス感染者数と死者数を比較してみると、次のようになっている。

欧米諸国 (感染者数) (死者数) (死亡率)

 アメリカ 425,889人  14,665人    3.4%
 イタリア 143,626人  18,281人    12.7%
 スペイン 152,446人  15,238人    10.0%
 フランス  85,351人  12,192人    14.3%
 イギリス  65,081人   7,978人    12.2%
 ドイツ  113,525人   2,373人     2.0%

東アジア諸国(感染者数)(死者数)(死亡率)

 中 国    82,008人   3,336人    4.1%
 韓 国    10,450人    208人    0.5%
 日 本    6,188人    120人    1.9%
 台 湾     363人     5人    1.4%


 この表をみると、欧米諸国のうち、イタリア、スペイン、フランス、イギリスの死亡率がいずれも10%を超えていることが目を引く。これは、流行の始まりが早かったことから死者数がそもそも多く、かつ蔓延が急速であったために医療崩壊が起こってそれに拍車を掛けたからだと思われる。ただし、ドイツだけは別格で、死亡率が低い(注)。

(注)ドイツの死亡率がなぜ低いかということだが、日経新聞とNHKによれば、次のように分析されている。

  (1) 元々、新聞や出版社といった業界を含めてほぼテレワークであり、しかもワークライフバランスの気風があることから、外出の制限にあまり抵抗感がない。
  (2) 特に北ドイツでは、高齢者は子供と同居しないというライフスタイルを貫いている。また、家が広いから、自宅隔離も容易である。(以上、日経新聞グローバルニュース2020年4月13日付け)
  (3) 現地ドイツ在住の上原医師によると「感染が広がる前に医療の設備が整っていたのが大きい。患者が増えても落ち着いて対応できた。」また、ドイツでは人口10万人当たりの集中治療のベッド数が、日本やイタリアなどと比べて多く、現在もおよそ1万床が空いている。(NHKニュース4月13日付け)


 しかし、それにしても日本、韓国、台湾の死亡率2%以下という数字と比べて、欧米諸国(ドイツを除く)とはあまりにも差が大きい。同じウイルスから生じている感染症とはとても思えないほどである。死亡率の高い高齢者の比率は、欧米諸国より東アジア諸国の方が高いはずなのに、これは一体なぜなのだろうか。その解明が進まないまま、上記4の通りの諸外国の強権的措置に比べて、5の通り日本では微温的な緊急事態宣言に基づき、この未曾有の事態に対応しようとしている。イタリア、スペイン、フランスはもとより、ニューヨークでも医療崩壊が起こって死者の数が2万人を超え、誠に悲惨な状況である。果たして日本はそのような道をたどるのか、それとも中国や韓国のように押さえ込みに成功するのだろうか。つまりは、強権的と微温的と、どちらの方が功を奏するのか、その答えは、早ければ2週間後、遅くとも1ヶ月後にわかる。(6と7は、4月12日記)


8.外出自粛要請下での同級生の生活

 閑話休題。新型コロナウイルスについて、東京都では3月28日に知事による週末の外出自粛要請が、4月7日にはインフルエンザ対策特別措置法に基づく政府の緊急事態宣言が、そして4月11日からはいよいよ同法に基づく東京都知事による緊急事態措置等が出された。その中で、「医療機関への通院、食料の買い出し、 職場への出勤など、生活の維持に必要な場合を除き、原則として外出しないこと等」が要請された。

 さてそれで、この外出自粛下での生活をどうしているか、大学の同級生のメーリングリストでのやり取りがある。皆さん、ほぼ現役生活を終えて引退しているとはいえ、それぞれの職業経験を踏まえて、なかなかの知的生活を送っているので感心するとともに、立派な同級生たちだと誇りに思えてきた。


《Aさん》

 新型コロナウィルスの影響でいつもの同級生の懇親会場のクラブが、5月の連休明けまで休業することになったとの連絡が来ました。開業以来初めての長期休業だそうです。

 スポーツクラブの休業に加えてゴルフ場まで行動制限が厳しくなり、月1回の東京本社での検診、薬の受け取りもバス、電車での感染予防のため、当面近くのクリニックで行うように会社から指導がありました。大切な時間が無駄に過ぎて行くのは本当に残念です。

 皆さんはどんな過ごし方をしているのか、良いアイデアがあれば是非教えていただきたいと思います。

 私からは月並みながら最近読んだものからお奨めを2点。

  ‘8驚せ法屮僖鵐妊潺奪を生きる指針」−歴史研究のアプローチ

 ・岩波新書HP「B面の岩波新書」に掲載されたもので、8Pの小論文ですが、著者の許諾を得て、自由に印刷・複製できます。著者は京大人文研の准教授。

 ◆+澄ー平「サリエルの命題」講談社 単行本

 ・新型ウィルスの感染を梃に、長寿化の問題を扱ったフィクションですが、現在指摘されている問題も取り上げられています。ただ、この小説では特効薬がある、感染地域が離島・過疎地域にとどまるなどとしていますが、今回のウィルスは、特効薬もワクチンも無く、都市部で拡がるなど、作者の想像を超えたもので、より深刻です。



《私(悠々人生)》

 私の法律事務所も閉鎖した上に所内でも所外でも対面は禁止というので、全く仕事になりません。海外旅行も、今年中に南欧、北欧、エジプトのナイル川クルーズを計画していたのですが、全てキャンセルしました。中でも今年初めにナイル川クルーズに行った日本人が感染して帰国して周りにうつしたと聞いて、かなり危なかったと感じました。

 このウイルスは、大多数の人が免疫を獲得するまで、何波にもわたって襲ってくるでしょうから、来年の東京オリンピックもどうなるかわかりませんね。それまで、特効薬とワクチンが出来ていて、かつ私も皆さんも罹らないでいることを願います。

 そういうことで、現在は安全が保証された「宇宙船」のような自宅にいて、時々「船外活動」と称して散歩や必需品の買い物に出掛けています。近くの根津神社は散歩コースですが、今年は「ツツジ祭り」が中止となりました。ところが、季節は巡って咲く時期となり、綺麗なツツジが派手に虚しく咲いています。

 雑誌にインタビューされたりしたので、それ以来、改正新型インフルエンザ対策特別措置法や政府と東京都の攻防をウォッチしていますが、なかなか興味深いです。とりあえず、次のようにとりまとめています。ただ、2本目は、まだ作成途上です。

    

新型コロナウイルス記事

    

新型コロナウイルス緊急事態宣言



 日本の感染者はまだ6千人台で死亡率は幸い2%弱ですが、イタリア、スペインは10数万人と12%ほどで、強権的な押さえ込みをしてもこれほど上がってしまいました。アメリカは全体では50万人を超えて死亡率は今のところ3%強ですが、既に医療崩壊が起こっているニューヨークなどは早晩ヨーロッパの道を歩むのは確実だろうと思います。

 それに対して日本は、微温的な緊急事態宣言を出したばかりですが、欧米諸国と同じになるのか、それともこの微温的な措置で押さえ込みに成功するのかですね。現に国と東京都は方法論を巡って大議論を行った。どちらが正しかったか、その答えは、早ければ2週間以内に分かるでしょう。もし成功すればさすが日本ということになるし、失敗すれば、こんな微温的なことで良いのか、他の国並みに強権的に対処すべきだとして、個人の権利を制限する方向が強まるでしょう。大袈裟に言うと、戦後日本が構築してきたものが問われている。


《Bさん》

 コロナウィルスの猛威は収まるどころか、このまま自粛が数か月続くと、心身ともにめげそうですね。

 蟄居閉門の沙汰があったと考え、自宅に抱え込んだ膨大な数のDVDと本棚にあふれかえって前をふさいで積み上がり。下段に何があるのかわからなくなっている蔵書の整理にかかっております。もうお読みになったかもしれませんが、まだの方には藤沢周平の長編「蝉しぐれ」か短編の「帰郷」(文春文庫・又蔵の火に収録)をお勧めします。時代小説もよいものですよ。

 携わっているボランティア、習い事のうち、博物館ボランティア2件と藍染は現在ストップ、電話相談(自殺防止です)のみ稼働中で、人生で最もヒマな時期となっております。読書は、今年初めからインド、中央アジア、西アジア、エジプトにわたる4千年の歴史をかじりまくっております。このエリアについての翻訳書はまことに少なく、私が法学部を選ばなかったら進んでいたはずのオリエント歴史学は楽しんで読めるものがほとんどありません。情けないことです。

 ボランティアの一つ、みんぱく(国立民族学博物館)では、設立者の梅棹忠夫生誕100年展などを計画していましたが、先送りとなりました。この機会に梅棹忠夫の著書を数点読みましたが、教科書で覚えのある「モゴール族探検記」、「知的生産の方法」などを読むと、改めてわれらの京都大・今西組の知的貪欲さとエネルギーに圧倒されました。入学早々に今西錦司氏(当時・岐阜大学長でした)の講演を聞いたこと、仕事でみんぱく館長時代の梅棹氏にインタビューした事を思い出し、俺たちは充実した知的経験をしてたんだな・・と妙に感心している次第です。

 わが蔵書は、文庫、ハードカバー取り混ぜて、ー匆餡奮悄⇔鮖坊蓮↓∧験愀蓮憤娚阿隼軆限燭掘法↓ミステリー、SF系(英米のホラーの翻訳はほとんど所有)ぜ然系、イ覆弔しの漫画やコミック・・に大別され、幅1m、8−9段の本棚24本におさまっているのですが、さらにその半分くらいの冊数が本棚の前や間に積み上がっております。冊数は3−4万くらいでしょう。これをあと2年(72歳のうちに)で積み上げを解消するのを目標にしております。

 DVDは、)画、⇒硫茵↓2良餞譴修梁招歿宗↓ぅラシック(主にオペラとバレエ)ナ塚歌劇、Ε▲縫甅和洋のテレビドラマ╂己、自然科学系、歴史や文化系に大別して、総計3万枚くらいです。只今重複を整理中ですが、こちらも72歳を期して増やさないつもりです。

 自分では、あと12年くらいまでにお迎えが来ると思っており、最後の数年は自選した書籍と映像に埋まって過ごしたいと考えております。

 皆さん、蟄居閉門を楽しむ方法を考えましょう。



9.各国首脳のリーダーシップに感動

(1) 新型コロナウイルスは、2月頃に中国の武漢や韓国の大邱で猛威をふるった後、3月中旬頃から舞台は欧州各国に移り、アウト・ブレイクする兆しをみせた。そうした中で、イタリア、フランス、ドイツ、イギリスなど欧州各国首脳は外出禁止令を出し、国民に対して耐乏生活を呼びかけた。それが、実に心に響くもので、私は感動してしまった。

(2) ドイツのメルケル首相

 3月18日、ドイツのメルケル首相は、国民に対して「新型コロナウイルス感染症対策に関する演説」を行った。その一部を抜き出してみると、

「ドイツに広がるウイルスの感染速度を遅らせることです。そのためには、社会生活を極力縮小するという手段に賭けなければならない。・・・こうした制約は、渡航や移動の自由が苦難の末に勝ち取られた権利であるという経験をしてきた私のような人間にとり、絶対的な必要性がなければ正当化し得ないものなのです。民主主義においては、決して安易に決めてはならず、決めるのであればあくまでも一時的なものにとどめるべきです。しかし今は、命を救うためには避けられないことなのです。」

 周知の通り、メルケル首相は旧東ドイツの出身で、若い頃は基本的人権が非常に制約された生活を送っていた。そうした体験を踏まえて、このようなことを切々と語りかけると、国民は納得せざるを得ないと考える。実に良い演説だった。

メルケル首相コロナ演説



(3) フランスのマクロン大統領

 3月16日、フランスのマクロン大統領は、しっかりとテレビカメラを見据え、いかにも若くて元気のよい演説を行ったので、思わず見とれてしまった。

 曰く「明日正午から少なくとも15日間、われわれの移動は極めて大幅に限定されます。それはすなわち屋外での集まり、家族同士や友人同士の集まりが、もはや許されなくなるということです。公園や通りを散歩したり、友人と再会したりすることは、もはやできなくなります。家庭以外でのこうした接触を最大限に制限するということです。フランス全土の至る所で、本土でも海外領土でも、必要なルートのみ、規律を守り、最低1メートルの間隔を取りながら、あいさつの握手もキスもせず、買い物に行くために必要なルートのみにとどめなければなりません。治療を受けるために必要なルート、もちろん、在宅勤務ができないならば通勤するために必要なルート、軽く運動するために必要なルート、しかしここでも友人や近親者と会ってはなりません。

 すべての企業はテレワークしやすくするように態勢を整えなければなりません。それが不可能なら、ウイルス感染予防策を順守させるため、すなわち従業員を守るため、明日から組織を適応させなければなりません。フリーランスであれば、自分自身を守らなければなりません。政府は今夜、私の演説を受けて、これらの新しいルールの形態を明確化します。これらのルールに対する違反はすべて罰せられます。

 私は今夜、極めて厳粛な気持ちで申し上げます。医療従事者の言うことに耳を傾けようではありませんか。『私たちを助けたいのであれば、自宅にとどまり、接触を制限する必要があります』。これが最も重要なことです。当然のことながら、今夜、私は新しいルールを課し、われわれは禁止措置を課し、検問もあるでしょう。しかし最良のルールは、皆さんが市民として、ルールを自らに課すことです。私は改めて皆さんの責任感と連帯意識に訴えます。」


マクロン大統領コロナ演説



(4) ニューヨーク州のアンドリュー・クオモ知事

 国の首脳ではないが、各国の知事も頑張っている。私が一番感心したのは、ニューヨーク州のアンドリュー・クオモ知事である。これこそリーダーだと、男を上げている。毎日、定期的に記者会見を開き、データに基づいて科学的に冷静に説明する。その上で、テレビを見ていると、このような発言があり、いちいちそのたびに感激し、感動した。


アンドリュー・クオモ知事


「(州内の全労働者に自宅待機を義務づけたとき)、本件に関して、私が全ての責任をとる。誰かを非難するなら、私を非難してほしい。

「(人工呼吸器がない、ないと訴え)、人工呼吸器、人工呼吸器、人工呼吸器と3回繰り返す。(そして、とうとう自分で中国から1万3,000台を輸入して、それをトラックから降ろしてみせた。」

「(患者の7割が貧しい黒人層に偏っていることについて)公共交通機関の関係など、通勤をやむなくされているからだろうが、原因を究明する必要がある。

海軍の病院船をニューヨークに回航してくれとトランプ大統領に頼んだ(実現した。)」

「医療従事者が絶対的に足りないと全米に『もし、あなたのいる地域で医療崩壊が起きていないのなら、是非ニューヨークに来て助けてほしい。』と呼び掛けた。」


アンドリュー・クオモ知事


 まるで、西部劇の保安官のようなもので、誠に格好が良い。リーダーシップや正義感、マッチョの男に憧れるアメリカ人の心をしっかりと掴んでいる。

(5) 東京都の小池百合子知事

 そうかと思うと、日本では東京都の小池百合子知事が頑張っている。緊急事態宣言に基づく緊急事態措置の発表に当たり、国が経済への悪影響を懸念して「まずは外出自粛、2週間ほどその様子を見てから休業要請に踏みきるか決める」という腰が引けた態度だったのに対して、「同時にしなければオーバーシュート(爆発的に感染者が増える状況)に陥る。」として頑として譲らず、それを貫徹した。心から拍手を送りたい。

(8は、4月14日記。9は、4月20日記)


10.それに対して、我が宰相は

(1) 星野源というシンガーソングライターが「うちで踊ろう」という自作の曲を歌って,外出禁止を呼びかけている。有名人がこれに応じて演奏したりしていたが、驚いたことに、4月12日、安倍晋三首相がその公式ツィッターにこれを取り上げた。画面の左側で星野源がギター片手に歌っていて、その右側に安倍首相が自宅でペットを撫でたり珈琲を飲んだりと、実に優雅に寛いでいる様子が投稿された。そして曰く「友達と会えない。飲み会もできない。ただ、皆さんのこうした行動によって、多くの命が確実に救われています。そして、今この瞬間も、過酷を極める現場で奮闘して下さっている、医療従事者の皆さんの負担の軽減につながります。お一人お一人のご協力に、心より感謝申し上げます。」


星野源と安倍首相




 だれが見ても、これは国民の神経を逆撫でして、完全な逆効果であることは明らかだ。一庶民が寛いでいるのならともかく、首相は言うまでもなく国政の責任者である。しかも現下は緊急事態にあり、このたびの外出自粛や施設の使用制限によって多くの人が苦しんでいる。例えば、顧客を失ったレストランなどの小規模事業者、派遣切りにあった労働者、観光客が途絶えた旅館のオーナーなどだ。その人たちのことに思いを馳せず、まるで他人事のように、一人自宅で優雅にペットを撫でているときかと、国民は思ってしまう。そんな暇があるなら、メルケル首相やクオモ知事のように、蔓延防止のため一生懸命に仕事をしろと言いたくなる。取り巻きを含めて、そういう政治感覚が全然ないのだろうか。やることなすことが全くちぐはぐだ。これでは先行きが思いやられる。

(2) もう一つ驚いたことは、緊急経済対策を実現するための補正予算案に盛り込まれた「生活に困っている世帯に30万円を現金で支給する。」という施策が、公明党の申入れで、たった一夜で覆り、「国民一人当たりに10万円を現金で支給する。」に代わったことだ。そもそもこの30万円の支給案は、岸田文雄自民党政調会長との協議で決定したはずだ。その時、私はなぜ岸田会長が急に出てきたのか、後継者としてアピールするつもりなのかと訝しげに思っていたが、案の定、直ぐにひっくり返ってしまい、政治力のなさを天下に示してしまった。

 当初の30万円支給案が国民の2割程度しか行き渡らないし、月収が一定以上減収するなどの支給要件のチェックをする作業のために支給まで数ヶ月以上もかかるということが明らかになって、二階幹事長や与党の一角の公明党から、「もっとシンプルにした早く支給できる制度にした方がよい」という声が高まってきたからだ。もちろん、幹事長には政調会長へのさや当ての意図もある。その結果、4月16日に公明党山口那津男代表が首相に直接申し入れて、補正予算案の組み替えが決まった。こういうことは、前代未聞のことである。急がなければならないのに、このドタバタ劇で、補正予算の成立は1週間ほど遅れるだろう。
(10と11は、4月16日記)

我はマスク難民なり




11.緊急事態宣言の対象を全国に拡大

 2020年(令和2年)4月16日、総理大臣官邸で第29回新型コロナウイルス感染症対策本部を開催された。その議論を踏まえ、安倍首相は、次のように述べた。

 「本日、諮問委員会からも御賛同を頂き、4月7日に宣言した緊急事態措置を実施すべき区域を、7都府県から全都道府県に拡大することといたします。実施期間は、5月6日までに変更はありません。まず、北海道、茨城県、石川県、岐阜県、愛知県及び京都府の6道府県については、現在の対象区域である7都府県と同程度にまん延が進んでおり、これら以外の県においても、都市部からの人の移動等によりクラスターが各地で発生し、感染拡大の傾向が見られることから、地域の流行を抑制し、特に、ゴールデンウィークにおける人の移動を最小化する観点から、全都道府県を緊急事態措置の対象とすることといたしました。」

 つまり、緊急事態宣言の元々の対象だった7都府県に、愛知県及び京都府などの6道府県加えて合計13都道府県を「特定警戒都道府県」とし、それ以外の34全県を緊急事態措置の対象にしてしまった。ここで、「・・・しまった。」というのは、同特別措置法32条やその施行令6条の要件(注)からして、この全都道府県の指定は、この段階ではできなかったのではないかと考えられるからである。

(注) 改正新型インフルエンザ対策特別措置法特別措置法32条及び同施行令6条の要件

 (新型インフルエンザ等緊急事態宣言等)
特別措置法第三十二条
 政府対策本部長は、新型インフルエンザ等(国民の生命及び健康に著しく重大な被害を与えるおそれがあるものとして政令で定める要件に該当するものに限る。以下この章において同じ。)が国内で発生し、その全国的かつ急速なまん延により国民生活及び国民経済に甚大な影響を及ぼし、又はそのおそれがあるものとして政令で定める要件に該当する事態(以下「新型インフルエンザ等緊急事態」という。)が発生したと認めるときは、新型インフルエンザ等緊急事態が発生した旨及び次に掲げる事項の公示(第五項及び第三十四条第一項において「新型インフルエンザ等緊急事態宣言」という。)をし、並びにその旨及び当該事項を国会に報告するものとする。
 一 新型インフルエンザ等緊急事態措置を実施すべき期間
 二 新型インフルエンザ等緊急事態措置(第四十六条の規定による措置を除く。)を実施すべき区域
 三 新型インフルエンザ等緊急事態の概要
2 前項第一号に掲げる期間は、二年を超えてはならない。
3 政府対策本部長は、新型インフルエンザ等のまん延の状況並びに国民生活及び国民経済の状況を勘案して第一項第一号に掲げる期間を延長し、又は同項第二号に掲げる区域を変更することが必要であると認めるときは、当該期間を延長する旨又は当該区域を変更する旨の公示をし、及びこれを国会に報告するものとする。
4 前項の規定により延長する期間は、一年を超えてはならない。

 (新型インフルエンザ等緊急事態の要件)
施行令第六条
 法第三十二条第一項の新型インフルエンザ等についての政令で定める要件は、当該新型インフルエンザ等にかかった場合における肺炎、多臓器不全又は脳症その他厚生労働大臣が定める重篤である症例の発生頻度が、感染症法第六条第六項第一号に掲げるインフルエンザにかかった場合に比して相当程度高いと認められることとする。
2 法第三十二条第一項の新型インフルエンザ等緊急事態についての政令で定める要件は、次に掲げる場合のいずれかに該当することとする。
 一 感染症法第十五条第一項又は第二項の規定による質問又は調査の結果、新型インフルエンザ等感染症の患者(当該患者であった者を含む。)、感染症法第六条第十項に規定する疑似症患者若しくは同条第十一項に規定する無症状病原体保有者(当該無症状病原体保有者であった者を含む。)、同条第九項に規定する新感染症(全国的かつ急速なまん延のおそれのあるものに限る。)の所見がある者(当該所見があった者を含む。)、新型インフルエンザ等にかかっていると疑うに足りる正当な理由のある者(新型インフルエンザ等にかかっていたと疑うに足りる正当な理由のある者を含む。)又は新型インフルエンザ等により死亡した者(新型インフルエンザ等により死亡したと疑われる者を含む。)が新型インフルエンザ等に感染し、又は感染したおそれがある経路が特定できない場合
 二 前号に掲げる場合のほか、感染症法第十五条第一項又は第二項の規定による質問又は調査の結果、同号に規定する者が新型インフルエンザ等を公衆にまん延させるおそれがある行動をとっていた場合その他の新型インフルエンザ等の感染が拡大していると疑うに足りる正当な理由のある場合

 それにつけても思い出すのは、4月7日、政府が改正インフルエンザ対策特別措置法に基づき、東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県、大阪府、兵庫県、福岡県の7都府県を対象として緊急事態宣言を発出したときのことである。上記6.で述べたように、都道府県の指定は、「政府の基本的対処方針等諮問委員会は、『当該都府県内の(1)累計の感染者数、(2)感染者が2倍になるまでの「倍加時間」、(3)1日あたりの感染者数に占める経路を追えない感染者数の割合』の3つを基準にしている」とされていた。これは、同特別措置法32条やその施行令6条の要件を念頭に置いていることは明らかである。

 ところが今回、安倍首相によるこの全都道府県の指定の記者会見に際して、隣に諮問委員会の尾身茂会長がいたにもかかわらず、両者からこうした要件についての説明が全くなかったのには、驚いた。それどころか、なぜ決断したのかと記者に聞かれた安倍首相曰く「専門家によると、都市部からの人の移動でクラスターが各地で発生し、全国的な感染拡大の傾向が見られるとの見解だった。地方には重症化リスクの高い高齢者がたくさんいる。もし感染が広がれば医療提供体制に大きな負担になる。大型連休に旅行や帰省で多くの人が移動することが予想されるなか、人の移動を最小化するとの観点から全国を対象にした。」。それならそれで、法律の要件に書き込むべきだった。

 そして尾身会長も、「先行きについては、(宣言から)1カ月経ってみて『極力8割(の接触削減)』がどのぐらい達成されたのか、感染のカーブが当初に比べて平坦なのか、下がらないのか、我々が期待するような下がり方なのか、下がり方が緩やかなのか――といったことについて、5月6日ごろになると大体のことが言える。その評価を元に専門家として政府に提言したい。」(4月17日付け朝日新聞)などと、法律の要件とはまるで関係のないことを語っていた。

 ちなみに、前日16日午後8時半現在の感染者数( 括弧内は緊急事態宣言を発出した4月7日の感染者数)の多い都道府県と少ない県は、次のようになっている。(4月17日付け朝日新聞)

最初からの特定警戒都道府県
 東京都  2595人(1,519人)
 大阪府  1020人(  616人)
 神奈川県  674人(  381人)
 千葉県   596人(  354人)
 埼玉県   528人(  285人)
 兵庫県   454人(  287人)
 福岡県   461人(  250人)
......................................


今回加わった特定警戒都道府県
 愛知県   370人(  301人)
 北海道   332人
 京都府   225人
 石川県   146人
 岐阜県   130人
 茨城県   123人
......................................


感染者の少ない県
 秋田県    15人
 佐賀県    15人
 鹿児島県    4人
 徳島県     3人
 鳥取県     1人
 岩手県     0人


 ここでは省略したが、感染者数50人未満の県は30、中でも岩手県はゼロ、鳥取県は1人だった。こういう県は、この時点では法律の要件には当てはまらないことから区域として指定できなかったはずなので、とりあえずは様子を見るべきであったと思う。案の定、知事の中には全国を指定対象としたことについて、「非常に驚いている」(鳥取県平井知事)、「想定していなかった」(新潟県花角知事)、「朝令暮改という言葉が浮かぶ」(愛媛県中村知事)、「大阪府などと同じことをする必要はなく感染者数といった県内の実態に応じて措置をする」(和歌山県仁坂知事)という感想を述べる人もいた。このように、現行の法律の規定を無視して、強引に当てはめようとする政権の姿勢には、一抹の不安を覚えるものである。これが他の分野で起こったら、重大な結果を招きかねないからだ。

 もっとも、今回の特別措置法は、法律の建て方がそもそも要請ベースであることから、法定の要件に外れるようないい加減な運用をしてもさほど目立たない。ところが、仮にこれが欧米のように外出規制や施設使用制限命令違反に直罰をかける法律であったとしたら、とてもこのようないい加減な運用では耐えられない。起訴されても、裁判所で無罪とされる例が続出するだろうと思う。


12.ステイ・ホーム週間の過ごし方

 4月24日、東京都の小池百合子知事が、「来週から始まるゴールデン・ウィークは、新型コロナウイルス対策のため、外出しないでお家にいるステイ・ホーム週間にしましょう。企業の方は、4月27日と28日も休んで、12連休にしてください。皆で命を守りましょう。」と呼び掛けている。

 私の法律事務所も閉鎖になった上に所内でも所外でも対面は禁止というので、全く仕事にならない。知事がそうおっしゃるので、安全が保証された「宇宙船」のような自宅にいて、時々「船外活動」と称して散歩や必需品の買い物に出掛けることにしている。近くの根津神社は散歩コースだが、今年は「つつじ祭り」が中止となり、つつじ苑も閉鎖されてしまった。ところが、季節は巡って咲く時期となり、ほとんど人がいない中で色とりどりの綺麗なつつじが派手に虚しく咲いている。好きな写真も、旅行や外出をしなければ撮れないものだから、もうダメだ。さりとて、日がな一日、宇宙船内で映画を見るのも飽きる。


綺麗なつつじが派手に虚しく咲いている


綺麗なつつじが派手に虚しく咲いている



 そういうことで、起床 → 朝食 → 専門書 → 散歩 → 昼食 → この悠々人生の手入れ → 散歩 → 過去の資料の整理 → 夕食 → 散歩→ NHK → 風呂 → 読書 → 就寝 という規則正しい生活を送っている。会食など全くないので、非常に健康的だ。だから、アイウォッチの健康アプリの三要素(消費カロリー、エクササイズ、スタンダップ)は、いずれもクリヤーしている。これからのステイ・ホーム週間も、特に出掛けることなく、同じように過ごすつもりである。

 ところで、私の親しい友人が、「さだまさしの関白宣言の替え歌があるよ。新型コロナウイルスを歌っている。面白いよ。」と教えてくれた。これがまた、非常によく出来ているのである。政府の広報以上の出来で、感心してしまった。誰の作か調べてみたが、結局わからなかった。 

 いま一つは、バンコク高架鉄道(BTS)の新型コロナウイルス・ダンスである。タイ語は全く分からないが、リズミカルに踊りながら、手を洗おうとか、皿を取り分ける時に専用のスプーンを使おうとか、手すりを掃除しようなどとかを訴えているようだ。手造り感いっぱいで、元気そのもの。ともかく、面白かった。


バンコク高架鉄道(BTS)の新型コロナウイルス・ダンス


(11と12は、4月25日記)



新型コロナウイルス緊急事態宣言(第2部に続く)



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