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新型コロナウイルス緊急事態宣言 (第4部)


29.新型コロナウイルスによる後遺症など

(1) 6月14日の夜、NHKのドキュメンタリー番組で、職場で院内感染した40歳の男性医師の話が報じられていた。この医師は、1週間ほど意識がなく、ECMO(エクモ:体外式膜型人工肺)でようやく命をとりとめたそうだ。そして、PCR検査で陰性となって退院したものの、病気の後遺症で、歩いたり階段を上ったりすると息切れして、以前のような勤務はできないという。おそらく、肺が傷ついて肺細胞が繊維化してしまったものと思われる。そうだとすると、もう元には戻らないだろう。新型コロナウイルスからの回復者の中で、こうした何らかの後遺症を抱える人の割合は、日本では7%だという。やはり、新型コロナウイルス感染症は、ブラジルのボルソナロ大統領が言う「単なる風邪」どころか、相当恐ろしい病気だと考えざるを得ない。

(2) あるスペインの女性(35歳)の話では、新型コロナウイルス感染症の症状が出たものの、自宅療養で意外と簡単に症状は収まり、PCR検査でも陰性が確認された。ところがそれ以来、掃除や皿洗いでも息切れして続けられない。そのうち胸の傷みに襲われて、病院で調べてもらうと、心臓の膜が傷ついているとのこと。フランスでの調査によると、新型コロナウイルスから回復しても、10%ないし15%の人に何らかの後遺症が残る。しかも、後遺症を訴える患者の3分の2が女性である。免疫が過剰に働いて、自分の身体を攻撃しているのではないか。免疫異常の割合は、元々、女性に多いという。

(3) このように、第1波が去った後、この病気について色々と分かってきた。後遺症の話以外に、6月19日の朝日新聞夕刊にはこういう報道が載っていた。欧州の研究チームがスペインとイタリアの感染者のゲノム解析をしたところ、新型コロナウイルスに感染した人のうち、血液型がA型の人は重症化するリスクが5割ほど高くなり、反対にO型の人はそのリスクが5割ほど低く、B型とAB型では、有意な差はなかったという結果が出た。これは血液型ごとに異なる生まれつき持つ抗体が関係しているか、遺伝子の違いで生じる血液を固める因子の働きなどが影響している可能性があるという。

(20(1)は6月14日、(2)と(3)は同19日記)



30.接触確認アプリ(COCOA)

 厚生労働省は、アップルやグーグルと提携して、6月19日に「新型コロナウイルス接触確認アプリ(COCOA)」(COVID-19 Contact Confirming Applicationの略)を公表し、国民にそのダウンロードを促すようになった。これは、新型コロナウイルス感染症の感染者と、「1メートル以内で15分以上」接触した可能性について、通知を受け取ることができるスマートフォンのアプリである。


接触確認アプリ(COCOA)


 同種のものはシンガポール政府も用意しているが、強権的で知られているかの国と違って、日本のこのアプリは、「アプリにより、利用者のデータを利用し、収集することはありません。利用者に氏名・電話番号などの個人情報を入力いただくこともありません。」というから、個人情報の保護の度合は、より一層高くなっている。ただ、どちらもスマホの近接通信機能(ブルートゥース)を利用して常時通信しているので、スマホの電池の消耗は激しいようだ。普及率は少なくとも6割にならないと実用的ではないというが、日本で最も普及しているあのLINEですら6割なので、COCOAがそれ並みになるというのは、あまり現実的ではないと思われる。

 Q&Aで「陽性者との接触の可能性が確認されたとの通知を受けたら、何をすればいいですか。」という質問に対する答えは、「アプリの画面に表示される手順に沿って、ご自身の症状などを選択いただくと、帰国者・接触者外来などの連絡先が表示され、検査の受診などをご案内します。」とある。

 こういうところの設計が、実に不十分だと思う。例えば、このアプリで陽性者との接触の可能性が確認されたとの通知を受け、心配しながら近くの保健所に行ったとする。そうしたら、まず何よりもPCR検査を優先的に受けられて、確定診断までどうすべきかのサジェスチョンをもらい、ついでに検査費用とそれに基づく診察を無料にするくらいのささやかな「特権」でも用意してさしあげないと、国民はあまりメリットを感じないからあまり普及しないのではなかろうか。また、陽性と判明した者には強制せずに任意の登録に任せるというのも、システムとして全く使い物にならないという気がする。

 なお、私の場合はiPhoneなので、COCOAをダウンロードしようとApple Storeを開いてみたが、直訳風の訳のわからない説明が出てきたので嫌になった。それでも、6月19日の配信開始から3日経った22日午後5時現在のCOCOAのダウンロード数は、326万だったというから、悪くはないと思う。こういうアプリは、作って配信して終わりというものではない。1ヶ月後には大幅に更新されるらしいから、それまでにもっと親切で使いやすいものに仕上げてほしい。私はそうして改良されてからインストールすることにしよう。要は、官と民の良いとこ取りを狙ったつもりが、「官製の使いにくさ、民製の無責任さ」にならないようにしてもらいたい。

(注)COCOAアプリの提供を始めて4日目の23日午前9時には、ダウンロード数が371万に達したが、案の定というかやはりというか、アプリに決定的な欠陥が見つかった。感染を自己申告すると保健所から「処理番号」が届くのでそれを打ち込まないと登録されない仕組みのはずだった。ところが、どんな番号でも打ち込みさえすれば「完了しました」と表示されるという。そんなことなら、処理番号を発行する意味がない。成りすまして登録を乱発することも可能となる。早急に修正しているとのことである。

(本文は6月21日、注は23日記)





31.上野動物園が再開された

 上野動物園は、新型コロナウイルスの影響で2月末から休園していたが、ようやく6月23日から4ヶ月ぶりに再開された。そこで、近いこともあり、行ってみる気になった。インターネットで整理券を取得しなければならないという。iPhoneを使って3回目に、ようやく午前10時45分からの番号をもらった。実は私の家から不忍口まで歩いて7分ほどなのだが、入るのは正門だけだというので、蒸し暑い中を上野桜木町方面へトコトコと歩いて行った。


順番待ちの列



 着いてみると、入園を待っている人がそれぞれ1mのソーシャルディスタンスをとっているので、延々と長い列を作っている。周りを見回すと、パンダの絵柄のあるポストがある。面白いことに、その口にマスクが付けてあった。誰か奇特な人がやっているのかと思ったら、朝日新聞によると、都内に住む40代の男性で、「子どもたちに着用を促しつつ少しでも癒やしになればと考え、4月下旬からパンダの口元に手作りでビーズを施したカラフルなマスクを数日おきに付け替えている。ポストが傷付かないよう磁石を使って取り付けている」(6月22日付け)という。

パンダの絵柄のあるポスト



 やっとのことで動物園の中に入ると、すぐにパンダ舎に通じる道を歩かされる。悲しいかな、混雑防止のため写真撮影は禁止とのこと。これでは、何のために一眼レフを持って行ったのか分からない。それでも、3歳になったばかりのシャンシャンが、こちらに寄って来てくれるなど元気に動いているのがとても良く見えたので、それなりに満足した。もう、体重が既に80キロもあるそうだ。竹ばかり食べて、よくそんなに重くなるものだ。

 爬虫類館などの室内展示施設は、三密を避けるために展示は中止。だから、楽しみにしていたミーアキャットには会えなかった。ほかは、ほぼ普段通りである。ただ、入園者の数が相当少ないと思ったら、一日当たり4,000人に制限しているそうだ。


スマトラ・タイガー


 次にスマトラ・タイガーを見ようと虎舎に行ったら、ちょうどよい具合に大きな石の上に雄のタイガーがちょこんと乗っていたので、それを撮ることにした。ところが、ガラスに私の背の高さまでフィルムが貼ってあって、それが白く曇っているので、そもそも焦点が合わないではないか。困ったなぁと思って、そのフィルムを避けるために両手を上げてカメラの位置を高くして試しに撮ってみた、すると、なんとか撮ることができた。ただ、後からパソコンで写真をよくよく見たところ、そのタイガーさん、眠そうで眠そうで、ほとんど目を閉じている。何十枚も連射して、やっと数枚、目が開いていて何とか使えそうな写真があった。野生動物を撮るのには根気がいるし、たくさん撮って「下手な鉄砲かずうちゃ当たる」を実践するしかない。

 ゴリラは、展示がお休み中だ。ヒトと近縁種だから入園者から新型コロナウイルスを伝染されてはたまらないということか。仕方がないので、猿山に行く。あれ、これもほとんどお猿さんが見当たらない。昼寝中かそれとも感染を恐れて数を絞っているのか、目の前にはわずか4匹しかいないではないか。写真を撮るどころではない。気のせいか、どのお猿さんも、どこか虚ろな目をしている。


象は撮りやすい


 猛禽類は興味深いが、ゲージの中なので檻の格子が写りこんでしまい、写真にならない。象のところに行く。ノッシノッシ、グルグルと歩いてくれるので、写真を撮りやすい。気のせいか、笑っているような表情を見せるので、面白い。ただ、撮影がガラス越しのときは、よく撮れたと思っても、家に帰ってパソコン画面でよくよく見ると、画面の一部に風景が映り込んで使い物にならなかった。

不忍池の方を見下ろすと、辺り一面の蓮の葉っぱ


 さて、イソップ橋を通って、西園の方に行く。このモノレールは、車両が老朽化したが高額の費用のために更新がかなわず、昨年10月から休止している。このままいくと、どうやら廃線になるらしい。初孫を連れて何回も乗ったのに、誠に残念なことだ。歩く途中、イソップ橋から不忍池の方を見下ろすと、蓮の葉っぱで辺り一面が覆われていて美しい。そろそろ、蓮の花の季節だ。また、あの池に朝早く撮りに行こう。

ハシビロコウ


 西園に降りてきたところで、まずはハシビロコウのところへ行く。この鳥は、丸一日でも立ったまま動かずに近寄ってきた魚を狙うという忍耐強いハンターだ。でも、あれ?今日は座り込んでいる。この環境に慣れて、だんだんズボラになってきたのかもしれない。これでは写真にならないので、フラミンゴのところに行く。

手前でフラミンゴ2羽が羽根を広げて追いかけっこ


奥の方にいるフラミンゴの群れ



 あれあれ、手前でフラミンゴ2羽が羽根を広げて追いかけっこをしている。それを撮ってみたのだが、鳥かごの手前の網が画面に写りこんでしまって、絵にならない。試しに、奥の方にいるフラミンゴの群れにレンズを向けると、幸いなことに手前の網は写らなかった。焦点が奥なので、網は画面上からは消えてしまう。光の屈折効果だ。これというのも、APS−Cサイズで300mmだからこそ、できる技だ(フルサイズで450mmに相当する)。キリン舎でも、キリンが奥の方にいるときは、同じように手前の檻の格子を消すことができた。

 そこから、不忍口から出て帰宅したが、ともかく暑くて湿気の高い日だった。パンダのシャンシャンが中国との取り決めで今年いっぱいで中国に帰るというので、それまでにまた何度か会いに来ようと、入園するときに年間パスポートを購入した。だけど、パンダの写真が撮れないとは、残念なことだ。ともあれ、緊急事態宣言で数ヶ月の蟄居生活の後なので、久しぶりにすっきりした。

 ところで、東京ディズニーランドとディズニーシーは、7月1日から営業を再開するそうだ。ただし、感染対策のために入場者の数を通常の2割に絞るとともに、パレードは中止、レストランも半分くらいは閉めるという。なお、感染の終息が早かった大阪のユニバーサル・スタジオ・ジャパンは、既に6月8日から再開している。


(31は、6月23日記)


32.専門家会議が突然廃止される

(1)6月24日、西村康稔担当大臣は、新型コロナウイルス対策の専門家会議を廃止し、それに代わるものとして「新型コロナウイルス感染症対策分科会」を新たに設置することを表明した。従来の専門家会議は、新型コロナウイルス感染症対策本部の下に設置されていて、「厚労省のアドバイザリーボードのような位置付けの感染症の専門家の皆さんの会議」(西村大臣)だった。それに対して新しい分科会は、「改正新型インフルエンザ対策特別措置法に基づく有識者会議の下部組織として位置付け、感染症専門家のほか、地方自治体の代表や危機管理対応の専門家らの参加も求める。」という。

 これは関係者にとっては寝耳に水の発表で、現にその当日、たまたま日本記者クラブで記者会見を開いていた専門家会議の尾身茂副座長(地域医療機能推進機構理事長)らはこの件について記者に聞かれ、「今、大臣がそういう発表をされたんですか?」と困惑し、「私はそれは知りません」と語った。新型コロナウイルス感染症対策の中心となっていた専門家会議を廃止して大きく衣替えするというのに、その専門家の中心人物たちに何の事前連絡もなく勝手に決めてしまうというのは、大変失礼な話である。一体どういうことが起こったのだろうか。

(2)話は、5月のNHK報道番組を見ていたときに遡る。日比谷公園に面した中央合同庁舎5号館(厚生労働省と環境省が入っている)の11階と12階に、狭い会議室がそれぞれ1つずつあり、「厚生労働省クラスター対策班」のいわゆる「タコ部屋」となっていた。一方は東北大学大学院押谷仁教授がチーフとなる東北大学・新潟大学・長崎大学などのグループである。当初は、各県の保健所などから上がってくる報告を元に全国の感染状況を把握し、厚生労働省から各地へ「クラスター対策班」を派遣して鎮火に努めていた。ところが3月中旬以降、感染が急拡大してクラスター対策が追いつかなくなると、次の西浦グループの立てた戦略に基づいて、接触機会の8割削減という方針転換を主導していった。もうひとつのその西浦グループは、北海道大学大学院医学研究院西浦博教授をチーフとする数理モデルを駆使した理論疫学の北海道大学のグループである。

 その2つのグループが、日付が変わる頃まで、調べ、議論し、悩み、呻吟してクラスター対策や予測に没頭する様子をNHKが報道していた。私はこれを見て、ご苦労さまという気持ちとともに、大いなる違和感を感じた。それは何かというと、これは学者のやるアドバイザリーボードではなく、行政官の行う行政そのものではないかと。早い話、感染者数が激増してクラスターの追跡どころではなくなったら、一体どうするのか。緊急事態宣言の発出をしなければならないと考えるが、同時に宣言による政治経済への打撃が懸念されるから、各方面への調整が必要となる。そんなことまで、組織の一員でもないこうした学者が、できるはずがない。ところが、政治が手をこまねいていることもあって、こうした専門家会議が表面に押し出されてきた。

 緊急事態宣言は、結局4月7日に発出されるが、その前の2月24日、専門家会議は「今後1〜2週間が感染拡大のスピードを抑えられるかどうかの瀬戸際だ」という見解を示した。私は、この頃はまだ専門家と政治の棲み分けはできていたのではないかと思っている。ところが、これを契機として、次第に専門家が国民への説明の前面に立つようになった。そして、5月25日に緊急事態宣言が解除されるまでの間に、専門家会議は見解を3回、要望を1回、提言を7回も出し、その度に尾身茂副座長を中心に懇切丁寧で中身のある記者会見を開くものだから、国民の関心も高まり、自ずと新型コロナウイルスに関する政策が、あたかも専門家によって決定されているように思われるようになった。


専門家会議の活動



(3)そんなクラスター対策班の中にあって、ユニークな存在は西浦博教授である。数理モデルを駆使した理論疫学の専門家だという。接触機会の8割削減などを明瞭に主張し、そのユニークな容貌とキャラクターと相まって、専門家会議の記者会見ではかなり目立った。それだけでなく、大阪府の吉村知事に説明して隣県兵庫県との往来の自粛を語らせたかと思えば、東京都の小池知事には気に入られて記者会見に何回も同席するなど、活動も活発であった。私が驚いたのは、4月15日の「個人的な見解」と称する記者会見で、「接触を減らすなどの対策を全くとらなければ、国内で約85万人が重症化し、うち約42万人が死亡する恐れがある」という試算を公表したことである。

 6月25日現在でアメリカの感染者数は242万人、死者数は12万人であることからすれば、これらの数字は荒唐無稽なものではない。しかし、それにしても、どういう計算式といかなる根拠でそのように試算したのかくらい明らかにされていないと、いたずらに国民の不安を煽るだけの結果になりかねない。だから、普通の行政官であれば、簡単には公表しないはずなのに、どうなっているのかと思った記憶がある。

(4)そのような一連の流れからすると、今回の出来事は、さもありなんという気がする。専門家が舞台から引きずり降ろされ、今まで、日々急激に進行していくあまりに深刻な感染状況にオロオロしていた政治家と厚生労働省が、感染がいったん落ち着いたので、ここからようやく気を取り直すことができて本来の任務についたということだ。

 西村康稔担当大臣は、専門家会議をなぜ廃止したのかと問われて、「会議は法律に基づくものでなく、位置付けが不安定だった・・・今後はワクチン接種の優先順位なども課題になるから、・・・感染症の専門家だけでは決められない事柄も出てくる」と話した。でも、専門家会議が法律に基づくものでなかったのは、最初からだ。そういう宙ぶらりんの立場の専門家会議に、政府の新型コロナウイルス対策の司令塔のような役割を果たさせる一方、自分たちはその陰に隠れて、事態が落ち着くまで表にほとんど出て来なかったのは誰なのかと反省すべきである。

(32は、6月25日記)


33.各国の超過死亡数の比較

 日本で新型コロナウイルス感染症が猖獗を極めていた今年の春、4月7日から緊急事態宣言が発出された。それから約1ヶ月半で解除されたのであるが、感染が最も多かったのは4月初旬から中旬にかけてといわれる。そこで、特に4月の「超過死亡数」つまり例年と比べた死亡者数の増分が相当多いのではないかと思われていた。その背景として日本は、他国よりPCR検査の数が桁違いに少ないし、検査漏れで亡くなってしまう人が、「新型コロナウイルスによる死亡」ではなく「自然死」として扱われた例がかなり多いのではと考えられていたからである。

 BBCによると、各国の超過死亡数と考えられる数字は、次の通りである。

 アメリカでは、平年より16%高く、97,300人も多く死亡
   (2月16日〜5月2日)

 イギリスでは、平年より43%高く、64,500人も多く死亡
   (3月7日〜6月5日)

 フランスでは、平年より25%高く、28,400人も多く死亡
   (3月2日〜5月10日)

 イタリアでは、平年より40%高く、42,900人も多く死亡
   (2月24日〜4月26日)

 スペインでは、平年より50%高く、42,900人も多く死亡
   (3月2日〜5月14日)

 ドイツでは、 平年より 4%高く、 7,100人も多く死亡
   (3月9日〜5月10日)

 ところで、感染者数はPCR検査の対象を人為的に変えられることから、その統計数値は実態を表さないことが多いと思われる、その点、死亡者数は事情が異なり、これは人為的な操作はなかなかできないので誤魔化せるものではない。その死亡者数がこれほど平年より多くなっている要因は、おそらく新型コロナウイルス感染症によるものと考えて間違いない。もっとも、新型コロナウイルス患者で病床が逼迫して、そのため他の病気の患者が十分な治療を受けられなくて死亡したという事例もありそうだが、統計上で把握するのは困難である。

 といういわば「常識」を踏まえると、6月26日に日本の厚生労働省が発表した今年4月の人口動態統計速報には、知る人全てが本当に驚いたのではなかろうか。死亡が113,362人で、昨年4月が112,939人だから、わずかに423人しか増えていないのである。これくらいなら誤差の範囲内で、つまり新型コロナウイルスによる超過死亡は、ほとんどなかったのではないかと考えられる。また一つ、日本のミステリーが増えた。そういうことで、

 日 本 では、平年より0.4%高く、  423人が多く死亡
   (4月1日〜4月31日)

(33は、6月30日記)



34.ポピュリスト対女性リーダー

(1)ポピュリストの大統領

 7月6日現在の新型コロナウイルスの感染者数は、世界全体で1,145万247人(うち、死者は53万4,273人)である。感染者数(うち、死者数)を国別にみると、以下のように最も多いのがアメリカ、次いでブラジル、インド、ロシアと続く。

第1位 アメリカ  288万8,730人(12万9,947人)
第2位 ブラジル  160万3,055人( 6万4,867人)
第3位 イ ン ド   69万7,413人( 1万9,693人)

 このように、アメリカとブラジルだけで4割近くに及んでいる。それでは、この2国に共通するのは何かと言うと、科学を軽視し、専門家を信じず、単に大衆受けを狙うだけのポピュリストの大統領が率いる国だということである。


(2)トランプ大統領

 まずは、アメリカのドナルド・トランプ大統領をみてみよう。当初は、「単なる風邪だ」と言い、国民に対して、新型コロナウイルスは大した問題ではなく、コントロール可能という印象を与えようとした。例えば、

「中国から来た感染者は1人で、管理下に置いているから全く問題ない」(1月22日)

「少し暖かくなれば、4月までにはウイルスは奇跡的に消えてしまうそうだ。」(2月10日)

「感染者数はただいま15人。数日中にゼロになる。我々の対策が見事だからだ。」(2月26日)

 ところが、アメリカでの新型コロナウイルス感染者数と死者数は、3月に入ってうなぎ登りに増え、4月末にはどうにも止まらない奔流となって、あっという間に患者数が世界一になってしまった。それからの主役は、ニューヨーク州のクオモ知事であることは、既に述べた通りである。

 そういう中で、トランプ大統領の唯一の関心は自らの再選である。そこで、クオモ知事の向こうを張って、自らほとんど中身のない記者会見を延々とし始めた。ところが、4月23日の会見で、「新型ウイルス感染症の患者に光を当てたり、消毒液を注入したりするのはどうか」と述べて、世間を驚かせた。これに加えて、5月18日には、「(抗マラリア薬の)ヒドロキシクロロキンを2週間ほど前から飲んでいる。」と語って皆を唖然とさせた(その後、案の定、効果は否定された)。非科学的にもほどがある。

 このトランプ大統領の記者会見につられて実際に消毒液を飲んだ人もいたというから、恐ろしい話である。もっとも、これは都市伝説かもしれないが、今のアメリカの共和党トランプ支持者の非科学的な思考法をみると、然もありなんという気がするから怖い。


(3)ボルソナロ大統領

 その点、ブラジルのジャイル・ボルソナロ大統領も、負けず劣らず酷い。トランプ大統領と同様に抗マラリア薬のヒドロキシクロロキンを飲んでいるというのはご愛嬌にしても、新型コロナウイルスについて聞かれて「あんなものは、ちょっとした風邪だ。」と同じことを言う。

 そればかりか、ロックダウン(都市封鎖)の必要性を説く保健相を続けて2人も解任した。州知事らが全国的なロックダウン(都市封鎖)を求めるのに、それは大量監禁だと主張して必要ないと何週間も論争する。死者が5000人を超えたことにコメントを求められると、「だから何なんだ」と答える。新型コロナウイルスより、それにより経済がストップすることが良くないと考える。だから、国民に働いて経済を動かし続けるよう呼びかける。なぜなら、「私たちはみな、どうせ死ぬのだ。」とまでのたまう。

 いやもう、とんでもない大統領だが、熱心な支持者がいる。強気、アンチ・エリート、非科学的で凝り固まった存在だ。まるでトランプ大統領そのものだが、これをもっと極端にしたようなタイプだ。一時は、感染者と死者が続出するので保健省の統計の発表を差し止めたほどだが、さすがにこれは、連邦裁判所が開示を命じた。マスクの着用を義務付ける法案が議会を通過した。ところが、ボルソナロ大統領は学校や商業施設での着用や、貧困層への配布に反対し、一部の条文について拒否権を発動した。 (以上、BBCニュースより)

 朝日新聞によると、7月6日にボルソナロ大統領は、38度の発熱と倦怠感があったためにPCR検査を受けたところ、7月8日、陽性と判明した。そこでようやく人前ではマスクをしているようだ。ところで、「ブラジル国内の感染者は162万3284人、死者は6万5487人に上る。これは、NPO『ブラジル公安フォーラム』のまとめでは、2017年に起きた殺人事件の被害者(死者数)6万5602人とほぼ同じ」という。

 ファベーラという貧困地区がブラジルにはあるそうだが、狭いところに大勢の貧しい人々が住んでいて、新型コロナウイルスが蔓延すると見られている。しかし、政府には援助する気は全くなさそうで、代わりにその地を根城とするギャング団が水や食料を配り、外出禁止令まで出しているというから、驚いた(以上、BBCニュースより)


(4)ボリス・ジョンソン首相

 イギリスのボリス・ジョンソン首相も、トランプ大統領並みのポピュリストだと見られていて、実際に当初は、新型コロナウイルスの脅威を非常に軽く見る発言が多かった。そればかりか、3月3日の演説では、「先日、病院を訪れて新型コロナウイルス患者と握手して回った。」と話していた。ところが、そんなことをしていると、やはりというか案の定というか、首相本人が新型コロナウイルスに罹ってしまった。しかも、4月6日には集中治療室(ICU)に移ったほどの重症である。同じ頃にイギリスでは、チャールズ皇太子も新型コロナウイルスに罹ったから、その当時はこの感染症を軽く見る傾向が一般的だったのかもしない。ちなみにジョンソン首相は、4月27日にようやく公務に復帰した。

 しかしジョンソン首相が不在の間、イギリス政府の楽観的な見方は、これを危惧した政府科学顧問の進言で一変した。4月13日に「(このまま何もしないという現状を)方向転換しないと、国民健康サービス(NHS)が崩壊し、25万人が死ぬという大惨事をもたらす。」と警告したのである。そこで、イギリス政府は16日、新方針を発表し、不要不急の移動や他者との接触を避け、自宅で仕事をするように呼びかけた。ちなみに、その時のイギリスの死者の数は、わずかに55人だった。

 結果として、7月8日現在のイギリスの感染者数は世界第7位の285,768人、死者数は44,236人となっている。イギリスの特徴は、老人ホームでの死者の数が多いことである。これは、ただでさえ高齢者の死亡率が突出している中で、人材派遣会社から老人ホームに派遣された若い職員が、発症しないままに各地の複数の老人ホームで勤務したために、それだけ感染が拡大したと言われている。


(5)女性リーダーの国

 まずは、この感染者数(死者数)の統計を見ていただきたい。

第15位  ド イ ツ 197,523人 (9,023人)
第63位  デンマーク  12,832人 (  606人)
第69位  ノルウェー   8,930人 (  251人)
第77位  フィンランド  7,253人 (  329人)
第114位 アイスランド  1,863人 (   10人)
第123位 ニュージーランド1,534人 (   22人)
第125位 香  港     1,268人 (    7人)
第155位 台  湾       449人 (    7人)

 この8ヶ国は、次のように、いずれも女性リーダーの国である。

  ド イ ツ   (アンゲラ・メルケル首相)
  デンマーク   (メッテ・フレデリクセン首相)
  ノルウェー   (アーナ・ソールバルグ首相)
  フィンランド  (サンナ・マリン首相)
  アイスランド  (カトリーン・ヤコブスドッティル首相)
  ニュージーランド(ジャシンダ・アーダーン首相)
  香  港     (林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官)
  台  湾     (蔡英文総統)

 これを見ると、大国ドイツは、感染者数も死者数も絶対数は多いけれども、イギリス、フランス、イタリア、スペインなど他のヨーロッパ諸国と比べて死者数は3分の1から4分の1であり、なかなか健闘していると言えよう。

 デンマーク、ノルウェー、フィンランド等の北欧の国は、元々、人口が少ないが、それにしても死者数は低く押さえられている。隣国スウェーデン(男性首相)が、集団免疫の理論に固執して、感染者数71,419人、死者数5,420人を出していること(注)に比べれば、死者数が数百人にとどまっているのは、その徹底した感染対策が奏功したといえる。

 ニュージーランドに至っては、感染の初期に危険を察知して外国人の入国を早い段階でストップし、ロックダウンも行い、しかもアーダーン首相自らが自宅から国民に呼びかけて、安心感を与えた。そして先進国の中では最も早く経済の再開を行ったことが特記される。

 香港と台湾は、2003年の重症急性呼吸器症候群(SARS:severe acute respiratory syndrome)のときの反省を生かして、今回はかなり早い段階で中国人の入国をストップして、被害を最小限に抑えている。

(注)スウェーデンの「ロックダウンせずに集団免疫がつくのを待つ」という独特の戦略は、あのトランプ大統領からも揶揄されている。

Despite reports to the contrary, Sweden is paying heavily for its decision not to lockdown. As of today, 2462 people have died there, a much higher number than the neighboring countries of Norway (207), Finland (206) or Denmark (443). The United States made the correct decision!
2020年4月30日20:45

(6)日本にもいた「コロナはただの風邪」

 7月5日は、東京都知事選挙の投票日である。その直前に街中を歩いていたところ、候補者のポスター掲示板があり、その中の一つのポスターに思わず目がとまった。それには、「コロナはただの風邪、コロナ騒動を作ったのはメディアと政府。マスク、ソーシャルディスタンス、3密を避ける、自粛は必要なし。新生活様式反対」とあった。

 ああやはり日本にも、トランプ大統領やボルソナロ大統領のような考え方をする人が実際にいるのかと驚いた。ただの風邪で、わずか5ヶ月の間に世界中で55万人も死ぬものか?

東京都知事選挙の候補者のポスター

(34は、7月5日記、8日追記)



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米国立アレルギー感染症研究所 ニュースリリース2月25日に掲載された新型コロナウイルス




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