75.オミクロン株による第6波が遂に到来
(1)米軍基地から「染み出した」オミクロン株
2022年(令和4年)になり、新型コロナウイルスの患者がどんどん増えていった。前年の10月から年末まで1日当たり100人から200人程度で推移していたものが、1月1日には534人、4日には1,265人、6日には4,460人、8日には8,787人と、日毎に倍倍増の様相を見せた。その6割が30歳代以下と言われる。
とりわけ広島県、山口県及び沖縄県の3県では、米軍基地から「染み出した」オミクロン株が陽性者の7割を占めるようになり、その他地域でも急速にオミクロン株に置き換わりつつある。日本は、空港検疫ではオミクロン株が入ってこないよう一生懸命に止めていたのに、思わぬところで漏れ出ていたというわけだ。これにより、恐れていた第6波が遂に到来したといえる。昨年7月から8月にかけての第5波はデルタ株によるものだったが、この始まったばかりの第6波はオミクロン株によるものである。そこで政府は、2022年1月7日、「1月9日から31日までの間、広島県、山口県及び沖縄県の区域に、まん延防止等重点措置の実施をする」と発表した。
(2)先行する南アフリカやイギリスの例
他方、オミクロン株による感染爆発が先行する南アフリカやイギリスの例によると、それぞれの国の前回流行の期間は3ヶ月間だったものが、オミクロン株による今回の流行の期間は、1ヶ月半と、約半分の期間になっている。しかし、1日当たりの感染者数は、アメリカでは108万人と過去最高となり、イギリスやフランスでも同様に過去最高を記録した。
ところが、死者の数はほとんど増えていない。これは、オミクロン株の感染力がデルタ型の3倍から4倍と非常に強い代わりに、あまり重症者の数は多くはないという特徴があるからだと言われている。つまり、デルタ株のウイルスは肺まで入り込んで重症になるというケースが多いのに対して、オミクロン株は咽頭や気管にとりついて炎症を起こすものの、肺にはさほど多くは達していないからだという。もちろん、ワクチン接種が普及した効果もある。
最近では比較的手軽に飲める経口治療薬の開発と実用化が進み、メルク社のモルヌピラビル、ファイザー社のパクスロビドなどのは、感染早期に投与することで、重症化や死亡のリスクをそれぞれ3割、9割も減らすことが証明されている。これも、入院患者を減らすのに寄与しているものと見られる。
南アフリカでの調査によると、オミクロン株による今回の第4波と、デルタ株による前回の第3波を比べたところ、第4波で酸素の補給を必要とした人の割合は17.6%で、第3波の74%と比べて大幅に低かったという(2022年1月10日付け朝日新聞)。もちろん、重症者の割合は低いとはいっても、全体の感染者数が多ければ、重症者の絶対数が多くなるのは自明の理であるから、これで安心するのはまだ早い。なお、南アフリカ医療研究協議会によれば、オミクロン株の流行期での全入院患者の死亡率は4.5%過ぎず、これまでの21%をかなり下回り、集中治療室への入院も少なく、入院期間も大幅に短いとのことである(東洋経済オンライン1月10日)。
英国健康安全保障庁が昨年12月31日、3回目のワクチン接種の有効性に関するデータを更新したが、それによると、「米ファイザー製や米モデルナ製の2回目接種から20週間たった段階では、発症予防でみたオミクロン株に対するワクチンの有効性は10%程度と、約60%かそれ以上に保たれたデルタ株に比べて大幅に低かった。それが、3回目の接種をして2〜4週の段階では、効果は65〜75%ほどに上昇した。これは、3回接種した人はそうでない人と比べ、オミクロン株に感染して発症する割合が65〜75%低いことを意味する。ただ、うって10週間以上たった段階では、有効性は50%ほどに落ちていた。3回目接種の有効性が、オミクロン株では早期に低下する恐れがあり、4回目以降の接種についても早めの検討が求められるようになる可能性もある。なお、アストラゼネカ製も含めて、メーカーを問わずに入院を防ぐ効果を全体的にみると、2回接種から25週たって52%だった有効性は、3回目接種で88%にまで高まった」
とのことである(2022年1月10日付け朝日新聞)。
(3)一刻も早く3回目のブースター接種
だから、我が国も一刻も早く3回目のブースター接種を行う必要がある。ところが、まだ厚生労働省は、2回目接種との間隔を原則8ヶ月、ただし65歳以上は1月間早めて7ヶ月という立場を崩していない。ワクチンが調達できないという理由であるが、国民のほとんどがブースター接種を打てていない状態で第6波が来てしまった。このままでは昨年の東京オリンピック時の再来のような悲惨な状況になるのは目に見えている。あの時は、2回目接種率が2割にも満たないときに第5波に突入してしまい、1日の感染者数が2万数千人という悲惨な結果を招いた。
それに比べて今回の3回目接種率は人口のわずか0.6%、実数にしてわずか75万人にすぎない(1月7日現在)。このままでは、第5波の再来は避けられないではないか。また入院すらできずに自宅待機中に亡くなる人が続出するのか・・・もうあの悲惨な状況は御免こうむりたいが、さて、実際には、どうなるだろうか。
(4)3回目接種用の配分計画
昨年12月23日の厚生労働省の分科会に提出された3回目の追加接種用の配分計画を見ると、高齢者(65歳以上の、3,273万人)に属する私は、1月343万人、2月2,227万人、3月291万人のどれかの対象ということになる。私の場合、2回目の接種が6月28日なので、7ヶ月の間隔を置くとすれば、1月28日までに3回目の追加接種をするということになるはずだ。
そこで、文京区役所の該当ホームページを見たところ、「追加接種(3回目接種)に係る予約の負担を軽減するため、65歳以上の高齢者の方を対象に、区が接種日時と会場をあらかじめ指定します」とある。その計画によると私は2回目接種完了が6月なので、先月の半ばに接種券が発送済みなっている。まだ絵にかいた餅ではあるが、確かに接種券は来ている。しかし、肝心の事前指定通知が1月13日(木)に送付され、実際に3回目の接種が行われるのが2月以降ということだ。厳密に言えば、既に7ヶ月すら過ぎている。接種しても免疫が付くのに2週間はかかるから、こんなのんびりとした調子では、2月中に免疫が付くかどうかだ。どうしてこんなに遅いのかと、不満がつのる。
その一方、オミクロン株の第6波が大波となってヒタヒタと押し寄せて来ている。日本全国の感染者数は、1月12日には1万3,244人となった。ところが、その1週間前の1月5日は2,634人、更に1週間前の12月30日は515人に過ぎなかった。もはや感染爆発の段階だと考えられる。沖縄やアメリカでは、濃厚接触者となった医療従事者が数多くいるので、適切な医療の提供が難しくなっているらしい。
(5)韓国やイスラエルにも負けている
岸田首相は、「1月11日の3回目接種をめぐっては、追加購入で合意した米モデルナ社のワクチン1800万人分を活用し、『3月以降、一般分も前倒しする』と発表した、ところが、具体的な対象や日程は示されなかった。高齢者の3回目接種に向けて設置すると表明した自衛隊による大規模接種会場は設置場所や開始時は未定である」(朝日新聞2022年1月12日付け)。しかし、そんなにのんびりとしている暇はないではないか。
日経新聞によれば、「イスラエルは人口の半数近くが3回目を済ませ、1月3日には60歳以上の市民と医療関係者に4回目接種を始めた・・・韓国は当初、2回目からの間隔を6ヶ月としていたが、現在は18歳以上を3ヶ月間隔の対象にした。その結果、1月7日時点の3回目接種完了者は60歳以上で80%に達した。この結果、新規感染者に占める60歳以上の割合は12月第1週の35%から1月第1週は17%に低下した」という(2022年1月11日付け)。
これらの国は、極めて真っ当な反応を見せているのに、日本の官邸や厚生労働省は、なぜこういう韓国やイスラエルのような危機意識を持たないのか、全くもって不思議である。考えてみると、これら両国に共通する特徴は、前者は北朝鮮、後者は周辺アラブ諸国というかつて戦火を交えた国に接していて、いわば準戦時体制にあるということである。それに対して日本は、戦後77年も続く平和に安逸をむさぼってきた、そのとどのつまりが、この体たらくなのかもしれない。もっとも、平和であることは何ものにも代えがたい宝物ではあるが、それにしても、地震や津波や台風などの災害に備えるのと同じく、パンデミックにも常日頃から備えておくべきだと考える。
(6)接種間隔を更に1ヶ月ずつ前倒し
上記(4)(5)を記述していたのは1月13日だったが、その日の午後に厚生労働大臣が2回目接種と3回目接種の間隔を更に1ヶ月ずつ前倒しする方針を発表した。これは、元々8ヶ月が原則だったものが、高齢者以外の現役世代を7ヶ月に、例外的に7ヶ月だった高齢者世代を6ヶ月にするというものである。
その一方、1月14日には(4)に書いた文京区からの接種日時と会場を指定した通知が送られてきた。それを見ると、私と家内の接種日は、3月1日になっていた。我々の2回目接種は6月28日なので、まさに8ヶ月後だ。しかし、「65歳以上の区民は前倒し接種ができる」とあり、「ホームページか電話で手続をするように」と書かれていた。まずはホームページを開こうと思ったが、どういうわけか開かない。仕方がないので、昨年5月の時のようにまた何百回もするのかとうんざりしながら電話をしていたところ、驚いたことに3回ほどかけ直しただけで繋がった。
そこでオペレーターの方に、「最も早く前倒しができる日に、二人分をお願いしたい」と言うと、「1月30日に用意できます。2回目接種から7ヶ月後で、この日が限界です」などと答える。あれ、昨日6ヶ月後になったのではないかと思ったものの、政府の方針は、まだ現場には浸透していないようだ。そういう中、もっと前倒しして6ヶ月にしてほしいということをここでゴリ押ししても上手く行くとは思えない。そもそも、会場や医療関係者の手当てがついていないのだろう。あと2週間待てばよいのだからと考えて、それでお願いした。
しかし、これでも私たちに免疫が付くのは2月の半ばである。オミクロン株の感染力はこれまでのデルタ株の3倍から4倍と非常に強力であることを踏まえると、果たして間に合うかどうかである。ところがその反面、イギリスや南アフリカの例では、感染力が高くてあっという間に陽性者数は増えるけれど、その代わり流行の期間がデルタ株の3月間に対してその半分の1ヶ月半程度で収束するという見解が有力だ。もしかすると、このオミクロン株は、「終わりの始まり」かもしれないという気すらするゆえんである。
イギリスでは、12月初めまで一日当たり4万6千人以下で推移していたものが、オミクロン株で急増し、1月4日には21万8千人までになったが、1月13日には10万5千人まで漸減していった。アメリカはもっと激しくて、長い間、一日当たり29万人以下だったものが、クリスマスの頃から急増し、1月10日には136万4千人と史上最高のレベルに達した後、13日には78万4千人と減りつつある。このままだと、イギリスと同じような道をたどりそうだ。南アフリカの例はもっと顕著に傾向がわかる。昨年11月23日に1万8千人と流行が始まり、12月12日に3万7千人というピークを付けた後、1月14日には5千人に減少している。
仮に、日本も同じことになるのであれば、私は1月末という感染の最盛期に3回目接種を行い、感染が収まった2月の後半に免疫が付きそうだ。そうだとすると、「一体、何だったんだ、このブースター接種は」となりそうである。もっとも、3回のワクチン接種をしているという安心感は、何ものにも替えがたい。「人からうつされないし、人にもうつさない」という安心感に包まれて、心が平穏に保たれたまま日々過ごすことができるのが、今回のブースター接種のメリットだと思っている。だから、やはり接種は大事である。
(7)まん延防止措置の発動
日本全国の新型コロナウイルス感染者の数を今月の初めから並べてみると、次のようになる。これを見ると、まさに感染爆発と言ってもよい状況だ。たった3週間で100倍近くになるとは、恐れ入った。ちなみに、新規感染者100人分の遺伝子検査をすると、その全てが北米由来のオミクロン株ということがわかった。
1月 1日 534人
1月 5日 2,634人
1月 8日 8,471人
1月12日 13,243人
1月13日 18,850人
1月14日 22,041人
1月15日 25,735人
1月16日 25,642人
1月17日 20,984人 → 月曜日
1月18日 32,190人
1月19日 41,485人 ☆
1月20日 49,854人
1月23日 54,576人
1月25日 62,613人
1月27日 78,931人
1月29日 84,933人
そこで政府は、既に新型コロナウイルス対応の特別措置法に基づく「まん延防止等重点措置」の対象地域に、1月末までを期限に沖縄、山口、広島の3県に適用していたが、これに首都圏の1都3県と東海3県など合わせて13都県を加えることを1月19日に決定した。措置の期間は、1月21日(金)から2月13日(日)までとされた。措置の具体的な内容は、都道府県によって異なり、午後9時までの営業時間の短縮、酒類提供は午後8時までとするなど、色々である。大阪、兵庫、京都、北海道も近く申請するそうであり、また、感染の急拡大のために、東京都などは緊急事態宣言に切り替えることを検討しているようだ。情勢は、急速に緊迫の度合いを増している。
その後、政府は1月26日、新型コロナウイルス対応の「まん延防止等重点措置」の対象地域に、関西の2府1県など18道府県を加えることとした。期間は1月27日から2月20日までで、今月末が期限の沖縄、山口、広島3県も2月20日まで重点措置を延長する。新たに重点措置の対象となるのは、北海道、青森、山形、福島、茨城、栃木、石川、長野、静岡、京都、大阪、兵庫、岡山、島根、福岡、佐賀、大分、鹿児島の18道府県であり、既に適用中の16都県と合わせると全国の47都道府県中の7割超の34都道府県に適用されることとなる。
オミクロン株の前では、ワクチン接種の2回目から数えて8ヶ月以上経過していたら全く役に立たないというのは、欧米のデータで明らかだ。恐ろしいことに、日本のほとんどの人はこれに該当している。オミクロン株を防ぐためには、早急に3回目のブースター接種が必要なのだが、現時点で終えたのは、医療従事者を中心とした178万人、人口のわずか1.4%に過ぎない。この調子では、第6波は大爆発が確実で、第5波を上回る悲惨なことになるのは間違いない。
なぜこういう体たらくかというと、主に3つの要因がある。
第1は、地方分権一括法と予防接種法で、かつて予防接種は「市町村の自治事務」と位置付けられていたように記憶しているが、現在の予防接種法では法定受託事務となっている(29条)。ところが、新型コロナウイルス対策の予防接種の場合は、常に変転する事態の進展に応じて適時適切に対応しなければならない。しかしながら、そういうものに関する厚生労働省からの指示は、「大男総身に知恵が回りかね」ではないが、地方の細かい事情まで配慮しているものとはいえないことが多いし、朝令暮改だ。また市町村の方もいたずらに「受け身」となってしまって、自ら頭を使って工夫しようという気概が見られない。集団接種の会場設営に選挙管理の職員まで動員して対応しようとしている墨田区の取組みが珍しいとして新聞に取り上げられるくらいだ。それやこれやで、無用に現場の混乱を招いている感がする。
第2は、菅政権のときに、1日100万件を打てとハッパをかけたのに、いざ始まるとワクチンの数が足りなくなり、自治体や職域接種が用意した会場と医師看護師がかなり無駄になってしまった。だから、自治体としては二度とその轍を踏むものかとばかりに、十分な時間的余裕とワクチン供給の確約を国に求めている。そのため、この見通しがない以上、いくら国が笛を吹いても踊ってくれない。
第3は、厚生労働省には地方部局として地方厚生局というものがあるけれど、これは本件のような医事行政は管轄外で、医事行政は(医系技官の世界なので)本省が都道府県厚生局と直接連絡して行うこととなっている。ちなみに、この世界はたとえ大臣であっても、なかなか手を出せない。
この他、保健所の設置主体の自治体がバラバラだったり、ワクチン行政が腰砕けだったり、ワクチン製造メーカーを育てる産業政策的観点が全くなくて新型コロナウイルスのワクチンは未だに全量を輸入に頼らざるを得なかったりと、色々な問題が集積していって、今日の情けない厚生労働行政があるというわけだ。以上は、構造的な問題であり、容易には解消できない。
(8)第6波の今後の見通しは?
新型コロナウイルス第5波が7月初旬に始まり、9月末日にようやく収まった。そこで、今回の第6波のピークアウトがいつ頃になるかが注目されるところである。もうこれは、占いに近い話ではあるが、日経新聞に次のような記事が載っていた。
「南アの最大都市、ヨハネスブルクがあるハウテン州では11月17日に感染者数が倍増した後、31日後の12月中旬にピークを迎えた。米国のニューヨーク市はマンハッタン地区で12月15日に感染拡大局面を迎え、1月14日の減少開始まで30日を要した。パリ(感染拡大期間24日)やロンドン(同23日)など世界の主要4都市・地域の平均期間は27日だった。東京の場合、1月4日の感染倍増から18日経過している。海外の事例をそのまま適用すればピークは2月上旬になる。
ワクチンのブースター接種は重症化の抑制などに有効とされるが、世界的に需要が増えており確保は難しい状況だ。日本のブースター接種の実施率は1.5%と、英国(55%)やフランス(44%)、米国(25%)を下回る。21年12月に3回目接種を始めてから2カ月近くたつが、接種ペースはなかなか上がらない」(2022年1月23日付け)。
という各国の例をみると、今回の日本の第6波のピークは2月上旬で、同月末には収まるという見込みである。ところが、諸外国と比べて3回目のブースター接種が全く進んでいないことを考えると、そのような見通しの通りに第6波がピークアウトするかどうかは極めて疑問である。
その一方、私の身近でも第6波がひたひたと押し寄せてきている。一昨日の1月21日、午後11時前に自宅マンションの1階にゴミを出しに行こうとしたら、そんな夜中に若い作業員の人達が大勢いて、驚いた。表示を見ると、「現在、このマンションマーケットの大規模修繕工事を実施させて頂いておりますが、当社社員が今年2回目のPCR検査(19日)で21日コロナ陽性と判明致しました。居住者の皆様にはご迷惑をお掛け致しますが、感染拡大防止の為、共用部の消毒を実施させて頂きました」とある。大規模修繕工事で当マンションに常駐している現場監督が罹ったそうだ。この監督は、17日夜の臨時理事会にも出席していたから、監督さんご自身の健康のみならず、同席していた他の理事は大丈夫かと心配になる(その後、濃厚接触者として全員がPCR検査を受けたが、幸い陽性と判定された人はいなかった)。
また、私の法律事務所のIT部門でも陽性者が複数出たようだ。この部門には、外部の技術者がよく出入りしているので、その関係で持ち込まれたのかもしれない。
他方、アメリカ疾病対策センター(CDC)は、「2回目の接種から6ヶ月以上たった場合、3回目の接種の入院を防ぐ効果は、デルタ株が優勢だった時期に81%だった一方、オミクロン株が優勢になった時期には57%である。しかし、3回目の接種のあとではデルタ株の時期は94%、オミクロン株の時期は90%に上昇した。ワクチンの追加接種を受けた人と比べ、受けていない人は入院する割合が大幅に高くなり、50歳から64歳で44倍、65歳以上で49倍になる」という(NHKニュース1月23日付け)。
私のワクチン追加接種の予約は前倒ししてもなお1月30日となっているので、21日に文京区に再度電話して「もっと早くしてほしい」と申し入れたが、「2回目接種から7ヶ月が原則だ」と言われて、けんもほろろだった。岸田首相ももっと前倒しして6ヶ月にしてほしいと言っているし、世田谷区や墨田区や目黒区などは6ヶ月を目途に前倒し接種に取り組んでいる。現にこれらの区在住の私と同年配の友人たちは23日現在で既に3回目の接種を終えている人が3人もいるというのに、文京区というのは、なぜこれほど公衆衛生上の危機感や切迫感がないのか、区長以下担当者に至るまで、およそ馬鹿で無能なのではないかと思う。
(9)第6波が猖獗を極める
オミクロン株による陽性者数はますます増加の一途をたどっている。もう5日連続で過去最高を記録し、遂に1月29日には84,933人に達してしまった。うち東京都は、17,433人、大阪府は、10,380人である。全国ベースでの入院中や療養中の人は、539,357人と、既に前回第5波の時の倍以上だ。病床使用率は東京都で43%、大阪府で51%と、もはや緊急事態宣言のレベルである。切り札となる3回目のワクチン接種は、わずか340万人、人口の2.7%と、遅々として進まない。私と家内は、本日(1月30日)、何とかこの接種を済ませた。免疫が付くのは2週間後だから、それまでに感染しないよう十分に気を付けなければいけない。
困ったのは陽性者数の増加に伴い、濃厚接触者数も多くなり、病院のスタッフ、保育園の保育士などがこれに該当してしまうと、仕事が回らなくなることである。そこで政府は、濃厚接触者の待機期間を、従来10日間から7日間に短縮した。これとともに、軽症者で病院があふれて肝心の重症者が入院できない事態を防ぐために、感染が急拡大した場合は、重症化リスクの低い人は医療機関を受診せず、自宅で療養することもあるという方針を明らかにした。
その背景には、オミクロン株の場合には、重症化率がデルタ株の場合のわずか25分の1と、極めて低いことである。すなわち、今回の第6波の場合には重症化率が0.03%であるのに対して昨年夏のデルタ株による第5波の場合には0.66%であった。ちなみに、一昨年冬の第3波は0.93%、昨年春の第4波は0.83%であるから、それらと比べても低さが際立つ。
これまでの感染の波の傾向によると、波の開始から40日程度でほぼ収束するようなので、今回の第6波も2月の半ばを過ぎれば減少傾向を示すものと期待される。そうだとすれば、オミクロン型の感染リスクに応じた対策を立てるのが良いと思われる。
そうした考えの下に、尾身茂会長ら専門家有志による提言でも、「これまでのような強い対策の踏襲ではなく、オミクロン型の感染リスクに応じた対策が効果的だと指摘。これまでの人流抑制ではなく、感染リスクの高い場面・場所に焦点を絞った『人数制限が適している』と強調した」そうである(朝日新聞2022年1月30日付け)。正しいと思う。しかしながら、政府も自治体も、未だ事態の推移に追いついておらず、岸田文雄首相は相変わらず「地域の実情に応じた人流抑制」を求め、小池百合子都知事も「不要不急の外出自粛」を都民に呼びかけるなど、従来と同じ政策を漫然と続けている。為政者の頭というのは、そう簡単には切り替わらないのだろう。
(10)第6波はいつピークアウトするのか
オミクロン株についての研究が進んで、デルタ株よりウイルスが肺に広がりにくい性質があるようだ。東京大と北海道大で作るグループによれば、新型コロナウイルスに感染させたハムスターの組織をみると、デルタ株でもオミクロン株でも、ウイルスが肺の入口近くにある細胞に集まる。ところがそれから3日後になると、デルタ株は肺の中まで浸透しているのに対し、オミクロン株はその入口にとどまっていたという。つまり、デルタ株に比べて肺組織にウイルスが広がりにくいのがオミクロン株の特徴で、それだけ病原性が弱まったのではないかと推論している(2月8日付け朝日新聞)。
また、従来のオミクロン株はBA.1であるが、その派生型BA.2が生まれてきた。しかも、フィリピンでは直近の感染者に占める派生型の割合が98%にも達し、デンマークではそれが79%、インドでは65%にもなり、次第に主流になりつつある。問題は、派生型の感染力が従来型の2〜3倍と強力なことで、家庭内でうつる確率は39%と、従来型より10%も高かったことである。ただ、幸いなことに重症化率は従来型と変わりがないようである。
2月10日の日本国内の感染者数は、1日で1万9,942人、累積で368万2,055人と、かつてないほどの数となった。2月5日には10万5,625人と、過去最高を記録したが、これは大阪府で1万件以上の登録の遅延があったことによるものらしい。東京都においては、1日の感染者数が1万8,891人にのぼり(2月10日現在)、都民80人当たり1人の感染者が出ている計算になる。これは、ショッキングな数字である。ということで、10万人弱というのが最新の感染者数である。では、この第6波がいつピークアウトするのだろうか。
今回の感染を阻止する鍵となるのは、新型コロナウイルスの3回目のワクチン接種である。ところが、日本国内のワクチン接種の全人口に占める割合は、2月10日現在で、わずか7.9%にとどまっている。第1回目接種が80.1%であったのに、これはどうしたことか。市町村の接種会場をみると、取扱いを間違えないようにファイザー製を打つ会場とモデルナ製を打つ会場とに分けてあるが、ファイザーの会場が予約で満杯であるのに対し、モデルナの会場はガラガラだという。その理由として、第1回目と第2回目の市町村の接種はそのほとんどがファイザーだったので、その上で第3回目としてモデルナを打つと、つまり「交互接種」をするのは心配だという心理が働いたのだといわれている。しかも、そのモデルナが今回の3回目接種の60%を占めている。だから、モデルナの会場の人気がないと説明されている。
こうした状況を打開するため、岸田文雄首相は2月7日の衆議院予算委員会で、新型コロナウイルスの3回目のワクチン接種について「2月のできるだけ早期に1日100万回までペースアップすることを目指す」旨を表明した。ところが、これは評判が悪い。感染が落ち着いていた昨年10月から12月まで、一体何をやっていたのかという批判に繋がる。2月8日付け朝日新聞の川柳欄によると、
後手後手の見本のような「百万回」
東京都 鈴木良一
ちなみに、諸外国のオミクロン株の初確認から感染ピークアウトまでの期間をみると、次のようになっていて、新型コロナウイルスの3回目のワクチン接種率( )内が高いほど、一般にピークアウトする期間が短いという結果がわかってきた(2月5日付け日経新聞)。日本は、確認から40日経つが、まだピークが見えない。
イギリス 38日間 (56%)
イスラエル 58日間 (55%)
フランス 51日間 (48%)
フィンランド 37日間 (45%)
オーストラリア46日間 (32%)
アメリカ 25日間 (41%)
((1)から(3)までは2022年1月10日記、(4)・(5)は13日、(6)は15日、(7)は19日、(8)は23日、(9)は30日、(10)は2月10日追記)
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